表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
STONE MEMORY  作者: りん仔
8/18

協会本部

突如として現れたオオカミ男を、ストーンの力で何とか倒したナオたち。

いよいよ静寂の森には行ったナオたちは、協会本部へと急ぐ。

「ガサッ・・・ガサッ・・・。」

落ち葉が踏まれて、乾いた音を立てる。

森の中にうっすらとのびる1本道を、3匹のユニコーンが駆け抜ける。

頬をなでる朝の空気は、まだ少しひんやりと感じる。

今日で、オレがこの世界に来てから3日目だ。

動物の気配すら感じない、静寂の森。聞こえるのは、オレたちが走らせるユニコーンの足音と、踏まれて音を立てる落ち葉の音だけ。

「・・・おかしいわ。」

沈黙をやぶり、ぽつりとキーナがつぶやく。

「おかしいって・・・何が?」

後ろにいるキーナの方を向かずに、前を見ながらオレは訪ねた。

「オオカミ男の事よ。オオカミ男は太陽の光を嫌い、日が出ている間出てくることは、めったにないの。いくら薄暗い朝方であっても、出てくることはないはずよ。」

「じゃあどうして・・・。」

「おそらく、何か巨大な力が、彼らの力を強くさせたんだと思う。」

「何かっていうのは・・・ベルグソン。」

1番後ろで黙っていたサヨがつぶやいた。

サヨの言葉に少し驚きながらも、キーナは話し続ける。

「その可能性は高いわね。」

「まさか、空白の書を奪いに・・・?」

「大丈夫。書は私がケースの中に保管してるし、ベルグゾンは静寂の森には入れない。」

「なら大丈夫か・・・。」

「でも、気が抜けないのは確かね。おそらくベルグゾンは、私たちが静寂の森に入る前に足止めしておきたかったのよ。」

だとしたら、さっきも近くにベルグゾンがいたのだろうか。

もしかしたら殺されていたのかもしれないな・・・。

冷静にそんなことを考えながら、ユニコーンを走らせた。



「さあ、着いたわよ。」

「すげえ・・・。」

「きれー・・・。」

あまりの綺麗さに、言葉を失ってしまった。

それは協会と言うより、もはや城だ。

深い森の中に存在する、とてつもなく大きな協会だ。

オレたちの目の前には、噴水のある広場があり、綺麗な花が咲き乱れる花壇は、入り口へとまっすぐに続いている。

オレたちはユニコーンから降りて、入り口の門へと向かった。

門の前では、オレたちを待っていたのか、侍女らしき若い女性が立っている。

「お帰りなさいませ、キーナ様。シャマール様がお待ちです。」

「ええ、ありがとう。」

そう言うと侍女は門を開けてくれた。

中にはいると、大きな広間があり、左側には大きな階段がある。

階段の上の通路に、キーナの着ているのに似たデザインの服を着ている女性がいた。

髪は腰につきそうなくらいの長さで、夜空を見ているかのような真っ黒な髪の色をしている。

その女性は、オレたちに気付いたようで、オレたちを微笑みながら見つめている。

「よく帰ってきましたね、キーナ。それに、人間のお2人。どうぞこちらへ。」

そう言うとその女性は、奥の部屋へと入ってしまった。

「ねえキーナ、今のは・・・?」

「今のはシャマール=ガブリエル。協会本部総帥よ。」

「そうすい?」

「1番トップの人のことよ。それを総帥と呼ぶの。」

「へえ、あの人が・・・。」

「さあ行きましょう。」

長い長い階段を上り、オレたちはシャマールのあとを追っていった。



「さあ、そこに座って。」

案内されたのは、とても広い部屋だった。

オレとサヨは白色に統一させてある部屋を見渡した。

本棚やソファー、カーテンに壁まで白で統一させてある。

オレたちは遠慮がちに、綺麗なソファーに腰掛けた。

「それで今日は何の用で?まあ、おおかた予想はつきますが・・・。」

「えっとぉ・・・ほらナオっ!」

「あっ・・・えっと、アベルとラヴィエルの約束を果たしに来ました。」

「やはりそうでしたか・・・。」

ふうっ。何かしら緊張するものだ。

キーナとは違い、このシャマールという女性には、何か神聖なオーラが漂っているというか、何かキーナやセウスさんとは違うオーラが漂っているように見える。

例えるなら、そう・・・神のような人。

「カロール、例のものを。」

「はい。」

シャマールがそう言うと、入り口のドアの所に立っていた協会本部の人らしい女性が、部屋の隅にある個室のような所から鍵のかかった箱を持ってきた。

「ありがとう。ここに。」

机の上に、小さな鍵のかかった箱が置かれた。

シャマールはその箱にそっと手をかざした。

「マジックアウト。」

すると箱が開き、なかにはネックレス状になっている、透明なストーンが2つ入っていた。

「あの・・・これは?」

「それは、アベルとラヴィエルのストーンよ。触れてみて。」

オレたちは差し出されたストーンを手にのせた。

すると、ストーンは眩しい輝きを放ち、ナオの手から放れ、宙に浮いた。

「うわぁっ!」

その瞬間、辺りは白い霧のようなものに包まれ、はっきり周りが見えなくなった。

ストーンの輝きだけは、はっきりと見える。

「ありがとう、ナオ、サヨ、そしてキーナ、シャマール。」

「・・・アベル?」

どこからか、キーナのか細い声が聞こえる。

霧が晴れ、現れたのは、あの夢と変わらないアベルとラヴィエルだった。

「ごめんねキーナ。君にはあれから800年、寂しい思いをさせてしまったね。」

アベルとラヴィエルは、そっとキーナに歩み寄り、頭をなでた。

「大丈夫、もう居なくならないから。寂しい思いさせないから。」

ラヴィエルの言葉と共に、キーナの目からは大粒の涙が流れた。

「うっ・・・ううっ。」

まるで子供のように泣きじゃくるキーナを、オレたちは温かい目で見守っていた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ