表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
STONE MEMORY  作者: りん仔
14/18

聞き捨てならぬ隠し事

部隊内対抗試合の第一試合目が終わったところで、キーナ率いる第八番部隊は、対プルート戦に向けて、部隊に2人の狩猟者を加えることになった。

だがその2人の狩猟者は少し訳有りで・・・

「あっ!この2人は!」

アマリアが複雑な表情をしている。

「アリー知ってるの?」

サヨが2枚の写真を見ながら問う。

「知ってるも何も・・・。キーナ、もしかして・・・。」

キーナは怪しい笑みを浮かべながら言う。

「もちろん入れるわ。この子たちを手なずけられたら、相当強くなるわよ!この部隊。」

「でも大丈夫なの?」

アマリアは心配そうにキーナに問う。

「あのさぁ。オレたち全くついて行けてないんですけど・・・。」

「ああ、そうよね。」

どうやらすっかり忘れられていたようだ。

「この2人はね、狩猟者の中でも有名な『チームワークを苦手とする人』つまり、単独での戦いを得意とする狩猟者なのよ。だから2人とも、相当な実力を持ちながらも部隊には入っていなかったの。」

そう言うとキーナは、片方の写真を指さしながら言った。

「この緑色の髪をした子が、ディラディノ=ティラシェル。無口、無愛想って言葉が似合ってる魔術師よ。」

「こんな無口でも顔がいいから、ファンクラブがあるのよ。」

アマリアはキキッと笑いながら言った。

「もう1人の子が、メルウィン=ヘイリー。二丁拳銃を使う狙撃手よ。明るい子なんだけど、人を見る目が厳しくて・・・。」

キーナが呆れ果てた様子で言った。

確かに、部隊で戦うにはチームワークが必要不可欠な存在となる。

それがなければ、うまく戦っていくことは難しいであろう。

「ねえ、もしかしてメルウィンって、ギルの妹?」

「えぇ、そうよ。」

「マジで!?」

銀色の髪に緑の瞳。どこかで見た気がすると思ったら、ギルの妹だったのか。

「しかもギルとは仲が悪いの。悪いって言うよりは、メルウィンの方が一方的に嫌ってるって感じなのよ。」

アマリアがため息をこぼしながら言った。

「まあ、2人は明日から来てもらうから。明日は今日と同じ第3塔の2階闘技場に9時に集合よ。」

「ラジャー。」

オレたちはキーナの言葉に、声をそろえて返事をする。

午前中はそこで解散し、それぞれ昼食を食べにいくことになった。

サヨとアマリアは住居区の中にあるレストランへ向かった。

武術錬成区以外には、何処でもレストランはあるが、1番多くのレストランがあるのは住居区だ。

キーナはやり残した仕事があるといって、協会区へいった。

1人になったオレは、しばらく住居区を見回ったあと、ギルバートを迎えに行くために協会区へ向かった。

「・・・聞けば良かったなあ。」

任務報告窓口の場所を聞くのを忘れていたため、完全に迷ってしまった。

あてもなくブラブラと歩いていると、誰もいない吹き抜けにたどり着いた。施設の外側を囲むように吹き抜けがあるようだ。

そこからは、静寂の森の入り口の方が見えた。おそらく3階であろうこの場所からは、遠くに武術錬成区が見える。

「・・・気持ちいい。」

微かに吹く風は、頬を優しくなでていく。

しばらく外を眺めていると、曲がり角の向こうから、誰かの話し声が聞こえる。

聞き覚えのある声だ。

「・・・シャマール?」

気になったので、そっと近づいて話を聞いてみた。

「書の状況に変わりはない?」

「はい。異常はありません。」

もう1人の人は、さっき放送で聞いた声だ。

「カロールさん?」

シャマールと話をしているもう1人の女性。

腰まである長い茶色の髪を縦に巻いている綺麗な女性。それはカロール=アナトール。

2人は声を潜めて話している。

「そう。ならいいわ。」

おそらく書のことについてだろう。

「書が無くなっては、大変どころじゃすまないわ。引き続き警備を行うように伝えて。」

「了解しました。」

そう言うとカロールは、足早にどこかへ向かった。

オレはその場を立ち去ろうと、方向を変えた。

その時、シャマールが誰かと話す声が聞こえた。

もう一度近づいてみると、さっきとは違う20歳くらいの男性がいる。

「キリク。」

「ここに。」

キリクという男性は、真っ赤な腰まである髪をおろしている赤い瞳の人だ。

「プルートたちの動きは?」

「今はまだありません。しかし、もうそろそろだと思われます。アジトへの人の出入りが多くなっています。」

何だって?

思わず声を上げそうになったが、ぎりぎり押さえる。

「おそらく協会()本部()へ攻めて来るだろうな。」

・・・ん?

気のせいだろうか。シャマールの言葉遣いが変わってる気がする。

「その時、援軍はどうなさいますか?」

「いらないだろう。こちらにも腕の立つヤツはいる。それに8星将軍が1人いれば十分だろう。いざとなれば私が片付ける。」

「分かりました。・・・でもいい加減、王城に戻ってきてくださいよ。ルイーダさんも色々大変ですし。」

「まあ、いつかは戻るさ。」

「陛下のいつかは一体何年後なんでしょうね?」

キリクは笑いながら言う。

「まあよい。ともかく頼んだぞ。」

「了解。陛下が望むままに。」

そう言うとキリクは消えた、というより瞬間( ワ ー)移動()したみたいだ。

大変なことを聞いてしまった。

シャマールが陛下?どういうことだ。

ともかくここから立ち去ろう。

そう思い、歩き出したとき・・・。

「っわあ!」

気が抜けたのか、段差につまずいて声を上げてしまった。

ギリギリこけなかったが、シャマールに見つかってしまった。

「ナオ?どうして・・・。」

「あっ!・・・いや、その・・・。」

「・・・聞いていたのね。」

シャマールはため息をこぼしながら言った。

「悪気は無かったんです。ギルを探していたら迷っちゃって、偶然ここに来ただけで・・・。本当にすいません。」

頭を下げて謝るオレを見ながら、シャマールは微笑んで言った。

「いいのよ。遅かれ早かれ言わなければ行けなかったから。」

そういうとシャマールは吹き抜けから出た。

「もうこんな時間だわ。ナオ、下のレストランに行きましょう。いろいろと言っておかなきゃいけない事もあるから。」

そう言って歩き出したシャマールを追いかけて、オレも1階にあるレストランへ向かった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ