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スキルマリオネット

能力者にしか見えないはずのケルピーを、相手は視認できていない…?



「本当か?」


「えぇ…能力者じゃない人にはケルピーは見えないって言ってたわよね?それが本当なら、あの二人にはこんな巨大なドギツイ色の馬が見えている上で無視していることになる。見えていたらおかしいでしょ?」


「確かに…」


女と大男は、なぜ武器が弾かれたのかが分かっていない様子だった。


そこで、頭に直接響いてくるような不思議な声が語りかけてきた。


『人に優しき者、動物に優しき者…聞こえていますか?』


「…っ!?」


『その様子だと聞こえていますね。私は貴方たちの目の前に居る、ケルピーと呼ばれている生き物です。』


「しゃ、しゃべ…」


『驚かれるのですか、ドラゴンと契約しているというのに…。あぁ、彼はまだ幼くてテレパスは使えないのですね。』


「どうして…」


『そこにいるクー・シーが私の生活圏に穴を開けましてね。入ってきたのですが、何やら争いごとが起きていたので。』


「お前…」


助けを求めていたのは、クー・シーだった。

撫でて、褒めて!とでも言いたげな顔をして二本ある尻尾をぶんぶんと振っていた。

本当に賢いな…。


『ところで目の前の輩は私が見えていないようですが。能力者ではなかったのでしょうか?』


ケルピーの目つきが変わる。

完全に敵対している目だ。


「あぁ、だと思ったんだが、貴方のお姿が見えていないようなんだ。つまり、本来の能力者ではない可能性がある。」


『…私がまだサイノウ派の領域の湖に住んでいた頃。そのような話を聞いたことがあります。『能力を与えられた存在(スキルマリオネット)』と。』


「スキル…マリオネット…」


『詳しくは存じ上げませんが、その者たちが何者かによって、能力を無理やり与えられている可能性がある。元は無能力者なのでしょう。』


「―――ッ」



無能力者。

ドリョク派では全ての人間が高校へ進学すると同時に能力も自動的に開花する。

しかし、サイノウ派では生まれた時に能力の判定を行い、何も能力が発現していない者は無能力者とされ、蔑まされて虐められる。サイノウこそは全て、という教えの元で生まれた哀れな人々は自らの同郷の人でさえも虐げるのだ。


聞く必要も無かった上に、差別的な要素満載のため聞けずに居たがユリナもそういう家庭に生まれ育ったのだろう。

追放、というのはつまり…そういうことだ。


それが、ユリナの場合。単に蕾の段階で生まれてきただけに過ぎなかったらしく、能力が開花して強い能力だと分かった途端にこうしてサイノウ派の追っ手に連れ戻されようとしている。


あくまで、俺の推測に過ぎないが、無能力者という単語に反応した事からきっと合っているはずだ。

もう少し、打ち解けたら聞いてみようと思う。



「…合点がいったよ。あいつらは詰まるところの操り人形ってことか。」



「何をぶつぶつと…また召還獣を出しているのではあるまいな…?」


大男は周辺に気を配る。

俺は、ここで仕掛けることにした。


「…お前の能力は、誰に貰った?」



その言葉に怯む二人。


――ビンゴ。


「貴様、どこまで知っている?」


「何も知らない。だから聞いている。」


「だったら、教える必要は無い!!」


大男はそう叫ぶと、動物園の看板を地面から引っこ抜き能力で消した。そして一瞬で目の前に現れる。


「気が変わった。死ね。」



そのまま看板が飛んでくれば、間違いなく串刺しになって死ぬ。

しかし、ケルピーが蹄で地面を叩くとそこから大量の水が噴出し、看板を飛ばしてしまった。



「水…?水の能力者がどこかに…」


『はぁー。鈍感ですねぇ。』



ケルピーは馬蹴りの要領で二人を蹴飛ばし、蹄から出る水流でそのままふっ飛ばしてしまった。



つ、強い…


というか、はぁー。って…



「ケルピー、ありがとう…。」


『老いたとはいえ、毎日動物園で暮らすのも退屈でしたからいいのですよ。それと私の名前は『ロミー』と言います。ロミーでも、ロミちゃんでも、お好きに呼んでください。』


「…ロミー、改めてありがとう。」


あえて、ロミちゃんには突っ込まずにいよう。


『私が見えていればこうも容易くは無かったでしょう。貴方たちも努力せねばなりませんよ。いつでも私が駆けつけるわけにも行きませんからね。』


「はい、肝に銘じておきます。」



二人のほうを見ると、既に彼らは居なくなっていた。


――――――――――――――


「…結局あの最弱(ヌル)が何の能力か分からずじまいだったか…貴様が冷静であればまだ何とでもなっていたものを…しかし、あの水の能力…あれほど強い力だと最弱の能力ではないな。」


「面目ありません。」


「しかし、あの女をサイノウ派に戻すことが出来れば、我々の防御力は一層増す。あれほど何でも防ぐ能力者は中々居ない。小娘が生まれた際に、能力を判定した人間を特定せよ。」


「はっ、ですが何ゆえ…?」


「分からぬのか?我々と同じ『無能力者』であったハズのあの小娘が何故突然あのように強い能力を開花したのか。」


「…申し訳ありません。私には…」


「…あの能力は、まだ本質を顕していない。油断するなよ…」

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