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05 ガブリン争奪戦

 農業区の村に辿りついてクエスト紙を村人に見せた。


「僕はギルドの冒険者ケイトです。ガブリン被害のクエストを受注しましてこちらに来ました!」


 村が待ち焦がれていた駆除人員だ。

 さぞかし村人に歓迎されるかと思ったら意外と村人の反応は薄かった。


「ようやっと来たと思ったらガキ1人かえ」

「そんであれば大して数も減らせねーべさ」

「ほれ、そこにも一匹逃したのいるけえまずは頼むわ」


 小屋の裏手を覗くとそこにはすでに傷だらけで逃げようとしていた小人のようなモンスターがいた。

 俺は頭に疑問を抱えながらもまずは一匹ということでそいつに向かって走った。


 すでに満身創痍であったため蹴り一発で討伐できてしまった。


 村人の所に戻りながら質問を投げかける。

「あの、どういう事になっているのか説明してもらえますか?」

「あ?何がだ?」


「今のはすでに傷ついてる個体のようでしたが一体誰があれを?」

「んなの俺たちに決まってるべ。あれくらいなら楽勝だわ」


 農民つえー。

 いや、単体だったらガブリンは大した相手ではないって受付嬢もいってたな。


「まだどこかに大量のガブリンがいるということですか?」


「そりゃいーっぱいおったで。」


 ん?過去形?


「昨日からよ、城の方から騎士さんがやって来てくれたんだ。衛兵もギルドもさっぱり動いてくれないのを見かねてくれたってワケよ」

「けど騎士さんもおめえと同じ一人で来たんだけえ。なーんでかおめえら一人づつしかこねーんだがなあ」


 これはもしかしたら

「その人は・・・・・今はどこに?」

「森の方でまだ逃がしたやつ追いかけてるで」


 よし!

「わかりました。僕も討伐に向かいます!」


 俺は森の方角へ走り出した。

 まだ間に合う。

 おそらくその騎士はすでに多くのガブリンを昨日から倒し続けて、今では掃討戦の段階に入っているのだろう。


「経験値ボーナスでレベルがひとつ上がる10体は残しておいてくれよ」

 そう願いながら森の中に入っていった。


 ガブリンの後ろ姿が見える。

 1体ではない。5匹はいるな。


 ケガを負っている様子はないのでこれまでのように蹴り一発で倒せないかもしれない。

 俺は地面から太い木の棒を拾いあげる。


 なるべく音を立てずに背後に忍びより、躊躇なく脳天へ棒を叩き込んだ。

 ガブリンは頭を凹ませてその場に倒れ込んだ。

 これで二体目。


 他のガブリンも俺に気付いた。逃げ出す者二匹、こちらに向かってくる者二匹だ。

 右から迫ってきた個体を木の棒で叩き伏せる。

 左からの個体は態勢を一度整えるために左足を押し出して蹴った。

 すると思いのほか吹き飛んでくれてそのまま動かなくなった。


「あれ?ケガしてないヤツでも蹴り一発で倒せるな」


 思った以上に弱い種類のモンスターだったのか。


 ともあれこれで4体。

 どうにかあと6体見つけたい。


 さらに奥へ進む。

 すると運が良い事にちょうど四方から一ケ所に集まる、ガブリンの合流地点と遭遇した。

 数はおよそ20体。

 よし、これなら十分だな。

 するともう一方向からの合流集団が俺の右後ろから迫ってきていた。


「こいつらからやるか」


 俺は右後ろに走り出して1個集団の討伐を始める。

 木の棒で二匹。蹴りで二匹。最後の一匹は左手の平の突っ張りで腹部分目掛けて押し込んでみた。

 蹴りと同じように吹き飛んで絶命をしている。

 これはガブリンの弱さも勿論あるだろうが、俺のレベル依存による力が働いているのかもしれないな。


 さてあと1匹で目標達成だ。

 先ほどの合流地点へ割って入ろうと振り返ってみると、その方向に眩い光が放たれていた。


『シャイニングフレアー!!』


 それはこの世界で初めて見る魔法であった。

 すごい、森の中とはいえ昼間にこれだけまぶしい光を放つなんてとてつもなくすごいエネルギーだ。


「え・・・・って事は?」

 俺は嫌な予感を抱きながら元いた場所まで走っていった。


 そこには鎧に身をまとった騎士と、足元には焦げついた20体のガブリンが横たわっていた。


「くそー!全滅させちゃったのかよオマエー!!」

「な・・・!何者だ!!」


 悔しさで思わず叫んでしまった。

 いかん、フォローせねば。


「あ、驚かせてすみません、僕はギルドからクエストを受注して参上しましたケイトと申します」


 騎士は剣を構えていたがその力を少し緩めて答えた。

「私はロエール城の聖騎士団の一人、ウェイリー・シリアだ。おまえもガブリンの討伐に来たのだな?見ての通りここがコイツラの最終集合地点だったので待ち伏せて一網打尽にした」


 くっ!なんて手際の良さだ。

 これだけの体数をひとりで1~2日で済ませるなんて只者ではない。

 でも・・・・


「僕の分まで取らなくいいじゃないですか。なんで残してくれなかったんですか!」

 せっかくのレベル上げボーナスのチャンスだったのに水の泡だ。


「冒険者ギルドの生業の邪魔をする気はない。クエストの達成証明に左耳が必要なのだろう。ここのガブリンから全てはぎ取っていくと良い。私の目的はこの村の安泰だ。それは達成された」


 チッ、聖人君主みたいなよく出来た精神だことで。

 クソー、おまえの化けの皮を剥いでやろうか。


・・・・いやこの場合は、フフフおまえの素肌を露わにしてやろうか。


 仮面で覆われたその顔ではあったが、長い金髪の美しさと聴き惚れてしまいそうな声の持ち主。

 さぞかし極上の女性なのだろう。


「それに甘んじては僕の冒険者道に反してしまいます。シリアさん、僕と『勝負』してくれませんか?」


「ふう、それでおまえの気が収まるのならば受けて立とう。だが手加減はせぬぞ?」

 そういって剣を両手で構えだした。

 素人目にもわかる、隙のない威圧感のあるドンとした構えだ。


「いえ、剣の勝負ではなく運試し勝負でいきましょう」


 戦いの専門家に正面から挑む必要などない。

 必要なのは『勝った』という事実だけなのだ。


「ここに木の枝が1本あります。ガブリンを叩き伏せられる程の太い棒です」

「おまえの武器だな」


「これを投げつけます。あなたはその剣でこの木を切り割る事ができますか?」

「造作もない。少し太い程度の枝など何の抵抗もなく切り裂いてくれよう」


「ではこの枝を切る事が出来ればあなたの勝ち。切る事が出来なければあなたの負けです。いいですね」

「出された勝負だ、受けよう」


「では『勝負』です!」


 俺は木の棒を投げつけた。


 騎士にではなく騎士の上空、上方向へ。

「な!?」


 木の棒は森の木々を抜けて空へと向かった。

 垂直な放物線を描き、重力によって落ちてきたとき、その降下先には木々の枝が待ち構えている。


 結果、騎士の真上に茂っている木々の枝々にひっかかり剣の間合いに落ちてくる事はなく上空に留まってしまった。

 これでは剣で切り裂く所か届きもしない。



(ククク馬鹿め。剣術脳筋を相手にまともに勝負してやるワケないだろう。さあ負けを認めてその鎧に包まれし美し肢体を我に晒すが良い)


俺は勝負の結論を出す流れに持ち込む。

「おや、思わぬアクシデントですね。これは仕切り直しでしょうか?いえ、勝負というのは一回限りとよく言うものでしたでしょうか?」


「策士が。はじめからこれを狙っていたのであろう。何が目的でこんな事をしているか見当がつかぬが、我を舐めてかかるなよ!」


 そう言って騎士は上空の枝を見据えながら下段の構えに移行した。

 ん?おい・・・・まさか


「シャイニングストラッシュ!!」


 剣が光を帯び出し、振り上げた剣の軌跡から斬撃が具現化し上空へと放たれていった。


 この世界は魔法以外にもこういう剣術スキルがあったのか。

 クソ、早まってしまった!


 斬撃は枝々を切り裂き、投げ捨てた木の棒に迫った。だが・・・


「くっ、当て損ねてしまったか!」


 上空の枝に隠れた木の棒には当てる事は出来ず、斬撃は空へと消えていった。

 対上空命中精度が低い技だったのだろう。運はこちらを向いてくれたようだ。


「どうしましょう、これはあなたの負けでしょうかね?」

「もとからどんなペテンが起きようと一撃のうちに勝負を決するつもりでいた。貴様の勝ちで良い」


「僕の・・・・『勝ち』ですね?」

「ああ」


 ポチッ

【勝者特典スキル:衣風憧慟(いふうどうどう)】 効果:条件達成時に離れた場所からでも衣装を遠隔で破ける


 ひゃっほーーーーーー!!!


 ・・・・・。


 あれ?


 何も起きない。なぜだ?


ピコーン

『衣風憧慟は鎧に対して発動したのでキャンセルされました』


 な・・・・鎧ダメなの?


ピコーン

『ダメです。布服だけです』


 くそー


ピコーン

『思い通りにいかなくて残念でしたね』


 はあ。まあいいや。


ポチッ

【勝者特典スキル:衣風憧慟(いふうどうどう)】効果:条件達成時に離れた場所からでも衣装を遠隔で破ける


ビリビリ

「え?うわわわわわわわ!なんだ?なぜだ?勝手に下着が」


鎧の下に着ているであろうパンツを指定して破ってやった。


ピコーン

『・・・・。」


 やぶった生地は隠れて見えないし、恥ずかしがっている顔も鎧仮面で見れない。

 やつあたりで破ってやっただけだ。ざまあみろ。はあ・・・・。


 困惑している女騎士を横目にガブリンの左耳をちぎりとったあとは村にもよらずトボトボと帰り路についた。



――――――――――――――――――――


「あれ?」

 村の畑を通り過ぎようとしたら、ガブリンが一匹で畑の農作物を荒らしていた。


「はぐれ・・・ガブリン!?」


 唐突にみつけた獲物。

 俺は思考を回す事なく条件反射のみでガブリンに切迫した。

 ガブリンはこちらに気づき驚愕している。

 俺はサッカーボールシュートのように蹴り上げてそいつを吹き飛ばした。


『特別経験値ボーナス達成しました。経験値補正が入ります。レベルが上がりました』


 なんてラッキーだ!これも日ごろの良い行いの賜物だな!


Lv30→31

 HP300→310

 MP90→100

 攻撃力30→31

 武器補正0

 魔法力3


勝者特権

 衣風憧慟 9(MP消費50)



「これで衣風憧慟スキルが二回使えるようになったぞ!」


 ぐふふふふ、待っててねギルドの受付嬢ちゃん。

 みんなのアイドルちゃんの下着は何色かなー?






レベリング回でした。

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