表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/13

異世界では遊ぶのも一筋縄ではいかないらしい

 お久しぶりです。

 皆様、ご機嫌は如何でしょうか?

 私、いえ私とスケさんは死んでいるという極めて不健康な状態でございます。

 あ、疲れを知らないアンデッド2人で歩いていただけですから旅の方は順調に進んでいますよ。

 方向が合っているかどうかは分かりませんが。


 で、その旅の最中ずっと黙って歩き続けるのではあまりにも味気なかったので、スケさんに色々と質問をしてこの世界の基本常識などを学びました。

 というわけでスケさんが近くに現れたゴブリンを相手している間に、それらを一旦まとめてみたいと思います。


・スケさんと初めて出会った時はスケさんが地面で眠っていたのでただの骨と勘違いしたようだ。

 アンデッドは別に眠る必要はないけれど気分で寝ていたのだとか。


・スケさんの肉体の前の持ち主は騎士で正に文武両道という感じの人だったらしい。

 残念ながらあまり出世は出来なかったらしいが。


・スケさんは騎士の力をある程度受け継いでいるおかげで並みの人族の騎士程度には強いらしい。

 本人曰くそれ以上でもそれ以下でもないらしいが。


・スケさんの得物は槍で騎士が使っていた物をそのまま使用しているらしい。

 見せてもらったけれど装飾が施されていてそれなりに高そうだった。


・この世界には5つの種族、魔族、人族、エルフ、ドワーフ、獣人がいるらしい。


・アンデッドは例外でどの種族でも成り得る可能性はあるそうだが、アンデッド同士か魔族としか言葉が通じない種が多いらしい。


・アンデッドは魔族を除く他の種族全てに忌み嫌われているため必然的に魔族に味方しているらしい。

 実際に魔軍の最高戦力、すなわち魔軍四天王の2人はアンデッド。


・アンデッドの種族の中で広く知られている物は以下の通り。

 吸血鬼、リッチ、スケルトン、ゾンビ、グール。

 他にもいるらしいがどの様な存在かはスケさんも知らないらしい。


・人口の多さは人族、獣人、魔族、ドワーフ、エルフの順。


・人族の国は4つあり、獣人は国を作らず遊牧民のような生活を、魔族、エルフ、ドワーフの国はそれぞれ1つしかない。


・一口に魔族と言っても魔王の下に付いていない勢力もいるらしい。


・獣人は同じ部族の獣人にしか仲間意識を持たないらしい。

 その結果他の種族とは違って獣人同士の戦争が多々あるらしい。


・魔族と人族との仲は非常に険悪で、休戦こそするものの常時戦争状態と言っても過言ではないらしい。

 そこに元クラスメイトが加わればどうなる事やら。


・それ以外の種族の仲はそこまで良くはないが戦争が起こるほどではないらしい。


・エルフは基本的に他種族に干渉せず森に引きこもり、獣人は部族内で暮らし続けるか傭兵として生活、ドワーフは武器を生産する事に命を燃やし続ける事が多いらしい。

 ただし、どの種族においても人族と魔族のどちらに付くかは基本的には個人の自由らしい。

 そのため獣人の場合は同じ部族内の者とも敵味方に分かれて戦う羽目になるという事もあるらしい。


・人族に肩入れしている神、つまり私を転生させた神以外の神はいないらしい。


・魔法は基本的には誰でも使えるが、戦場で使えるほどの威力のある魔法を放てる者はそこまで多くないらしい。


・基本的に魔力量が才能を意味しており、1人で戦場をひっくり返しかねない化け物じみた数値と強さを誇る者もいるが魔力が少ない者は下級の魔法を使うだけで魔力が尽きてしまう。

 つまりステータス通りならば自分が魔法を使える可能性はほとんどない。


・魔法の属性は闇、光、水、火、土、風、そして無の7つ。

 どの魔法が得意なのかはある程度は使い手の種族によって決まる。


・転生に失敗した理由は依然不明。


・今向かっている場所は魔族の王都、ハウエル。

 

・この世界の魔物は平原などにはあまりおらず北の山脈に主に生息しているらしい。


・魔物には知性のない弱い種族も多く存在するがドラゴンのような、強くそして高度な知性を持った存在もいるらしい。


・魔物は基本的に全種族と敵対関係にあるらしい。


 ざっとこんな物ですね。

 色々と想像と違っていたところはありましたが、とにかく地球とは似ても似つかない世界のようです。

 それだけでこの世界に来た甲斐があるという物です。


 しかしこうしてまとめてみると中々に凄まじい世界のようですね。

 魔物が平地にいないというのは良い事だと思いますが、獣人が部族間で争うというのはかなり想定外でした。


 まあ『所変われば品変わる』どころか種族も世界も文明も違いますからそう言った事があっても何ら不思議ではないわけですが……やはり理解は出来ませんね。

 地球のように一つの種族によって世界全体が支配されているならばともかく、他種族が存在する世界で獣人同士で争っている余裕などないと思うのですが……地球人には理解出来ない何かがそこにはあるのでしょう。

 地球の、この世界においては何の役にも立たない価値観に囚われるのは良くないとは思っているのですが……中々難しい物です。

 ここで過ごした時間の何百倍も地球にいたのですから。

 

 ま、そんな感じでそれなりにこの世界の知識を得ながらもスケさんと旅をしているわけですが……やっぱり暇なんですよね。

 別に話す事が無くなった、というわけではないです。

 先程のような基礎的な知識以外にもこの世界の歴史や文化、芸術、社会など聞くべき、そして面白い事は沢山ありますし地球での暮らしを事細かに話せば旅の時間ぐらいは余裕で潰れると思います。

 でもずっとそのような話をしている気にはどうしてもならないのですよ。

 要するに……遊びたいのです。

 テレビゲームのような物を望もうとは思いませんが、オセロや将棋、トランプのような物ぐらいはしたくなります。


 というわけで旅の途中でも直ぐに遊べるゲームを考えていたのですがね……中々面白い物が見つからないのです。

 先程述べたボードゲーム類やトランプは木を切り出してボードやカードを作る所から始めなければいけないので旅の最中にやるには相応しくありませんし、そもそも私の肉体がない時点で出来ません。

 同様に、私の肉体がないお陰で鬼ごっこなどは味気ないです。


 では身体を使わない遊び、例えばしりとりではどうかと言いますと……これも中々上手くいかないのです。

 実例を挙げてみますと……リンゴ(スケさん)→ゴリラ(私)→ラッパ(スケさん)→パチンコとなった場合、スケさんがパチンコを知らないのでゲームが破綻します。

 ちなみにこの世界には動物園のような物がほとんどないため、スケさんはゴリラという名前しか知らず実物を見たことはないそうです。

 言われてみればそうなのですが……ワールドギャップという物は難しいですね。


 別パターンですと……テーブル(私)→ルーラク(スケさん)→クラン(私)→ンボルグ(スケさん)という風に色々と収拾がつかない事態に陥る事もあります。

 んから始まる言葉がこちらの世界ではあるので、んを言った後にまだ続くというしりとりのルールを無視したことが起こるのです。

 ちなみにルーラクとンボルグはどちらもこの世界の地名らしいですが……知るわけがないと。


 そんな風に無茶苦茶になってきますとしりとりを繋げる気などなくなってきまして……ヘラクレス(私)→サーサラス(スケさん)→スリジャヤワルダナプラコッテ(私)→テクスラルハサルトタスパ(スケさん)→パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・ファン・ネポムセーノ・マリア・デ・ロス・レメディオス・クリスピーン・クリスピアーノ・デ・ラ・サンティシマ・トリニダード・ルイス・イ・ピカソ(私)という風になってきまして、もはや何をやっているのか分からなくなってきたのですよ。

 というわけでこれもボツになりました。


 ではさらにランクを下げて人類史上最も公正な手段と言われているじゃんけんを元にしたゲーム、例えばあっち向いてホイ!をやるというのはどうかと言いますと……これが実は最大の曲者でした。

 本来じゃんけんという物は同じタイミングで出すから公平なのですが……皆様も御存じの通りいわゆる後出しという手段がありまして。

 当然、後出しすれば反則負けなのですが……バレなければ何も問題ないと。


 勿論、普通はバレます。

 いや、地球ではバレました。

 しかし残念ながら私が今いる場所はこのじゃんけんというゲームが開発された地球とは違う世界なのです。


 つまりですね……地球ではあり得ない反射神経を持つ者がいて、そう言った人達ならば相手に気付かれない様に後出しする事が出来るという事なのです。

 そしてスケさんもその1人だったのです。

 その結果……15連敗しました。

 初めてじゃんけんを知ったアンデッドにね。

 

 そんな風に心理戦そっちのけの勝負になってしまったので当然これもボツになりました。

 ちなみにこの世界ではじゃんけんの代わりにコイントスが用いられているらしいです。

 

 困ったのでスケさんにこの世界にはどのようなゲームがあるのかという事を聞いてみたのですが……そもそもスケさんがゲームを全く知らなかったのです。

 スケさんの記憶によれば肉体の前の持ち主である騎士は幼い時から遊んだことなどなかったらしくて……。

 スパルタ教育過ぎるような気もしますが……よくよく考えてみれば毎日の生活を文字通り命がけで生きなければならない世界なので、それも当然なのかもしれません。


 まあそんな訳で旅の道中に相応しいゲームが見つからないと。

 ではゲームを作ってしまえば良いと思ったのですが……これがまた難しいのです。

 スケさんがゴブリンの相手をしている今の間に何か思いつきたいのですが……面白い物が直ぐに出来上がるはずもないですよね。

 

 あ、スケさんの槍が最後の1匹を槍で貫きましたか。

 断末魔の叫びが中々に耳障りですが……まあ慣れました。

 魔物に会うのは今回が初めてだったのですが、ただの獣ならば何回か出会いましたので。



 「先程のゴブリン達は群れから追放された個体だったようだ。肩や腰には武器によって付けられた傷跡があった。で、何か面白いゲームは思いついたのか?」


 ふむ。

 どうしましょうか。

 面白くなさそうなゲームならばいくつか思いつくのですが……。

 

 ……階段とかで遊ぶじゃんけんを利用した遊びを応用してみましょうか。

 確か名前は……グリコでしたっけ?

 グーを出した時はグリコだから3歩進んで、チョキを出した時はチヨコレイトだから6歩進んで、パーを出した時はパイナツプルだから6歩進むあれです。

 

 で、じゃんけんを利用すると後出しで無双されますから何か別の決め方に変える必要がありますよね。

 例えば……そうですね。

 先ほど言っていたコイントスは……スケさんがコインを持っていないので出来ないと。

 

 進む歩数を決めるわけですから何か数字を関係させたいのですが……少しポーカー要素でも取り込んでみましょうか。

 それにグリコらしき要素も混ぜて……。

 こんな物でどうでしょうか?

 

「特に名称があるわけではないのですがこんなゲームはどうですか?

 ①両方同時に1~13までの数字を言い、より大きい数字を言った者が相手の言った数字の数だけ進める。

 ②1ゲーム13回でそのゲームの間は同じ数字を二度言う事は出来ない。

 ③同じ数字を二度言った場合は言った側の負けとして①に従う。

 ④1は基本的には一番弱い数字だが、特例で13には勝てる。

 ⑤2人ともが同じ数字を言った場合はどちらも進まない。」


 ……それなりには遊べるのはないでしょうか。

 ただ、どうせならトランプをやりたかった……。

 ない物ねだりをしても仕方がないですが。


 「……ややこしいな。一度試しにやってみても?」

 「そうですね。やりましょう。」


 本気でやる場合は心理戦になるのかもしれませんが……まあ今は気楽にいきましょう。

 考えるのも面倒ですし低い数字から順に言いますか。


 「では始めますよ。いっせーのーで!」

 「1!」 

 「13!」


 「……この場合は私の勝ちですね。1は13のみに勝てるというルールがありますので。」

 「……つまりそっちが13歩進むと。……1つだけ言って良いか?」

 「……どうぞ。」

 「これ、面白いか?」


 ……さあ?

 思い付きの物ですからそこは……ねえ?

 まあどんなゲームでもやりこめばそれなりに。


 「あと歩数が多すぎるだろ。もしも1ゲームで全敗すれば90歩ほど差が付く事になるぞ。そこまで差が付けば相手の声は聞こえづらいだろう。」


 ……1つだけじゃなくて2つも言っているじゃないですか。

 ただ、両方事実なのが何とも。

 ……しかしこれもまたボツですか。

 早く都市に着いて面白いゲームをやれるようになる事を期待しましょうか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ