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1.初めての戦闘と、出会い。










「さて、手頃な魔物はいるか……?」



 俺はあのポンコツたちと旅をしていた時には味わえなかった、そんな緊張感に舌なめずり。目の前には強力な魔物とされている【ヒュドラ】の姿があった。

 しかも一体ではない。

 ざっと見ただけでも五体――いや、もっと多いだろうか。



「まぁ、数はどうでもいい。俺にとっては、本気で戦えることが重要だ」



 呟いて、俺は物陰から飛び出す。

 あの勇者たちと一緒になって、ままごとのような戦いを続けてきた。そのことから解放される、そちらの方が俺にとっては重要なのだ。

 腰元から剣を引き抜くと、それを正面に構える。



 GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!



 すると、そんなこちらを認めたらしい。

 ヒュドラの数体が、俺目がけて襲い掛かってきた。



「いいぞ、その速度だ……!」



 勇者たちと相手にしていたゴブリンなどとは、比べ物にならない。そんな速度で放たれた一撃を回避しながら、俺は自然と笑みを浮かべていた。

 そして同時に、八つあるヒュドラの首を一本斬り落とす。


 奇声が木霊した。

 そうすることによって、すべてヒュドラの標的が俺になる。



「次は、魔法だ……!」



 敵が一ヶ所に集まったのを見計らって、俺は右手を前にかざした。

 そして――。



「燃え盛れ――【エンシェントフレイム】!」



 詠唱を破棄し、ついぞ使うことのなかった上級魔法を放つ。

 大地に魔法陣が展開され、ヒュドラを炎が包み込んだ。



「ふむ……」



 次に残されていたのは、魔素の欠片。

 すなわち、すべてのヒュドラが消滅したことを示していた。



「なるほど、な」



 俺はそれを確認してから、自分の手のひらを見つめる。

 これでどうにか、己の実力を確認できた。これなら、冒険者として真っ当に生活することができるかもしれない。

 ひとまず、それが分かっただけで今日は収穫だった。


 換金アイテムである魔素の欠片を回収し、俺はダンジョンを後にする。

 しかしこの時、ある人物がこちらを見ていたことに気付かなかった。







 ギルドに併設された酒場には、多くの冒険者が集う。

 彼らにとっては情報交換の場所であり、また同時に交流の場だった。酒の匂いが得意ではない俺だったが、王都の近況を知るならここが最適だろう。


 そう考えて、俺はカウンター席に腰かけてエールを煽った。



「しかし、三年でずいぶんと変わるものだな」



 そこでふと、帰りに見て回った街の様子を思い返す。

 ポンコツたちと一緒に旅に出てから、知らない建物が増えた気がした。これではもう、一人で行動すれば迷ってしまうだろう。

 そのことに新鮮さを感じると共に、寂しさを覚えていた。



「やあ、そこのお兄さん? 隣、いいかな」

「ん……?」



 その時だ。

 俺にそう声をかけてくる人物があったのは。

 見ればそこには、一人のエルフの女性の姿があった。銀の髪に蒼の瞳。すらりとした身体つきをしているのは、ローブを羽織っている上からでも分かった。



「どこも満席で、ね」

「あぁ、そういうことか」



 俺が手で促すと、彼女は会釈をしてから席に腰かける。

 そして、こう名乗るのだった。



「私の名前はキーラ・ディンロー。気軽にキーラと呼んでほしい」

「あぁ、俺はアイゼンだ」



 こちらも自己紹介すると、キーラは小さく笑む。



「ところで、キミはソロなのかい?」



 そして、そう訊いてきた。

 ソロというのは、つまり一人で活動している、という意味。

 俺はどうしたのかと思いながら、それに頷いた。するとキーラは――。



「それなら、ちょうど良かった! 仲間を探していたんだ!」



 言って、俺の手を取った。

 そしてさらに、こう続けるのである。




「ぜひ、私とパーティーを組んでほしい!」――と。




 


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「万年2位のだからと勘当された少年、無自覚に無双する」11月2日発売です。こちらも、よろしくお願い致します。
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