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絶世の反逆者 ー刻龍ー  作者: 金の生える田んぼ
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騒動1

魔法には、1つ1つにしっかりとした名前がない。○○魔法というように大きく区切って呼ばれるのが一般的だ。理由は魔法の種類・大きさ・形・威力・量などにおいて、人それぞれに個人差があって判断しづらいから。

その個人差には必ずしも才能の有無が存在する。

多種の魔法を使うことができる、もしくは少種だが優秀な魔法である、といったように、生まれつき才能に恵まれている人、努力による成果で技術を得た人、そして報われない才能の無い人。そのように人は分かれる。


この世界が残酷なのは、弱者は淘汰されること。優秀な人材だけを起用する、そんな世界へと変わってしまった。こうして差別が始まって広がっていく。


その事実をまだオレは知っていなかった。






1、

「おいレオ、何ぼーっとしてんだよ」


「ん?……ああ、オレぼーっとしてた?」


「おいおい、自分で気づいてないのはヤバイぞ」


「ははは………」



今は西暦2141年5月。両親が死んだあの日から5年が経った。


日本は凄い国だ。初めて都市部を見たとき、その光景に思わず目が飛び出た。人の声、足の音、車の音などが都市全体に響き渡っていてとにかく賑やかだった。

そして平和だ。まあ、軍隊は存在するし、稀に軽いテロも起きるが。

問題は残っているが、ここは世界で唯一の民主主義国家だ。法律も他の国と比べ、固く守られている。


オレはそんな国に漂着して、今成長している。


オレは東京都高校に通っている。高校の中で日本一、国から支援を受けている学校だ。

もちろん日本中のエリートたちが集まっていて、オレもその1人。


本心で学校は楽しい。最初は期待していなかったが、実際はあまり退屈しないところだった。


勉学も大事だが、最もなのはやはり魔法。入学試験では、学力テスト3に対して魔法実技テスト7の割合で採用された。だから意外にも、真面目な人ばかりという訳ではない。

わかっていると思うが、魔法の方が優先されているのは就職で大きな役割を果たすから。だが、そのせいで入社の倍率が非常に高い。このように完全な実力主義社会で構成されている。


好きなことよりも得意なことで生きていく、それが社会の常識になっている。


それプラス、現在は世界中で戦争や紛争が絶えない。だから、いつかは自分で職を選べない時代がくるだろうとオレは推測している。



「おい、お前またぼーっとしてるぞ」


「ん?ああ、すまない」


「またその反応……」


コイツは近田涼太(ちかだりょうた)。1つ前の席。

1ヵ月前の入学式からずっとクラスで一番陽気な奴だ。少しうるさいけど、こういう奴も悪くない。むしろ盛り上がったりもするから、一緒に居てありがたくもなる。


「で、何か用か?」


「魔実テスト、レオは()()を何にするんだ?」


魔実テスト。正式名称は魔法実技テスト。

2ヵ月に1回ほどのペースで定期的に行われ、その度に順位が決められる。

順位は同じ学年内ではなく、1・2・3年全体で決められる。

テスト内容は入学試験の魔実テストと変わらないが、採点方法が変わっている。

具体的に言うとまず、戦闘、電気、修復、治癒、錬金などのあらゆる種目を皆同じく受ける。これは入学試験と同じだ。

けれど、その中にあらかじめ自分が選んでおいた1種目だけは点数が大きく倍加する。

得意な種目で点数を伸ばす、これが特化方式の採点だ。


「うーん、まだ決めてないな。そもそもオレには特化しているのがないからなぁ……」


「だよなぁ。俺もないんだよ」

そう話していると……


「ねえねえレオくん!」


やって来たのは浅井美咲(あさいみさき)高山紗恵(たかやまさえ)


「レオくんは特化何にしたの?」


「オレはまだ何も。そっちは?」


「私たち2人とも治癒魔法~!」


治癒魔法か。まあ、見た目からそれらしい感じはしていたが。


「ならオレもそうしようかな。なんちゃってな」


「え!レオくんも!?」


「おいおい、嘘に決まっているよ」


「まじ!じゃあ俺も錬金にするぜ」


涼太がそう言うと、お二人さんは声をハモらせて、

「あ、別に涼太くんは何でも大丈夫」と。



とりあえず嘘をついた。オレは初めから特化を戦闘テストと決めていた。もちろん『戦闘』と書いて提出するつもりだ。けれど、そうしなかったのは少し恥ずかしかったからだ。

恥ずかしい理由は簡単だ。例えばサッカーが下手クソなのに将来の夢をサッカー選手と言っている高校生、これと同じようなものだからだ。


「お~い浅井さん、高山さん、ちょっとこっち来て~」

担任の先生が2人を呼び出した。

「じゃあねレオくん。明日のテスト頑張ろ!」


「お、おい俺は?」


「あー涼太くん居たんだ」


「ちょ、おい!さっき話していただろ!」


そして2人は離れていった。



「チッ お前って本当にモテ男だよな?」

「悪いか?」

「別にィ!」

まあ確かに自分はモテているという自覚はあるかもしれない。



***


放課後、特に寄り道することなく、またこれから遊びに行くという予定もなく、学生寮へと帰った。

初めてこの寮に足を踏み入れたときは驚いた。自分が思っていた以上に部屋が豪華だった。


部屋の両隣の西原翔真(にしはらしょうま)橘夕夏(たちばなゆうか)とは大分仲良くなった。

翔真も橘も人柄としては優しくて他人思いな落ち着いた性格だ。

もう今では遊びに行ったり来たりするくらいの関係だ。



そんな高校生活。楽しさのみに流されてしまいそうだ。けど、違う。もちろん楽しむことは大事だ。しかし、本来の目的を忘れてはならない。オレには成し遂げなければならないものがある。未来のために。

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