本戦出場予選1
これは、歴史の教科書に載っていたことだ。
実は魔法は約120年前に初めて発現した。もっと古来から伝わっているのだと思っていたが、意外にも最近からだ。
それでだ、
………魔法の発明者が誰もいないのだ。
陰で誰かが研究していたかもしれないが、その仮説はないと言われている。理由は、魔法は皆が急に使えるようになったからだ。つまり、そんなことは人間の手では不可能だし、例えできるとしても大規模な研究と調査なだけに、世界中が認知しているグローバルな活動とそのような施設とかがあるはずだ。
といってもやはりおかしな話だ。
魔法物質を含む隕石などが落ちた訳でもなく、宇宙人が地球にやって来た訳でもない。とにかく急だったらしい。
ほんの少しだけ情報はある。
それは、初期の魔法はまだ微力であったこと。長い年月の積み重ねで徐々に力が増していき、本格化したこと。
他には今でも分かるように、人それぞれに個人差があること。そしてスポーツと似たように、努力による成長もできることだ。
この謎は、多くの科学者たちによって研究されているが、未だに証明されていない。諦めた科学者がほとんどだ。
そんな人類の歩みに対して正直オレは、考えたって無駄だろうしどうでもいいと思ってきた。しかし、今回のトリシューラの刻印の件によって知ろうとする価値ができた。だって前に見たことがあるから。
……なぁ、教えてくれよ神様。お前はオレに何を隠している?
なぜオレにこんな_______
1、
昨夜からオレは少しテレビに興味を持ち、今朝、久しくテレビの電源を入れた。
<昨日午後9時頃、『刻龍反乱軍』と名乗るテロリストが、評論家の佐藤明氏を殺害した事件で、午後9時30分にそのテロリストが内閣の世論統制省と対談を行いました。テロリストがインターネット上にアップしたこちらの映像をご覧ください>
<こんばんわ、刻龍反乱軍の僊堂です。先ほど、対談を終えました。結果は待機です。政府側は、多くの政治問題を抱えているらしく、今すぐには対応できないとのことなので、心優しく待つことにしました。しかし、キリをつけなければさすがに困るので、期限を3ヵ月としました。
もしこれを破れば、俺たちは黙っていません。政府の皆さん気をつけてください。お分かりいただけたなら、十分に事を進めてください。それでは>
この後に、『トリシューラの刻印』について取り上げていたがつまらなかった。何せ、刻印を知っている人などいないものだから。
インターホンが鳴った。翔真と橘が来たのだろう。
もう登校しないといけないのかと思うと身体がダルくなる。こんな朝早くから学校行かなくてもいいのに……
***
「昨日みたいに、どうしてテロが起きるんだ?」
「知らないの?長くなるけど聞く?」
簡潔に聞きたいけど、とりあえず聞くことにした。それと、やっぱり話が長かった。
「2060年当時、もの凄く勢力を伸ばしていたヒスパニアが日本と戦争を勃発。日本は負けて四国・九州・北海道を占領された。これがきっかけなんだ。
植民地化したその地域の人らの生活はやっぱり前と違って苦しかったらしい。資金の一部はヒスパニアに提供する制度ができたから収入は減少して、それに影響して失業者も増えた。このような連鎖があったんだ。
でも国から援助があると思っていた。けど、見捨てたんだよ、政府が。それで怒ってストライキを始めた。けれど本州側の人間からすれば、苦しみを理解する人なんていないものだから、ストライキとかはただただ鬱陶しいだけで何の成果もなくて、次第に嫌悪感が湧いて溝が開いた。そして遂には頭文字をとって四九北人と呼んで区別するようになったんだ。しかもストライキは鎮圧されて、10年後の国内紛争にも負けた。そうして四九北人は本州を憎むようになって、それが今も続いて昨日あんなことが起きたんだよ。
こんな感じかな。あ、でも今は当時よりかは落ち着いてきているし僕は全然なんとも思わないよ。」
あ………だから昨日、浅井が五十嵐に出身地聞いたとき雰囲気が少し重かったのか。
「でも、生活が苦しいならどうして四九北人は本州で働かないんだ?確かに『四九北人』というレッテルを貼られているけど…」
「そもそも、その時代は本州でも仕事の雇用の数がそこまで多くなかったの。その状況下で四九北人が押し掛けたらどうなるかわかるよね?」
「仕事することすらできないってことか」
「そう。けれどその頃からすでに日本は完全実力主義。四九北人であろうと有能な人は雇用するの。能力のない人を代償に」
「もうここまでくるとレオも分かるよね?」
「つまり四国・九州・北海道には、才能を認められなかった本州の人らもたくさん混じっているってことか?」
「そういうこと。でも、捨てられるのは可哀想だよね……」
確かに優秀な奴らが集まれば大きく発展する。発展はするけど……やはり可哀想だ。
かと言って、何もしなければ四九北人の方が可哀想だ。
弱い奴は切り捨てようとあの日決めたオレの信念は、こんなにも甘かったのだろうか……
「でもヒスパニアは結構優しい国なの。支配されているのにスッゴく厳しい制度があるわけでもないし、植民地にはヒスパニア政治の参政権もあるらしいの。ちょっと変わっているよね」
「というより2人共、よくそんなこと知っているよな」
「だって支配は今も続いているからもう常識だし、僕ら東京都高校はこれくらいの知識を身に付けないと学力的に通れないよ」
「え?そうなのか?」
聞いてなかった全然。で、でも、オレは悪くない。学習時間の長すぎる日本が、わ、わるいだけだ!