騒動4
<皆さんこんばんわ。僕たちはテロリストの、龍刻反乱軍です。そして僕がリーダーの僊堂です>
テロリスト……
<僕の優秀な部下、山下浩太郎氏によって今テレビをハッキングしました>
「山下浩太郎………!?」
「誰だコイツ?」
「レオ知らないの!?この人は世界中で有名なスーパーハッカーで、その知名度から多くのテレビ番組に出演している人だよ」
「知らなかったな。橘は知っているのか?」
「もちろん、むしろ知らない人はあまりいないと思うよ」
それもそのはず、オレはほとんどテレビなんて見たことない。
でもそんな人まで出てくる訳だから、今回のテロはより本格的だと感じさせられる。
<遂に僕たちは動き始めました、世の中を変えるために。いつまで経っても貧しい僕たちの住む町。完全実力主義の社会。容赦なく切り捨てる日本政府のやり方。これら全てを変えるため、我々は革命を起こします。その証としての第一歩に、この人を殺します>
メガネを掛けた40代くらいの男性が捕らえられていた。
<うっ…うぅ…うぐっ……ううう…!>
口を封じられ、手足さえも錠をかけられていた。
<ご存知の人もいると思いますが、この人はテレビで、僕たちが暮らしている九州、そして四国・北海道の市民をよく貶していることで有名な評論家です。当然の如く、僕たちの怒りに触れました。よって罰を与えることを決定しました。
バチ当たりな人です。何も言わなければこんなことにならなかったのに>
怒りと哀れみが混じったような声だった。
<本当に公開処刑します。ですので、皆さん準備してください。グロいと思いますので、見たくなければ今すぐにテレビの電源を切る、もしくは他のチャンネルに変えてください。
まだ大事な話が残っているので、そうした人は20秒後にもう1度戻ってきてください。
それでは始めます。5秒前、4、3、2__>
<ブチッ>
「どうして消したの?」
「いや、ダメだよこんなの見ちゃ」
「そうだよレオ、何当たり前のように見ようとしているのだい?」
? あまりよくわからないが
……と言いたいが、なんとなくわかる。
皆、惨いことから避けているのだろう。オレはそのようなグロに関してはあまり恐怖を感じたり鬱になったりしない。
親の血を見て以来、耐性が付いたのだろう。
20秒してまた電源を入れた。
<俺たちテロリストは無意味に人を殺さない………だからといって自分は関係ないと思っているお前たち、これは覚えておけ!例え一般人であろうが意味ある時には巻き込む可能性だって十分にある。特に最後まで変えずに観た奴、これが『殺される』ということだ。こうなりたくなければ、目を背けず、目に焼き付け、物事を判断することだ!>
さっきとは別人のように熱くなって語っていた。
<政府の皆さん、お話をしましょう。そちらに堂々と向かいます。会談場所は内閣府庁。会談時刻は30分後の9:30。早いと思いますが、援軍が来ると厄介なんで。あとそれと、俺たちに攻撃しても無駄ですよ。これを見てください>
テロリストたちは前髪を上げておでこを見せた。
するとそこには龍のような模様が赤く光っていた。
<神様が俺の頭の中でこう囁きました。「汝の願いを叶えるため、この力を与えよう」と。
そうです、俺の意志・覚悟が神様に伝わったのです……! そうしてこの刻印を頂きました。他のメンバーもこの通り刻印持ちです。皆、覚悟があってここにいます>
オレは驚いてその刻印を凝視した。
<名は、トリシューラの刻印。神様がそう言っていました>
トリシューラの刻印……
<なので、むやみな戦闘は控えてください。もし守らない場合は、俺たちの意志に反する悪人として__殺します。
ではそろそろ時間なので、放送を切ろうと思います。会談の結果は随時、皆様に動画で報告致します。それではさようなら>
「…………」
「…………」
「…………」
「……ねぇ、これって……」
「うん、そうだね。今回のテロはかなり規模が大きいよ」
「…本当に刻印の力があるテロリストはあれだけなのかな」
「……え?」
「そもそも、トリシューラの刻印ってなんだろうな」
「どういうこと……?」
「……オレ、あいつら以外に、刻印を持っている人を見たことがある」