プロローグ ここは俺に任せて――。
新作です。
「くっ……! この魔物、強いぞ!?」
「どうするの! このままじゃ――」
一人の剣士が後退すると、その様子を見た魔法使いが声を上げる。
目の前にいるのは、どう贔屓目に見繕っても下級の魔物だった。そんな敵の群れを前にして、冒険に出て三年経つ彼らは苦戦している。
正直に言ってしまえば、ポンコツだった。
これが勇者と、その仲間の姿なのだから呆れたものだ。
「アイル! どうする!?」
「…………」
こちらが思わずため息をつきそうになっていると。
勇者は俺に向かって、助けを求めるようにしてそう言った。
「仕方ない……」
対してこちらはそう呟く。
そして、今まで考えてきたセリフを口にした。
「ここは俺に任せて、お前たちは先に行け」――と。
まるで、死地へと赴くかのような真剣な声色で。
俺はその言葉を最後に、勇者パーティーを離脱したのだった。
◆
「ようやく、あのパーティーを抜けることができた……」
俺は思わず、そう独り言を口にした。
【あのパーティー】というのは、言うまでもなくポンコツ勇者のパーティー。勇者とその仲間として王都を送り出されて早三年。
だが先ほども言った通り、あの勇者たちは一向に成長を見せなかったのだ。
結果として、賢者である俺がすべての役割を負ってきた。
「危うく、過労死するところだった」
――魔物に殺されるよりも先に、だ。
あのまま勇者パーティーに留まっていたら俺は、きっと文字通りに忙殺されていた。かといって喧嘩別れも面倒なので、自分は死んだことにした方がいい。
そうすれば今後、理不尽にまた頼られることもない。
俺はそう思い至って、あの言葉を口にしたのだった。
「さて、三年振りの王都か」
そして今、俺は故郷に帰ってきたのである。
あの日、勇者と共に送り出された場所。忌々しき三年の苦行へと旅立った、そんな場所に。だがそれも今日で終わりだ。
何故なら俺はもう、アイルという名を捨てたのだから。
「お兄さん、名前は?」
「アイゼン・リークワースだ」
名を問われて、そう答えた。
ここは冒険者ギルド。
世界各地から様々な旅人がやってきて、己の力によって生計を立てる場所だ。今までの冒険で培った力を使って、再出発を図るには最適な環境である。
「はい、これが冒険者カードね」
「あぁ、ありがとう」
それに、偽名でも問題なく加入できる。
俺はひとまず冒険者として、第一歩を踏み出すことにした。
「ひとまずは、ダンジョンに向かうか」
力試しに、王都の外れにあるダンジョンへ向かうのが良いだろう。
そう思って俺は、迷いなく前に歩き出した。
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