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能力を与える協会

その後、バニラが動物園の外の茂みから音沙汰と初日を発見し、クーシーがすぐに傷跡を舐めて手当てした。

幸い、大事には至らなかったがこちらよりも怪我の具合が酷く、学園都市の病院に1日入院することになった。


「…お前ら、あんな化け物じみた能力者と戦ったのか?」


「というか入学早々何やってんだ俺ら…」


「…悪いな、巻き込んでしまって。何であそこに居たのかは知らんが。」


「ストーカーしてた。」


白状しやがった。


「でも、途中でデートじゃないことに気づいて、二人の近くにサイノウ派の色の反応が出てな…」


「あぁ?何を言ってる。落ち着いて話せ…。」


「俺の能力、機械操作でドリョク派とサイノウ派を見分けるレーダーを作ったんだ。それに反応したってだけだよ。」


「…あいつらの能力、禁忌の能力って言ったな。ユリナ、何か知ってることがあったら教えてくれ。」


「長くなるけど良い?それに、この二人も巻き込んじゃう。」


「何を今更!俺だって奴らに一矢報いなきゃ気がすまねぇよ。」



少し間をおいて、ユリナは口を開いた。



「わかった。…サイノウ派では、生まれながらにして能力を持って誕生する。でも中には能力が使えない普通の人間として生まれてくる子も居るの。それが、以前の私。」


…やっぱりそうだったか。

口には出さずに、自分の中だけで納得する八神。


「その能力を持たずして生まれてきた子は、家族諸とも虐げられて追放される。それが普通だった。」


「…やっぱりサイノウ派ってのは悪魔だな…」


「いや、音沙汰…それは違う。

 国にはそれぞれ法律というものがある。サイノウ派だってそれに則って生活しているだけだよ。サイノウ派にはサイノウ派の決まりがある。自分たちだけを基準に物事を考えれば視野が狭くなる一方だ。」


初日が言う。いままではこんな真面目な話したことは無かったが…なかなかカッコいいじゃないか。


「…そのとおりだな。悪かった。進めてくれ。」


「…ありがと初日君。でね、私の両親は医者だった。お父さんが私を取り上げたの。おなかの中にいる時点で既に無能力者であることは分かっていた。でも、両親が医者であることを利用して私が無能力者であることを5歳になるまで隠していた。そんなある日、『能力を与える教会』とやらが訪ねてきて、今まで無能力者であった私のことがばれてしまった。」


能力を与える教会…


「お父さんやお母さんは、能力を与える教会とやらに頼み込んで私に能力を与えるように懇願した。でも協会は今まで無能力者を秘匿していた罪だといって両親を…」


言葉を詰まらせるユリナ。

思い出したのだろう。これ以上は言わせなくても良い…。


「いい、言わなくて。」


「…ごめんね。そこで両親を失った私は殺される予定だった。でも、協会は私に『能力を与える事にした』。」


「何…?」


「あ、いや違うの。そういう方針になったんだけれど、結果としては『能力は与えられなかった』。既に、能力は蕾の状態で待機していたから。人間は二つの能力を持つことは不可能だからね。」


「…それで、逆上した教会に命を…?」


「…うん。『神からの御加護を受けられない悪魔め!』って言われたのを覚えてるよ。

 その能力を与える教会は、無能力者に『無理やり』能力を与えることをしていた。そして、無理やり能力を与えられた者が持つ能力は全て、『禁忌の能力』になる。」


「禁忌の能力…俺らが習った時は、『征服』『強奪』『強制』と名の付く能力の事だって教えられたけど…」


「えぇ、合っているわ。それが3大禁忌の能力。今回襲ってきたあの二人…女のほう、ハミングって言ってたわね。あの女が使う能力は『動作征服(スポートハイジャック)』。行使されたから分かるけど、精神に干渉してきて神経を乗っ取られて能力行使者と同じ動きをするようになる。とても恐ろしい能力よ。」


そこで音沙汰が疑問を投げかける。


「そんなに強いのか?自分と同じ動作ってことは、最悪でも道づれにしか出来ないってことだろう?」


「いいや違う。この能力の恐ろしいところは、『他の能力と組み合わさる』と途端に化けるってことだ。

 あいつらの仲間には『強制回復(ヒールハイジャック)』という能力を持った奴がいることを仄めかしていた。今回はいなかったせいでナイフをユリナに手渡して自傷させる事で攻撃していたが、仮にどんな傷でも回復できる能力者がいたとすれば、この能力者が崖や炎の中に身投げをしたら…どうなるかはわかるよな?」


「ひっ…」


それ以上、音沙汰は疑問を投げかけなくなった。


「どうにか、完全に体を乗っ取られることは無かったけど、それはあの女が油断したから。次は分からない。

 さらに、あの大男…アルバトロスって言ってたわね。あれが持っている能力はおそらく、『空間征服(アゾラハイジャック)』。」


「人でも、物でも自由自在に瞬間移動させていたな…。」


「えぇ…『禁忌の能力』者は普通の能力者とは比べ物にならないくらい強い能力を持つ。

 その代わり、デメリットが2つある。1つは『能力者』である判定はされないこと。能力は与えられても生まれを能力者であるという判定は書き換えられないのだと思う。そして、もう1つは…『寿命を削る』こと。」


「…強力な能力を扱うにはそれなりのデメリットが必要ってわけか。」


『そういうことだったのですね…』



ケルピー…もとい、ロミーが喋った。


「うわぁ!?いつの間に!?え、でもどこから…?」


音沙汰が驚くのも無理は無い。ここは病室。ケルピーは姿を現してはいない。


『私は動物園生活に飽きましたので、八神さんについていくことにしました。』


「急だなオイ」


『彼なら、動物について詳しいですし。私もこの状態ならご飯を頂かなくても大丈夫です。』


スーっと小さな半透明のケルピーが八神のかばんから出てきた。


「…動物なのか精霊なのか…。」


『水の精霊でもあり、動物としてのケルピーでもある。動物園から勝手に居なくなるのは問題ですし、思念体だけ八神さんに憑いていくことにしました。』


しゃらら、と流れるように話す。

ついていく、という漢字が今おかしいような気もしたが…?


『これで、いつでも見守ることが出来ますよ。守護霊のような感じです。』


「…まぁ、頼りがいがあるけどな…代わりに魂を頂くとか言わないでくれよな…?」


『たまーに、動物園の私に会いに来てくだされば結構ですよ。お土産つきで。』


「お土産…?にんじんとか?」


『私、海藻が好物なのです。』



全員が、体中に生えている海藻のような毛にツッコミをいれたかったが、堪える事にしたのだった…。





病室で4人はユリナが襲われたときには協力すると同盟を組み、その場を後にした。


「入学早々ごめんね。私のせいで…。関わらなきゃ良かったかな…」


「何を言っているんだ。一度でもユリナのせいで、なんて言った事あるか?」


「…ありがと。」



帰り道は、それ以降彼女は口を開かなかった。


…帰宅後すぐに開いたが。



「ヴァーニラちゃぁーん!!ねぇ!もふもふしていい!?」


「もうしているだろうに…というか自室に帰れよ…」



バニラは迷惑そうな顔をしながらもちょっとだけ嬉しそうだ。

そして、クー・シーも一緒にもふもふされる。

八神にしか懐いていなかったが、あの怪我を治した際にでも心を開いたのだろうか。


「そういえば、この子名前は?」


「…ん?あぁ…野生に返す予定だったから、情が移らないように種族名で呼んでたんだ…。」


クーシーはドラゴンまでは行かなくとも希少な生物だ。こいつの親は密猟者に殺されてしまったから代わりに親をやっている。

大人になったら野生へ戻すと決めていたが…うん、まぁいいだろう。


「ユリナ、こいつと契約してやってくれないか?」


「え!?わたしが!?」


突拍子も無い提案に驚く。


「あぁ。遣い魔として契約すれば、形だけの絆がとりあえず生まれる。でもお前らはもう既に形ではない絆で結ばれてるだろうさ。」


「ほんとかなぁ…」


ユリナの腕はクーシーにガジガジされていた。


「…」


ちょっと言葉を失う。(笑)


「でも、それもいいね。よし、決めた!今日から貴方はクーちゃん!」


「わぉ?」


「クーシーだからって安直だぞ…」


「違うよ、クドリャフカ。世界で始めて宇宙に行った犬の名前。その最期は聞きたくも無いほど残酷なものだったって話もあるけど、君は私が…」


クドリャフカ、と名づけられたクー・シーはユリナに抱きかかえられた。


「守るから!」


「わぅ! がぶー」


「痛い!!」


早速、契約した飼い犬に手を噛まれるのだった。


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