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召還は反撃と鉢合わせる

朝飯を済ませ、いつまでももふもふしているユリナとバニラを無理やり引き離し、教科書を買いに学園都市内の大型書店へと足を運んだ。


「もっともふもふしたかった…」


「…過激派の被害に合わなくなったら、ドラゴンを飼うといいさ。ジパング・ホワイトウイングの他にもたくさん種類はあるから。」


「やっぱりもふもふするためにも過激派は全滅させるべきだね。きめた。」


「動機が不純なんだが…」



大型書店につく頃には丁度開店の時間になっており、学生たちで溢れかえっていた。


「おいおい、なんでこんなに…」


「学年ごとに販売時間って違うんじゃなかったのかなあ」



理由は明解だった。

書店の目の前で、昨日八神たちも利用したあのフィールドの中で能力者同士が戦っていた。

模擬戦を行っているのだろうか。


「おぉ、八神も来たのか。ん?なんで山神さんと一緒なんだよテメェ」


「やっほー、音沙汰君、初日君。」


「色々わけあってだな…」


既に書店に着いていた音沙汰と初日に睨まれるが、戦いのほうが気になる。


「あれは誰だ?」


「あぁ…ありゃ局長だ。先輩に突っかかっていってよ…あの通りだ。」



中では局長とその先輩と思しき人が能力を使って戦っていた。

しかし、その先輩は局長の物理攻撃を受けるだけで、局長の召還の能力で一方的に攻撃しているようにしか見えないが…



「あーあ、あの新入生やられるぞ…」


「皆も離れたほうがいい。あいつの能力は暴走するとフィールドすらも破壊しかねない…」


「え?でも今競り勝ってるのは局長じゃ…」


「見てれば分かるさ、ほら遠くで見てな。」


先輩と同じ学年であろう学生が、近くに居る学生に注意を促し、避難を薦める。



「…そろそろか」


「なに?」



局長が問うた瞬間、すさまじい光がフィールドの中を覆いつくし、内部で大爆発が起きた。


「あー…やっちゃった。『反撃(カウンター)』の能力。今のうちに離れたほうがいいぞお前ら。そのうちフィールドの破片が飛んでくる。」


「カウンター…?」


別の先輩の警告どおり、フィールドが内部から破壊されて粉々になった。

しかし、安全性を考慮して作られているのか粉状になって散らばるのみ。


「…っってぇ…なんて威力だ…とっさに召還で鉄板を呼び寄せなかったら死んでたんじゃねぇのか…」


局長が手にした鉄板はぐにゃりと曲がっていて、爆発の物凄さが感じられる。


「こんな威力になったのも、お前の能力が強いからだ。久方ぶりにフィールドを破壊してしまったぞ…どうしてくれるんだ。」


中から局長と先輩が出てくる。なんと女性だった。


「どうするも何も、貴方が勘違いしているのが悪いんだって言ってるじゃないすか!」


「勘違い?」


どうやら、知り合いのようだ。

局長はこちらに気づき、指を指して言った。


「…あそこに居る女生徒!あいつが山神だ。サイノウ派生まれだが今は違う、血筋だけだって…報告しただろうが!」


「何、本当か」


「はぁー…」


局長は頭に手を当て、分かりやすく呆れ果てる。


「局長?」


「あぁ…八神か、騒ぎになってたか。」


「いや、まぁそれはいいんだが、彼女は?」


「あぁ、あいつは治安維持課の先輩『籾岡 蓮華』。つっても、変わってんのか分からんが、俺をサイノウ派と勘違いして襲ってきたんだ。迷惑な話だぜ…。」


「…この学園の治安はどうなってやがる…。」


「それを維持するのが俺ら治安維持管理部の人間なんだがな。サイノウ派を叩きのめすという目標しかない過激派が多いみたいだ。」


「局長君、彼女の能力は反撃(カウンター)だって…」


「『反撃(カウンター)』だぁ?そうか、それで最初以外は挑発しかしてこなかったわけか…」


反撃。

相手の攻撃を小さな盾に吸収し、そのパワーを増幅させて一気に放出する能力。

しかし、自らは一切攻撃を加えることができないため、吸収用の防壁が壊れたり、致死性の攻撃を受けた場合は完全に無力らしい。

一応、あまり見ない珍しい能力だそうだ。


局長から能力の説明を受ける。


「知ってたら短気な俺だってむやみに攻撃はしなかったのに。」


短気なのは自覚あるんだ。


と、思ったことを口に出すとまたややこしい事になりそうなので噤んでおく。

一方で先輩のほうも周りから説教を受けていた。

…聞いてないようだが。


「ホントにアンタは!」


「知らぬ。サイノウ派があの管理人以外にも増えたのだったら制裁を加えるのが私の仕事だ。」


「管理人さんにボコボコにされたくせに。」


「あ、あれはだな――ッ」


今不穏な言葉が聞こえたのは気のせいか?

サイノウ派の管理人って天野さんしかいないよな…

反撃の能力を使う人をボコボコってどうやって…


と、ここで警官の服を着た人たちが駆け寄ってくる。


「フィールドを破壊した能力者はどこだ!!」


「や、やべぇ…」


局長は召還で小型のスクーターのようなものを呼び出す。

車輪は無く、空中を『反発』の能力で浮遊する乗り物だ。


「八神、俺は濡れ衣を着せられたくないから逃げる。金は渡すから教科書を俺の分も頼む。買ったらお前の部屋にでも置いておいてくれ。この教科書の通りでいいからな。」


教科書の種類が書いてあるメモとお金が渡される。


「俺の部屋に置いてどうするんだよ?」


「そのメモを買った教科書にくくりつけておいてくれ。召還の能力で呼び寄せるから。そのメモが目印になって呼び寄せる対象になる。あー、釣りも一緒に置いてくれ。小額ならいらん。手数料だ。」



便利だな…つか、こいつ警察官より宅配業者やったほうが適材適所なんじゃないだろうか。

現に警察から逃げようとしてるし。



「じゃあな、頼んだぞ」


そう言って半ば強引にお使いを頼まれる八神。

局長は物凄いスピードで空の彼方へと飛んでいった。


「…どちらにせよ速度違反で捕まりそうね。」


「あー…確かに。」

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