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STONE MEMORY  作者: りん仔
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村の協会

長い夢から覚めたナオは、夢のことをキーナとサヨにうち明ける。

800年前の真相、アベルの言った約束、それらの答えを探すため、3人は村の協会へと向かった。

オレが起きたのは、昨日とは違い、まだ太陽の出ていない早朝だった。

外はまだ薄暗く、はく息が白い。

昨日のような不思議な夢は見なかった。

ベランダに出てみると、朝の冷たい空気が頬をなでる。

「はぁ・・・。」

オレは元の世界に戻ることが出来るのだろうか。オレがここにいる間、あっちの世界ではどうなっているんだろうか。

オレとサヨには、800年前の神の魂が宿っている。だから『空白の書』の守護者になってしまって・・・。

今思えば、本を拾ったあの日から、全てが始まったんだ。

もしあの時、本を置いていっていれば、今まで通りの平凡な暮らしを続けることが出来たのかもしれない。

それとも、オレがあの日を境に、不思議な事件に巻き込まれていくのは、初めから決まっていた事なのだろうか。

「・・・って、どうしようもないか。」

力無くぼそっ、と呟いた。

その時、眩しいくらいに輝いている朝日が、オレの目に映った。

こんなに朝日を眩しいと思ったのは初めてだ。

「すげぇ・・・。」

「ほんとキレイね。」

「うわっ!」

またしても隣のベランダに現れたのは、キーナだった。

「どうしたの?」

「何だよキーナ。またかよ。」

「食堂に行きましょう。朝食ができてるわ。」

「こんな早くに?」

「早めに協会に着いた方がいいでしょ?だから、いつもより早めに朝食を作ってもらったのよ。」

「なるほど。」

オレたちはベランダを出て、食堂に向かった。



「おっそいよ!2日にわたって寝坊?」

「今日は結構早かったぞ!」

「まあまあケンカせずに。」

サヨはすっかり宿の主人と仲良くなっていた。オレたちが食堂に入ったときには、朝食の準備をする主人と話していた。

「金髪の姉さん。私の見たところでは、あんた協会の人だろ?」

「えぇ。私は協会本部から来た、キーナ=レイチェルといいます。これから本部へ戻る予定です。」

人の良さそうな感じの主人は、笑いながら言った。

「本部といったら静寂の森かぁ。それなら、いくらか食料をやろう。あんたならケース持ってんだろう?」

「いいんですか?なら、お願いします。」

そういってキーナが取り出したのは、5センチ四方の立方体の箱だった。

「ケースって何?」

初めて見るものに、サヨは目を輝かせている。

「これはケースっていって、どんな大きさの物でも無限に入るケースなの。これを持っているのは、神と協会の人、あとは守護者と一部のクロム族だけ。私が昨日使ったペンも、ケースと同じ。こういうのを神具というのよ。」

「しんぐ?神の道具ってことか?」

宿の主人は厨房の奥から、たくさんの食料を持ってきた。さらに何か思いだしたかのように、再び厨房の奥に戻っていった。

「えぇ、これからまず村の協会に行って、あなた達の分のケースをもらって、あとはストーンを神具に変えてもらうの。」

「ストーンを変えてもらう?」

「あのままじゃ、ストーンの力を使えないのよ。だから協会に行って、神具に変えてもらうの。」

「そうなんだ・・・。」

制服のズボンの左ポケットのなかには、あの紅い色をしたストーンが入っている。

サヨは黄色いストーンを、部屋のランプの光にかざしている。

キーナはケースを手でつつみ、宿の主人が持ってきた食料に近づけた。

すると、ケースは光り輝きだし、キーナが箱から手を離したとき、食料が全部ケースに吸い込まれていった。

「すごーい!!」

サヨは驚きの声を上げている。

そんなサヨを見て、キーナが小声で言った。

「この世界ではこれが普通なのよ。それに、あなた達がこの世界の住人でないことは、協会以外には知られないようにしなければいけないの。」

「へっ?何で?」

「詳しくは協会の中で話すわ。だからなるべくこの世界の人になりきってね。」

「了解!」

ちょうどその時、宿の主人が戻ってきた。

「3人とも、うちにいるユニコーンをもらっていってくれないか?」

「・・・!?」

思わず言葉を発しそうになったオレとサヨは、ほぼ同時に口をふさいだ。

「いえ、それほど急ぎではないですし、5日で着く距離ですから。」

「まあまあ、そんなこと言わずに。もう近頃はこの村では誰もユニコーンを使わなくなっちまった。こいつらだって、狭い小屋で過ごすより、大陸を駆けめぐった方がいいだろうしな。」



「何から何まで、ありがとうございました。」

オレたちはそれぞれのユニコーンにまたがった。

初めて乗るので、まだぎこちなく感じる。

「いやいや、宿屋として当然の事をしたまでだ。無事協会まで行けることを願っているぞ。」

「ありがとうございます。では、お元気で。」

「ありがとな!おじさん。」

「ありがとうございましたー!」

離れていく宿に手を振りながら、オレたちは少し先に見える協会へと向かった。



「キレイな所だね、協会って。」

白い壁に、きれいなステンドガラスの窓がある。

オレたちはユニコーンを外につないで、協会の中に入った。

「おぉこれは!キーナ様ではないですか!よくぞ人間界からご無事で。」

協会の中には、1人の年老いたおじいさんがいた。

「久しぶりね、セウスさん。この村に来るのは、120年ぶりね。」

「それでキーナ様、もしやそちらの方たちが・・・。」

「えぇ。人間界の守護者でありアベルとラヴィエルの魂を持つ人間よ。」

「・・・やはりこの時は来てしまいましたか。」

セウスという人は、深いため息をついた。

「なぁ、2人とも。一体どういうことなんだ?」

「そうよ。私たちにも説明してよ。」

セウスさんは、オレたちを見ると、ゆっくりと話し出した。

「アベルとラヴィエルの魂を持つあなた達がここへ来たと言うことは、ベルグゾンもこの世界へ来ているということになるのです。」

「ベルグゾンって、冥王ベルグゾンのことか?」

セウスさんは、協会のなかにある、1番大きなステンドガラスを指さした。

そこには、4人の男女と、黒いマントに身を包んだ少年が戦っている絵が描いてある。

「あそこは、はるか昔、盲目の魔ばらい師オズワード=エクソシアが協会を作るときに残した言葉が描かれている。」

ステンドガラスに書いてある4人の男女は、紅、青、黄、緑のストーンのついたネックレスを首からさげている。

「オズワードは、『4人の守護者が現れし時、冥王再びよみがえる。冥王現れし時、世界は破滅へ向かう。それを止めるも止めないも、守護者が決めし事。』と残したそうだ。」

セウスさんの話の間、オレはずっと4人の男女を見ていた。

4人の男女の中の、紅いストーンを持った少年と、黄色いストーンを持った少女。どこかで見たような・・・。

まさか・・・。

「セウスさん、オズワードが教会を作ったのは何年前なんだ?」

「あぁ、あれはちょうど800年前だったな。」

「800年前!?」

「4人の男女の名前ってのは・・・。」

「たしか・・・ナオ、サヨ、ギルバート、アマリアだった。」

「何だって!」


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