騒動3
3、
「魔実テストお疲れ様!それじゃあ~~かんぱ~~~い!!」
魔実テストを終えた今日の夜、第1回魔実テスト記念日ということで橘、翔真、オレのいつもの3人で、橘の部屋をお借りしてパーティーをすることになった。
ちなみに午後6時以内に寮のおばちゃんに事前連絡すれば、寮の夕飯をパスできるという謎の制度がある。
「チア~~ズ」
「ちあーず?何それ?(笑)」
翔真にクスッと笑われた。
「『乾杯』のアルカディア語だ。翔真はまだまだ勉強不足だな。授業しっかり受けているのか?」
日本では授業にアルカディア語が取り入れられている。王国の侵攻によって、アルカディア語は世界共通の言語へと発展してきている。
日本はアルカディアに侵略されない。協定を結んでいるから。しかしアルカディアが本気になれば日本は支配されるだろう。それくらいアルカディア王国は強い。
「知らなかったぁ。そういえばレオってホントに日本語上手だよね。上手過ぎてホントにアルカディア人?ってたまに思うよ」
「おかげ様でレオくん、女子からモテモテだしね」
「たっちーはレオのことどう思っているの?スゴく気になる」
翔真は橘のことを『たっちー』と呼んでいる。なんでも、小・中学から同じで、男女の壁を越えて仲が良かったらしい。そのときから皆に呼ばれていたあだ名が『たっちー』だったから、今でもそうなっている。
「わ、わたし!?………べ、べつにそういう視点では見てないし…… そうであったとしても本人の前で言えるわけないでしょ!」
何を焦っているんだこの人は。
というかオレ、今地味にフラれた?
「といっても、翔真もモテていると思うぞ。自覚してないのか?」
「え、僕……? そうなの?」
気づいてないのかよ。
男女問わず、翔真には話しかけやすい。それに優しくて信頼されやすいから人気が高い。女子からすればそれはそれはおモテになることだ。
「ああ。しかも今日の魔実テストでさらに皆の評価も上がっているぞ」
「えっ!お二人さん魔実テストどうだったの?」
気になる!気になる!という顔をこちらに向ける橘。
「今日のオレは本当にかませ犬だったよ。翔真にも五十嵐にも負けたんだ」
「あ!五十嵐くん強かったよね!私、五十嵐くんの1回戦外から観ていたけどスッゴクびっくりしたよ!」
「あぁ……、僕も彼には敵わなかったよ…トホホ…」
オレは翔真のことを見た目と性格だけで判断していたが、全く違っていた。魔法の展開から発動までの所要時間がとても短くて威力も大きかった。校内順位50位以内でもおかしくないほどの実力者だ。
しかし、その翔真を超える存在が五十嵐だった。アイツは言うまでもなく天才だ。翔真は悔しくも、五十嵐に歯が立たなかった。
「でもレオも凄かったよ!僕、たくさん攻撃したのにほとんどかわされたよ。しかも五十嵐くんのもかわしていたよね!レオはもの凄い運動神経があるよ」
「いいや、別にそんなことないって」
その後も、いろいろ喋って盛り上り、映画を観たりテレビゲームをしたりと夜を楽しんだ。
6時くらいからここに居たのに、気づけばもう9時だった。3人だけでよくここまで居られたものだ。
「じゃあ、オレたちはそろそろ自分の部屋に戻るか」
「そうだね」
帰る準備をしていたそのときだった。
<プチッ>
何もしていないのに急にテレビが、薄暗い光景に映り変わった。
「え…………何これ……?」
カメラが動き画面に映ったのは、1人の男を前方に、他数人を後方に並んで立っている姿だった。