本戦出場予選4
4、
悔しかった。
まさかあんなにも順位が低いと思わなかった。
皆の前では気にしていないように見せていたが、本当は悔しかった。
こんなことではまともに夢が叶うはずがない。夢を語る資格すらない。
明日から始まる予選。オレは大丈夫だろうか?このままでは上がることなんて不可能だ。むしろ、勝つことすら危ういかもしれない。
そして翌日____
一刻と時間が過ぎ、とうとう高山戦が目の前となった。
「でもなんか不思議だよね。西原くんといい勝負してたのに、レオくん順位すっごく低いのよね?」
「まあ仕方ないさ。多分あのテストは魔法を重要視したテストだったから、オレがいくら攻撃を避けたとしても肝心の魔法がそこまで良くないからあの順位になったんだよきっと。それと、戦闘以外のテストも良くなかったし」
「へ~~、まあ私も人の順位を心配するほど良くはないのだけどね(笑)」
「というかどうして予選を受けたんだ?高山ってメインは戦闘じゃないだろ?」
「まあそうではあるけど、今自分の実力がどの辺りか知りたくなっちゃって。それに戦闘って楽しいじゃん!」
「へ~、高山らしい理由だな」
「あ/// そう…// よ、よ、よーし、行くよ!」
……何照れているんだ?
「それでは両者中央へ」
さえちゃんではない女の先生がオレたちを呼び寄せ、ルールを説明した。
「フィールド外の着陸、ギブアップ、本戦とは違って3秒以上のダウンで敗北となります。そして魔法は周りに迷惑をかけないよう使いましょう。それでは両者後ろに下がって」
フィールドはコロシアムと比べてかなり狭い。そして場外アウトというのもある。
あまり居てほしくはなかったが、やはり涼太など、クラスメイトがギャラリーとして来ていた。
「おーい、お二人さんとも頑張れーー!」
「だめでしょ涼太くん!2人とも集中しているのだから~」
え、橘とかも居るし……
……地味に緊張する…
大きく深呼吸した。
大丈夫だ。いつも通りにやっていれば何も心配することはない。相手だって、強いというわけでもないし。多分。
……よし!準備OKだ。
「それでは始めます。良い結果を。
3……2……1……戦闘開始!!」
「おりゃああぁぁぁぁぁぁぁ!」
うおぉぉ!
いきなり火炎魔法が飛んできた。
あ、あぶなかった…………ギリギリだ…
というかズルい!!魔法の発動には展開やら何やらで、ほんの数秒時間が掛かるのだが、開始宣言と同時にあんな大きいものが出てきた。
開始前から溜めていたんだ……
「えー……避けられた…………でも!!」
高山は透かさず火炎魔法を連撃。
チッ、これでは反撃の隙がない……
自慢の身のこなしで魔法をかわしているが、避けきれる量じゃない。
仕方ない…………!
「シールド!」
シールド魔法で弾きながら前に突っ込む。
近距離まで詰めた。
「距離を詰めたって?甘いね!爆散!」
くそ……!爆裂魔法を地面に叩きつけやがった。そのせいで爆風の圧によって飛ばされた。せっかく距離を縮めたのに。
また火炎魔法の連撃がやって来る。
このままではオレがダメージを受けただけでさっきと同じだ。
よし、こうなったら……
「また近づくつもり?それじゃ何も変わらないよ!いけ、爆散!」
「無計画な訳ないだろ。爆散!」
「えっ嘘!?」
爆散同士のぶつかり合い。
少し劣っているかもしれないが、風圧はない。
そして溜めていた力で素早く連続で爆散。
飛ばされる高山。
「ヤバイ、場外に出る!!シールド!」
高山は自身が飛ばされた方向に数個のシールド魔法を発動して、反動で抑えようとした。
なんとか耐えていた。
しかし前方が無防備。しかも魔法の発動にもう一度溜めないといけない状況であった。
その隙を見逃さず、彼女に放った爆裂魔法が直撃。
「あぁぁ!!」
彼女は倒れた。
よし、終わった………
「1……2……____」
「ま、まだ……!」
タイムアップ前にギリギリ立ち上がった。
でも正直ここから負けるビジョンが浮かばなかった。だからオレは、まだ諦めていない彼女に尋ねた。
「高山、もういいんじゃないか…… そろそろギブアップ宣言しても____」
頭をポリポリとかいていたその時、
「瞬速!!」
一瞬速くなる瞬速魔法。
「何!?」
しまった!身体を掴まれた。
……完全に油断をしていた。
オレを場外に出そうとしている……!
「クソッ……!シールド____」
「いっけ~~~~!!!雷撃!!!」
全身で雷撃魔法を受けてしまった。身体が痺れ、シールド魔法が出せなかった。
「えっ!?ちょっと待って!!」
はね飛ばした勢いでオレを場外に出そう、という高山の策は何となく分かっていた。
だから離れないよう、痺れながらも身体を掴み返してやった。
「ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!雷撃!雷撃!雷撃!雷撃!」
彼女は余力を全て使う程に、雷撃を放った。しかし2人共、空中のまま、もう完全に場外にいた。
あとはどっちが先に地面に着くか……!!
「終了!!そこまで!!」
一戦が終わった。
「勝者…………
…………高山玲奈!」
「や、やった……!」
オレは、負けたのか……
最後、高山の雷撃魔法をまともに受けすぎた。あれが勝敗を分ける決定的な場面だった。
握手をして、このフィールドを去った。
「お疲れ様~~~!」
「二人共、いい勝負だったぜ!」
クラスメイトが駆け寄ってきた。
「玲奈ちゃんいろんな魔法使っていてびっくりしたよ!」
そういえば高山、治癒系メインなのに威力のある多種の魔法を使っていたなぁ。
……てか、オレは治癒型の人に負けたのか…
「レオ、お前は負けたけど気持ちは切り替えていけよ!」
「ああ、ありがとな」
「おっ!辻本のやつ、次試合だってよ。皆行こうぜ!」
「俺たちは自分の試合があるから、お前らはしっかり休んでおけよ。じゃあな!後で見に来いよ!」
そう言って去っていった。
「ねえレオくん」
「ん?おう高山か。お疲れ様。いい試合だったよ」
「…………どうして手を抜いたの?」
「え?」
「勝手な思い込みかもしれないけどね、そう思ったの」
「どうして……?」
「レオくん、私に爆裂魔法を直接当てたとき凄く心配してそうな顔してた。まるで、やらなかった方が良かったかのように。だから傷つかないためにも、ギブアップを勧めてきたのだと思った」
「いやそれは…この先何回も戦うことになるから、オレも高山も無駄な戦闘は避けるべきだと思って……」
「確かにそうかもしれない。でもそれと心配することとは何の関係もない。
それともう1つある。私、不意打ちでレオくんを掴んだとき、あれ上手くいくと思ってなかったの。だからその後緊張して雷撃魔法出すの遅れたの。けれどレオくんはその間私に何もしなかった。」
「それは……」
「どうして?私が女の子だから?女の子だから舐めていたの?女の子だから優しくしたの?」
「えっ、えーと……」
「ごめん……言い過ぎた。……やっぱりいいよ。あまり追求しない。
でも本当にそうなら、ちょっと悲しいな……
まあいいや、とにかくお疲れ様。それじゃあね。」
………………
何も言えなかった……。なぜなら、全くその通りだからだ。
別に舐めていたわけじゃない。ただ、女の子というだけの理由で強く当たることができなかった。それで全力が出せなかった。
優しくしたつもりが逆に彼女を怒らせてしまった。
オレは本当にバカ野郎だ。
そんなのいらないって、遥か前から決心していたのに。
近田涼太 555/648位
浅井美咲 390/648位