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STONE MEMORY  作者: りん仔
12/18

部隊内対抗戦

ナオ、アマリア、キーナの3人に加え、2人の守護者、ギルバート=ヘイリーとアマリア=マーティンが加わり、第八番部隊を結成する。

そのメンバーで、一週間後に迫る部隊対抗戦に向けて、活動を開始する。

「くあーっ!ねみぃなあ!」

ギルバートののんきな声が、静かな空間に響き渡る。

オレは今ギルバートと共に、闘技場の入り口にいる。

この協会本部には、ハンター専用の施設がある。

その施設の中心にあるのがアリーナ。部隊対抗戦など、大きな試合や行事の時に使用される、闘技場の何倍もある広いところだ。

その周りに囲むように建っているのが闘技場だ。といっても3階建ての塔になっており、塔は7つある。

オレたちがいるのは第3塔の2階だ。

今日は部内対抗試合があると聞いてきたのだが、まだギルバートしかいない。

「なあ、ギルバートのメモリーって何なんだ?それも星剣なんだろ?」

あくびを連発していたギルバートは、眠そうな顔をしながら答えた。

「んー?俺のは二丁拳銃っていう銃だ。まあ見た目は遠距離型に見えるが、実際は銃口の辺りが厚くできてるから、近距離型でもある。星呪文を使ったら、バズーカ型にもなる。」

ギルバートの話の中で、聞き慣れない言葉があることにオレは気付いた。

「せいじゅもん?」

オレの質問にギルバートは、たれた目を大きく見開いた。

「そんなことも教えてもらってなかったのか?」

「まあ、いろいろと忙しかったし。」

「なるほどねえ・・・。」

そう言いながら、ギルバートは近くにあるベンチに座った。その横にオレも座る。

「ほら、アベルたちがハンマーを出すとき言わなかったか?燃え上がる炎は、絶えることなく・・・っていっただろ。あれが星呪文ってやつで、元々の星剣の能力を何倍にも増加させたり、星剣の形を変えられるんだ。まあ、結構な量の覇気がいるんだけどな。」

「覇気?」

「あー、それもか。」

辺りが次第に明るくなってきた。もうそろそろみんな来ていいはずなんだけどなあ。

「覇気ってのは、神力のこと。存在感?いや、オーラかな?ともかく、俺たち生き物だけでなく、建物や植物、海とかにもあるんだ。覇気を見たりするためには、まず自らの覇気をコントロールできるようにならなければいけない。ちなみに今のお前じゃ無理だな。」

「えぇー!」

ふてくされているオレを見ながら、ギルバートはケラケラ笑っている。

そんな事をしてると、キーナとシャマールが来て、すぐあとにサヨとアマリアが、手をつなぎスキップしながらやってきた。

「あの2人いつのまに・・・!」

「性悪ガールズ、ここに参上!」

そんなことをギルバートと言っていると、鋭い視線がオレたちに向けられた。

が、その視線もすぐに別の所へと向けられた。

キーナの持ってきた鍵によって闘技場が開かれた。

ここには一度来たことがある。

まだ本部に来て2日目のとき、特訓をするために来たのだった。

今回は部隊内対抗試合をするためにここへ来た。

中は屋内グラウンドのようになっていて、大きな窓がある。

その窓が開けられているため、心地よい風が闘技場の中を吹き抜ける。

「さあ準備をして!すぐに始めるわよ。」

キーナの声にせかされて、オレたちは準備を始めた。

準備といっても、軽く準備運動をした後、自分の武器の具合を確かめるだけだ。

「メモリー01(ワン)、ルビーブレイド。」

オレの言葉に、首にかけてあるストーンが反応して光った。

その光は大剣の形になり、オレの手に握られた。

「・・・よし。」

どこも異常はない。この前と変わらず、白銀の刃は輝いている。

こんな大剣を使いこなせるというのが、自分でも信じられない。

大剣を握りなおし、何回か振ってみる。

風を切る音を聞きながら、オレは目を閉じた。

目を閉じていると、いつも元の世界のことを考えてしまう。

また元の日常に戻れるのだろうか。自分はこのままどうなってしまうのだろうか。

トビラが通してくれなかったのは、この世界に残れということなのだろう。

この世界に居続けたい気持ちもあるが、それよりも帰りたいという気持ちの方が、自分の中では大きいのだと感じる。

オレはただ・・・ただ元の世界に帰れればいい。

元の世界に帰って、『いつも通りの日常』を過ごす。朝起きて身支度をし、玄関から出る。サヨとは家が近いから、学校までは一緒に向かう。学校に着いたら教室に入り、友達と授業が始まるまで笑い話をする。昼食の時も友達と過ごす。その中にはもちろんサヨがいて、下校の時だってサヨと一緒に帰る。

ここに来るまでは当たり前だと思っていた。だが、もしオレとサヨのどちらかしか帰れなかったとしたら、そこは『いつも通りの日常』ではなくなる。これほどまでにサヨを必要だと思ったことはない。それは家族的感情なのか、それとも・・・。

・・・いやいや。あいつはただの幼馴染みだ。

そう、それでいいんだ。それで・・・。

「ナオっ、おいナオっ!」

「うわっ!何だ、ギルバートか・・・。」

ギルバートの声で我に返った。考えにふけっていた分、余計に驚いた。

「何だはないだろ?あっ、まさか愛しの誰かのことを・・・。」

「バカ。違うよ!・・・てか試合順決まったの?」

ギルバートはキキッと笑いながら、辺りを見回した。

「1試合目はアリーとサヨだそうだ。俺たちはキーナんとこに行ってようぜ。」

「アリー?」

「ああ、アマリアの愛称だよ。お前もそう呼んでやれよ。」

「アリーか。なるほど、愛称ねぇ・・・。」

だったら、ギルバートは何だろう。

「ギルってとこか?」

「へ?」

ギルバートの気の抜けた返事に、オレは少し頬をゆるめた。

「ギルバートの愛称だよ。いいだろ?ギルっ!」

「もちろん!その方がいいさ。」

2人で笑い合っていると、サヨとアリーが闘技場の真ん中に立った。

「メモリー01ワン、パワーアーマー。」

サヨの言葉でストーンが光り出し、元々はめていたグローブとブーツの上から、さらに頑丈なパワーグローブがはめられた。

それをみて、アマリアも武器を復元させる。

「メモリー01ワン、トライデント。」

アマリアの緑色のストーンが輝き、復元させられたのは、銛に似た武器だった。

ナオの大剣よりも長く、アマリアの髪と同じ、深い赤色をしている。

「いくわよ。アリー!」

「ええ。サヨ!」

開始のブザーが鳴り響いた。

「はああああっ!」

サヨにむかってアマリアの一突き。

それをサヨはかわし、アマリアのトライデントは地面に刺さる。

「くっ!」

アマリアがトライデントを抜くよりも早く、サヨの蹴りがアマリアの腹部に直撃。

「ああっ!」

アマリアは蹴飛ばされ、闘技場の壁にぶつかった。

サヨは着地し、にやりと笑う。

「うわー、アリー大丈夫かな。」

念のため、伸縮性のあるプロテクトキューブをしているため、剣などで体が切れることはない。だが、斬ったときや突いたときの衝撃は直接伝わる。

サヨのようなタイプは、よっぽど大きな衝撃がくるのだろう。

たった一発の蹴りでも、アマリアはそうとうなダメージを受けている。

「・・・まだアイツ本気じゃないな。」

「ええ?」

「アイツ本気になったら双子になるんだ。」

その時だった。アマリアのストーンがいきなり輝きだした。

「今日はちょっと早めに使っちゃおうかな。」

アマリアは微笑み、ストーンを握った。

サヨはその様子をじっと見ている。

「アリーの家は先祖代々、自らを2つに分ける能力を持っているのよ。」

じっとオレたちの横で試合を見ていたキーナが説明してくれた。

「この世界クリスティアでは、それぞれの家元に代々伝わる能力があるの。アマリアは分身能力。ギルバートは透視能力を持っているわ。」

オレたちの方を見ずに、キーナは言った。

「マーティン家秘術、双子(ツインズ)。」

するとアマリアは消え、現れたアラベルとルルベルは、2人ともトライデントを持っていた。

アラベルとルルベルはクスッと笑いトライデントを構えた。

「アタシたちについてこれる?」

「望むところよ!」

サヨは高く跳躍、右手に覇気をこめてルルベルに迫る。

「閃光弾っ!」

見事に当たった・・・と思ったが、ルルベルはトライデントでガードしていた。

すぐにルルベルはサヨの右足下近くにトライデントを突き刺し、サヨの動きを封じる。

「くっ!」

サヨがそこから逃げるよりも早く、ルルベルの背後からアラベルが飛び出した。

「らあああああぁっ!」

アラベルの突きによる一閃は、サヨを壁まで突き飛ばした。

「うあっ!」

もう少しで壁が壊れそうなくらいの衝撃だった。だが、双子の攻撃はまだ終わらない。

「森力神技、双銛(ツイン)の(・)(トライ)突き(デント)」

ふらふらと立ち上がったサヨに、とどめの一突き。

「ああっ!」

双子の突きに飛ばされ宙を舞ったサヨは、そのまま地面に落ちた。

「ま・・・まいった。」

その声で試合終了のブザーが鳴り、一試合目が終わった。

双子はアマリアにもどり、トライデントをしまった。

「アリーってば強すぎ。」

倒れたままサヨはアマリアに言う。

「ええー?サヨだって。私も久しぶりに双子になって戦ったんだよ?」

まだまだ暴れたりなさそうなアマリアを見て、オレとギルバートは身震いをした。


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