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STONE MEMORY  作者: りん仔
11/18

部隊結成

ラヴィエルの指導の元、特訓をはじめたナオたち。

だが決して楽な特訓ではなかった。

キーナは暴走し、闘技場を破壊しそうになるが、シャマールの圧倒的な力によって抑えられた。

そして特訓を終えたナオたちは、狩猟者として動きだす。

「うーっ・・・。」

昨日の特訓のおかげで、今までよりもさらに悪化した筋肉痛がオレを苦しめる。

今朝はキーナがオレとサヨに、モンスター退治のことについて話があるとのことなので、キーナの部屋の前に来ている。

昨日の件で、オレたちの実力じゃキーナに勝てないことが十分に理解できた。モンスター退治でオレたちが役に立てるとは限らないはずなのに・・・。

なのにオレが今着ている服は、協会の制服だ。

といっても、シャマールやセウスさんが着ていたような白い服ではなく、キーナが着ている、動きやすくて丈夫な、明らかに戦闘用に作られたと思われる黒い制服だ。

昨日の夜、それに着替えてから明日は来いと言われたのは、そういうことだったのか・・・。

まんまとはめられたなと思いつつ部屋の前に立っていると、隣の部屋からサヨが出てきた。

「おはよーナオ。」

「おはよ。・・・なんかえらく眠そうだな。」

「昨日寝るのが遅かったの。」

サヨもキーナと同じ制服を着ているが、サヨの場合メモリーを復元させやすいように、同じ形の黒いブーツとグローブを付けている。

「さ、いこいこ!」

なぜか異様に張り切っているサヨにせかされながら、キーナの部屋に入った。



「あら、早かったわね。」

キーナは部屋にある机の近くにいた。部屋の中心にある2つのソファーの内の1つには、オレたちくらいの歳の少年と、小学生くらいの少女が2人いる。

少年は、銀色の長髪を後ろで1つに束ねていて、緑色で少したれた目をしている。

2人の少女は、見分けがつかないくらいそっくりの双子で、燃えるような赤い髪をそれぞれ違う方に結んでいる。

右を結んでいる方が金色、左を結んでいる方が銀色の目をしている。

3人とも黒い制服を着ていて、その上からグレーのローブを着ている。

「この2人は?」

少年がオレたちの方を振り返り、キーナに訪ねた。

「紹介するわ。人間界から来た守護者のナオとサヨよ。」

「ようこそ人間界から。オレはギルバート=ヘイリー。で、こっちの感じ悪そうな嬢ちゃんたちは、アラベルとルルベル。右を結んでいるのがアラベルで、左を結んでいるのがルルベル。まあ、本当の姿じゃないがな。」

「へっ?」

オレとサヨがそろって聞き返す。

「おい、そろそろ本当の姿に戻ってやったらどうなんだ?」

ギルバートが双子にそう言うと、双子はそろって言い返す。

「感じ悪いって何よ!あんたなんかただの軽い男じゃない!」

「いやぁ、軽い男はないでしょう。」

アラベルとルルベルは、へらへら笑うギルバートをにらみつけたまま、呪文を唱えた。

「マジックアウト!」

すると双子は1つになり、小学生くらいだったはずが、オレたちと変わらないくらいの少女になった。

赤い髪は左右に結ばれ、右目が金色、左目が銀色をしている。

「はじめまして。私はアマリア=マーティン。アラベルとルルベルってのは、私が2つに分かれたときの名前。こっちが本当だからね!」

どうやらギルバートとアマリアは仲が悪いようだ。

いや、仲が良いのかもしれない・・・。

自己紹介が終わったところで、今日の本題に入った。

「今日あなた達をここに呼んだのは、ハンターとしての資格をとるためよ。ギルバートとアマリアは知ってると思うけど、一週間後、部隊対抗戦があるの。」

「ハンターの資格?」

キーナは自分のベッドに座りながら説明する。

「協会の中には、私たちのように黒い制服を着ている、ハンターといわれる組織があるのよ。まあ、あなた達で言う警察みたいなもの。そしてその中には、いくつかの部隊があって、それぞれ4人から6人制の部隊になっているの。」

「部隊かぁ、オレも昔あこがれたもんだな・・・。」

ギルバートがしみじみと呟く。

その言葉に鋭くアマリアがつっこむ。

「女目当てでしょ?」

「もちろん!ハンターってみんなのあこがれじゃん。」

「この女ったらし!」

「まあまあ、それくらいにして。」

サヨが止めにはいったが、アマリアはギルバートを睨み続けているし、ギルバートはへらへらと笑っている。

ちょうどその時、侍女が紅茶とお菓子持ってきた。

紅茶を受け取ったキーナは困ったようにため息をつき、また話し出した。

「話を戻すけど、その部隊を私たちで作ろうと思うの。」

「オレたちで?」

「ええ、この5人でよ。もちろん、部隊対抗戦にも出るわよ。」

キーナは自信満々に鼻を鳴らしながらいった。

けれど無茶だろう。

「大丈夫なの!?」

アマリアが大声でオレの言いたかったことを言う。おそらく他の2人も同じ気持ちだろう。

ギルバートたちはともかく、オレとサヨはおそらく、十分といえるほどの戦力ではないと思う。

「大丈夫も何も、ハンターランクをとっとかなきゃ、後々不便でしょ?」

「ハンターランク?」

「ハンターたちの強さの象徴であり、この世界の国々を行き来するためのパスにもなる、便利なものなの。」

へえ、それは便利なもんだな。たしかにそれならあった方がいいと思うなあ。

「でも、オレたちで勝てるのか?」

それはオレたち4人の疑問だった。

「だったら試してみる?」

「試すってどうやって?」

ギルバートが天井を見上げながら聞く。

「明日、部隊内対抗試合をするわよ。」

「はあ?」

紅茶を飲んでいたオレは、驚きのあまり紅茶を吹き出しそうになった。

「守護者同士、本気で戦うの。もちろん私もはいるわ。」

「えぇー。キーナがはいったら勝ち目ないし。」

サヨがふてくされて呟くと、キーナは怪しい笑みを浮かべ、紅茶の残っているカップを机の上に置いて言った。

「さあ、明日は頑張って!ビリだった人は、一週間本部の掃除を行うこと。以上、解散!」

「えぇー!」

明日も一波乱起きそうだ・・・。



まだ少し冷たい夜風が吹く協会本部の最上階にある吹き抜けにキーナはいた。

ここ協会本部の最上階には、たった1つの大きな部屋があるだけで、それ以外にはキーナが今いる吹き抜けしかない。

灯りはついていないが、異様なほどに輝く三日月のおかげで、キーナが居る辺りは少し明るい。

「話って何かしら?」

暗闇の中から聞こえる声に、キーナは振り返る。

「ちょっと頼み事があってね。」

ふうん、といいながらシャマールはキーナの横まで来た。

「ナオたちの訓練に付き合ってほしいと言うところでしょう?」

「何だ。わかってるのね。」

キーナは軽くため息をつき、シャマールはクスクスッと笑う。

「明日、部隊内対抗試合をするの。それが、あの子たちの実力を確かめるための1番てっとりばやい方法だと思ったから。」

「いいわね!それ私も参加していいかしら?」

キーナは子供のようにはしゃぐシャマールに哀れみの視線を送る。

「・・・誘うつもりで来たのよ。」

はしゃぎ具合がさっきよりも増したシャマールを見たキーナは、もう一度ため息をついた。

「でも本気は出しては駄目よ。試合にならないから。」

「あら、そうなの?」

・・・完全に遊ばれている。

だが、シャマールには誰も勝てない。勝てるわけがない。

「あなたに勝てるわけがないでしょう?協会本部総帥シャマール=ガブリエル。いいえ、女王神リベラ・テラ・アングレイ。」

「その名前はあまり好きではないわ。」

キーナの目の前にいるのは、総帥シャマール=ガブリエルであり、神界クリスティアを束ねる最高神の女王リベラ・テラ・アングレイでもある。

その事実を知るのは、キーナとセウスさん、それと王城オリンポスにいる王室秘書のルイーダ=アルモニスだけだ。

「我らが女王が、こんな長期間王城から抜け出して大丈夫なの?」

「そういうのは全部ルイーダに任せてるわ。第一こっちの方が楽でしょう。」

世界一面倒くさがりの女王は、仕事よりも戦いが好きだ。

だから、書類に目を通し政治を行う王城よりも、クロム族をまとめ、いざとなったら自らが戦うことの出来る協会の方を、彼女は好んでいる。

「今日はもう寝るわ。明日も早いもの。」

キーナは微笑みながら、シャマールに背を向けて歩き出した。

「ナオには気をつけて。」

キーナは歩みを止め、シャマールに問う。

「なぜ?」

「あの子の覇気の量は尋常じゃないわ。」

「それは守護者だし、星剣を持つものだからでしょ?」

覇気というのは、その者の神力の大きさを表すものだ。

確かにナオの覇気は、サヨやギルバートに比べれば大きいが、それほど飛び抜けて大きいというわけではない。

「それはサヨたちも同じはず。けれどナオは、まだ大きな力を隠し持っているようにしか思えないの。本人は気付いていないようだけど、何かのきっかけで覇気が爆発する可能性も低くはないわ。あの子はただの守護者ではないと思うの。800年前に関わっている可能性もあるわ。それに・・・。」

シャマールは一瞬とまどったが、またすぐに話し出した。

「・・・4大星神の生まれ変わりかもしれないわ。」

シャマールがとまどったのが、キーナにもわかった。

もしナオが4大星神の生まれ変わりだとしたら、ナオには背負わなければいけない使命があるからだ。

その使命は、ナオにとってはとても辛いことだろう。

キーナにはそうでないことを願うことしかできないのだ。

「あんな小さな子供が、重い使命を背負ってはいけないのよ。あの子は人間界に戻るべきでしょう。」

「わかったわ。」

それだけを言い残し、キーナは再び歩き出した。

今までよりも、明日が少し不安になった夜だった。

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