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サイノウ

人にはそれぞれ、”サイノウ”と呼ばれるものがある。

自分には分からなかったり気付かないだけで、何か人よりも優れているものがある。


ただし、同じサイノウを持っている人同士で争えば当たり前であるが、優劣がつく。

剣のサイノウを持つ者同士が闘えば、必ずどちらかが勝ちどちらかが負ける。しかし、どちらがより優れているかなど勝敗で着くものだろうか。


"ドリョク"次第でその本人の力量が変わることは無いだろうか。


"サイノウ"と"ドリョク"

相反するものであるとほとんどの人は思っているようだが、

この二つを兼ね備えた者が真に優れている人間となることはまだ一部の人しか知らない。


サイノウは開花する物であり、蕾の時からドリョクすることでその花はようやく開く。

…一部"テンサイ"と呼ばれる例外な人もいるようだが。



この世界には様々な人間が住んでいるが、大きく二分化されて

「サイノウ派」と「ドリョク派」

に分かれて生活をしている。


日本だってアメリカだって南極の人々だってそれは同じことだ。

世界的に広まった宗教のようなものであると考えればいい。


サイノウ派の人間は、生まれてすぐに自分の"能力"が分かるようになっている。生まれた病院で教えてもらえるのだ。

そのため、その能力を幼い時から鍛えることが出来、エリートコースまっしぐらというわけだ。


一方でドリョク派の人たちは生まれてからはごく一般で普通の現代人の生活を「"強いられる"」

高校へ進学するまでは自らのサイノウを開花させることはできないように法律で阻止されているのだ。

しかし、それが彼らの生き方であり誰も不満に思うことなどもない。

歴史上の出来事を除いて。



そんな世界のとあるドリョク派の高校生たちが集まる学園都市「夕陽丘」

夕陽丘第2高等学校 ドリョク派 能力開発学部の生徒たちは今日も日々努力に勤しむ…ハズだった。




「楽して能力を手に入れるサイノウがほしい」


「オイ誰かこいつをつまみ出せ」


「新学期早々校則を破る気なのだろうかコイツ」



始業式の日、高校1年生となった彼らは今日始めて自分の"能力"を知ることとなる。

能力は、自分の才能と紐付けられていて才能が開花すれば能力自体も自動的に開放される仕組みになっている。


一種の超能力のようなものであり、現代に至るまでの歴史の中で「魔法使い」と呼ばれていた人たちの子孫が今この世を生きている。


入学の準備手続きを父兄父母と終え、入学式が始まるまでの間彼らは冗談を言い合って待機室の教室でのんびりすごしていた。

これからは寮生活であり、クラスが決められるまでの僅かな時間だ。


彼らは小学生時代からの幼馴染…もとい腐れ縁である、音沙汰(おとさた) (まこと)初日(はつひ) (ゆたか)。そして八神(やがみ) (れい)



「なぁ八神、俺らのサイノウってなんだろうな。」


「便利な世の中だよな。自分のサイノウが何なのか学校が判断してくれて、将来進むべき道がわかるなんて。」


「サイノウ派の人たちからすれば眉唾物だろうけどな。」


「どうせ奴らは俺らを見下しているんだ。これくらい当然さ。」




昔、魔法使いたちは魔法を使えない人々たちから迫害を受けていた。

奇妙奇天烈な力を持つ人たちを化け物と呼び、魔女狩りを行ってきた。


しかし、ある魔法使いの集団が仲間たちが殺されていくのを黙ってみているわけには行かないと、逆襲を開始した。


迫害を受ける前は、便利な世の中にしようと能力のない人たちの手助けをしていた魔法使いたち。


個々による様々な魔法により世界は次々に焼き尽くされ、破壊され、命を落とした。


勿論、魔法を使えない人々はそのまま成す術もなく平伏した。

それでも許さなかった魔法使いたちは魔法を使えない人々を絶滅させた。

世界は魔法使いのものとなり、ほぼ全ての人間が魔法を使って自由に暮らしてきた。



そんな中でひっそりと生きてきた魔法を使えない人(ヌル)と、ある魔法使いが恋に落ち、やがて子供が生まれた。


その子供は、生まれつき魔法が使えず、ドリョクをすることでサイノウが開花し、やがて魔法使いになった。


それを見た子の親のうち、

母親は「ドリョクをすればなんでも成し遂げることが出来る。」というドリョク派を立ち上げ、

父親は「サイノウが人生の全て。サイノウを持たないものは劣る。」というサイノウ派を率いる。


両親は子にどちらへつくのかと問い、子は「ドリョク派」を選んだ。


魔法使いの父親はそれに絶望し、家族の元を去っていった。

サイノウ派の人間はドリョク派の人々を見下し、やがて魔法を使えない人のことは忘れてしまい、魔法使い同士での争いとなった。


その子と母親から紡いでいった血統から生まれた子孫は全て、ドリョク派の人間たちだ。

つまり、ドリョク派には純粋な魔法使いとヌルの血が混ざった人が存在する。


時は過ぎ、魔法という言葉も淘汰され、一辺倒に「能力」と表記されるようになった。

差別用語になることを避けるため、能力が開花していない人を無能とは表記してはならない法律が作られるなど、世界は能力を中心に、しかしドリョク派とサイノウ派はお互いに相容れない存在のまま人々は住処を分かれて暮らしていった。



サイノウ派は、生まれつき能力を行使できるが各個人によって差が開きすぎる。生まれついての能力は変えることは出来ないからだ。

そのため争いごとが絶えない。能力の低いものは淘汰される。

強いものだけが、社会に出る。これがサイノウ派の生き様なのだ。



ドリョク派は、高校生まで能力の行使を物理的に禁じられる。

またサイノウの開花も全ての人間で高校生まで封じられ、全員が全員身体的特徴以外の成長スピードを同一のものされる。

勿論、個人によってわずかに学力の差はあるなどはするが、概ね同じだ。

体育大会などは泥仕合になるだけ。全員成績はほぼ同じ。

全員が全員同じ能力のため、争いは喧嘩くらいなものであり平和な世の中。


…だった。

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