本戦出場予選7
7、
「レオナルドくん!いつから学校にくるの?」
「…………」
「あと半年くらいで行かせるよ。もう少し待ってて、ナナちゃん」
「やった!じゃあもっと日本語覚えようね、レオナルドくん」
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「自己紹介、できる?」
「レオナルド・リューク、デス……コノ、チュウガク、モットシリタイ……ヨロシクオネガイシマス」
「よろしく~!レオナルドくーん!」
「よろしくなーー!」
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「学校、案内するよ!ついてきてレオくん!」
「アリガトウ、ナナ」
「うーわ、市岡さん、積極的だねぇ」
「友達いないから探してるんでしょ、アハハハ!!」
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「レオナルドのヤツさー……ダルくね?」
「それな。あいつ話すスピードおっせえし、俺たちもアイツに合わせてゆっくり話さなきゃいけねーし」
「もう俺アイツと喋らんわ。イライラするだけだし」
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「実は私ね……イジメられているんだ……」
「イジメ……! オレモ、サイキン、シャベッテナイ、ミンナト…… ソレヨリ、ダイジョウブ…?」
「大丈夫、レオがいるから学校楽しい…!」
「ソンナヤツ、ムシ、スレバ、イイ」
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「皆見て見てーー!!親なしの市岡さんとアルカディア人くんが一緒に帰っているよー!!」
「アハハ!アイツらラブラブだな!」
「ムシ、スレバイイ」
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「い、市岡…… アンタ……」
「今まで楽しかった?気持ち良かった?
それで、立場変わったけど、どう? 散々イジメておいて『やめてください』は無しだよ?」
「ゼ、ゼッタイ許さない……アンタなんて!私1人で!どうにかして________」
「ナナ……!、オマエ……………」
「…ねぇ…レオ、私……つらい…よ………何が正しいの………どうすれば良かったの……………………
もう、居場所……無くなっちゃったよ……」
「マ、マテ……!」
「……サヨナラ。天国で待っているよ」
「ナナ!!!」
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「ああああ!!」
跳ね上がった。
ベッド……え、何?
「うわぁ!びっくりしたぁ……!」
「……ん?あれ?高山?」
頭が『?』だから一度状況を整理した。
………なるほど、ユメを見ていたのか。
チッ、過去の嫌なユメを見てしまった。もう忘れ去ろうとしていたのに、また……
「泣いてるよ?レオくん」
「え?」
涙を、拭き取ってくれた。
「ここは病院だよ。覚えてる?昨日の夜、遊園地で倒れたこと」
「うん、覚えてる」
あぁそうだ。オレは覚えている。いつ、どこで、どうして倒れたかも全て……!
「ありがとな、意識の無いオレを病院にまで送ってくれて」
「全然いいよ。私のことは気にせずゆっくり休んで。あの後五十嵐くんにも協力してもらったから、彼にも礼言っておいてあげてね」
落ち着く、この静かな部屋は。
病院の先生が来たら何と声をかければ良いだろうか。そういえば高山の目の前で倒れたのだよな。彼女、オレが突然倒れてビックリしたんだろうな。
「いつからここに?」
「ずっとだよ」
「え、寮に一度も帰ってないのか?どうして?」
「べ、べつにいいでしょ////」
別に良くはないと思うが。
……え、じゃあこの人はシャワーも浴びていないのか!?
「お水持ってくるね」
「景色、いいな……」
開いた窓から涼しい春風や薄明るい日射しが入り込み、目覚め後のオレの気分を高揚させてくれる。
……春風といっても5月半ばだが。
「はいどうぞ」
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「どうしてオレが倒れたか気になるか?」
オレの質問に少し間を置く彼女。
「………うん、当たり前だよ。むしろ気にならない方がおかしいよ。……教えてほしいな。でも、言いたくなかったらわざわざ教えなくてもいいよ。人には人の事情があるから」
本当に、優しいな……
「じゃあ、言ーわなーーい」
「え~イジワル~~」
「ウソウソ。いいよ、高山になら教えてあげるよ。その代わり、誰にも言わないと約束できるか?」
勢いでこう言ってしまったけど本当に真実を語っていいのかと迷い始めた。が、きっと大丈夫だろう、この子は正直な心の持ち主だ。
「うふふ(笑)、約束するよ。絶対に、二人だけのヒミツ」
そしてオレは言った。
「電工掲示板、あったよな?あそこに映っていた紫髪の人、名前はなんて書いていたっけ……」
「ケヴィン・アストレア兵士?」
「そう、そいつ。実はさ……オレの親、そいつに殺されたんだ。だから久しく彼を見た瞬間、気持ち悪くなって、つい……」
「えっ……!? 嘘……!?」
やはり予想通りの反応だ。
「だから自分の個人情報とかその他諸々の経歴書もすべて嘘。教師はこの事情を認知済み。そしてオレがこの高校に入ったのは、ケヴィン・アストレアの復讐、いやもっと大きく言えば、アルカディア王国の壊滅。そのための第一段階に過ぎないのだよ」
「え……?何言って……」
「びっくりした?けれどこれは事実。ゴメンね、こんなにも暗い話で。高山の次元じゃなかったね」
話し終えると分かる。やはり高山に話すべきではなかったかもしれない、後悔したかもしれないと。
「何言ってるの。全然理解できない」
「え?だから今言った通り____」
彼女は勢いよく言葉が出た。
「復讐のための高校……?バカ言ってるんじゃないよ!学校というのは、人とのふれあい・学習・実技を通して、生活を楽しむためにあるんだよ!」
……全くその通りだ。でも高山には分かってほしい。……オレはお前たちとはズレている存在だってことを。
「理由なんて人それぞれだろ。勝手に自分の価値観押しつけないでくれないか?」
「バカ!アホ!じゃあ何度も言わせてあげる。どうして私に負けたの?どうして女の子に優しくするの?それって自分の信念がその程度であって本気じゃないからだよ。本気ならそんなこと、尚更じゃない」
「それはもう分かっている……十分に反省した……だから次から___」
「はぁ、もういいよ。人の自由だし、私って口先だけなのばっかだし」
え、じゃあそれって……納得したってことか?
「レオくんの学校に対する考え方が変わらないのなら、それはそれでいいと思う。でも本気で成し遂げたいなら、本気で挑むしかない。信念を曲げてはいけない。だからあなたが今言おうとしたことの通り、次からどんな人が相手でも精一杯力を発揮すること、いいね?」
「え?、あ、ありがと……」
意外なanswerだった。あれだけ言われたのに、全否定はされなかった。むしろ後押しされたような、そんな気が。
「『ありがとう』? 別に私、レオくんに良いこと言った覚えはないけど。それに、認めてはいないし」
「あはは……そうだよな」
そう愛想笑いをするとすぐに手を掴まれた。そして彼女のあるがままに手を動かされた。
「ゆびきりげんまんうそついたらはりせんぼんのーます、ゆびきった!」
あぁ、確か日本でお馴染みのやつ……だっけ?
「怖いな……針千本飲ますって」
「そうされないように頑張るんだよ。
それじゃ、先に帰るね。完治してから退院するようにね」
そう言って彼女はドアを閉めた。
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{アルカディア王国の壊滅?それはどんな夢物語なの?意味が分からない。何言ってるのレオくん、無理に決まってるじゃない。ましてやあなたが?そんなレベルに全然達してないのに}