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この太陽系で私達は  作者: えるふ
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無重力に向けてお買い物

「今日の船舶は基本的に木星で作られているため規格が統一されている。だが輸送船や個人用船舶はケレスで作られているため注意が必要で……」

教員が電子黒板を操作しながら授業が進む。今日の授業は船舶について。ほぼすべての船舶が木星製である。そう、軍艦ですら。海王星、火星の独立戦争において軍艦を双方に提供していたのが木星である。ケレスはもともと輸送船を作っており、そのノウハウを活かして個人用の小型船舶を製造している。そのため、軍艦の木星、輸送のケレス、と呼ばれることもある。

「特にディストリビュータは構造が全く異なり、両者の互換性は無い。そのため救援に向かう際はどこのメーカーか聞く必要がある。もっとも、軍艦は軍属の方がやってしまうがね」

教員はその時に時計を見てため息を一つ。

「そうそう、言い忘れたが、明日はスイングバイに備えて無重力となるため注意しなさい」

この船は大きいためスイングバイを利用して加速をする。そのため目的地とは逆方向である金星へ向かっているのだが、そのスイングバイの最中は惑星の重力による船舶への影響を考え人工重力発生装置を止める。

「あ、あの、スカートの下に何か穿いていいですか?」

女子生徒が手を上げ意見する。無重力授業の時に懲りた生徒だろう。

「許可する。ただし、制服は着てくるように」

制服の胸に校章が縫い付けられているが、この校章にICが入っており、教室に入れば自動で出席確認がされる。そのため制服を着ることは必須となっている。

「判りました」

女子生徒は安心した様子だ。ティターニアも明日はどうしようか悩んでいた。あの生徒もわざわざ聞いたと言うことはスカートから裾が出てしまう物しか持っていないのだろう。

「今日の授業はここまで。細かいところは各自で勉強する事」

「あのティターニア」

サイスがティターニアの隣に座りながら声をかけてきた。

「どうかした?」

ティターニアは端末を見ながら返事をする。

「何か、その、持ってますの?」

「何か、とは?」

ティターニアは端末の画面を消しながら聞く。

「履物を、ですわ」

「どうしようかなぁ、と、思ってる所よ。いっそ普段どおりでいいかなぁ、とか」

ティターニアが言うとサイスは驚いて

「それはいけませんわ。下着を晒すなんて」

「いっそ見られてもいいパンツをパンツの上から履こうかしら」

「それ、結局見られてる事に変わりませんわよね?」

「見られる側が見られて平気、見る側は見れて嬉しい。その関係はウィンウィンよ」

ティターニアの台詞にサイスはため息を一つ。

「天王星人は変わってますわね」

「サイスはどうするの?」

ティターニアは気になっていたことを聞く

「私はホットパンツでも履こうかと思ってますわ」

サイスが言うとティターニアは少し考え

「あー、そうゆうの持ってないのよね。だからパンツ2枚穿こうかとか言ってるわけで」

「買いに行きません?」

サイスの申し出にティターニアは少し考え

「そうね、良いわよ」

了承した。サイスは少しだけ嬉しそうに

「じゃあ早速、街へ行きますわよ」

サイスはティターニアを引っ張って教室を後にした。




「これなんて良くない?」

「いえいえ、こちらの方が」

二人はお店でオーバーパンツを見て回っていた。そしてフと、

「とゆうか、スパッツで良くない?」

ティターニアが言う。

「あぁ、それも手ですわね」

サイスも納得し、売り場を移動する。

「スパッツなら普段使いもできて、スカートから出ててもおかしくないし、良いのではありません?」

サイスが言うと、少し首をひねり、

「う~ん、これを普段履き……う~ん」

「フーガ以外に見せたくないんですわよね?」

サイスが言うとティターニアは顔を真っ赤にしながら

「なんでフーガ君が出てくるのよ……」

「なんでかしらね?」

サイスは少し意地悪そうな顔をしていた。

「もう……」

「ドキッとしますの。下着が見えると。下着を見て興奮するのは何も男性だけとは限らないのが今の時代ですわ。ですので無重力期間だけでも、何か穿いて欲しいですわ」

サイスはティターニアのスカートの裾に触れながら言う。

「仕方ないわね。スパッツにしとくわ」

ティターニアはスパッツを手にして試着室に入る。こういう物は伸びるので大丈夫だと思うが、一応念の為。

「変じゃないかな」

ティターニアは穿き終えてカーテンを開ける。

「大丈夫ですわ。あとは裾から出てるのを気にするかどうか、ですわね」

「気にするけど、穿いてないほうが気になるんでしょ?諦めるわ」

ティターニアはため息を吐きながら答え、試着室のカーテンを閉め、スパッツを脱ぐ。

「それでいいと思いますわ」

サイスは試着室のカーテンから首を突っ込みながら言う。

「なんでよ」

「良いこと?下着が見えそうってだけでムラムラしますの。それが無くなるだけでかなりマシになりますわ」

サイスは少し興奮気味に言う。

「本当に?」

「本当ですわ」

サイスの目が輝いている気がするが、ティターニアは気のせいということにした。

「じゃあとりあえず、これでいいかな」

ティターニアはカーテンを開け、サイスの脇を通りながら言う。

「ティターニアは誘ってるようにしか見えないから困りますわ」

「そんなつもりは無いんだけどね」

ティターニアは先程のスパッツをかごに入れながら言う。

「その、自覚の無さも困り物ですわね」

「こそっと見る分には私は何も言わないわ。でも、面と向かって見えてるって言われると困っちゃう」

ティターニアの言葉にサイスは

「まったく、困った性格ですわね」

と、小さく漏らした。

「ついでだし、何か他にも買ってく?」

ティターニアが言うと

「そうですわね、私は下着が欲しいですわ。1つダメにしたのを思い出したわ」

サイスは売り場を移動するのでティターニアはついていく。

「せっかくだし、こうゆうのどう?」

ティターニアは黒い下着を棚から取り出し聞く。

「い、いえ…私に黒は似合わないですわよ」

サイスはため息混じりに言いながら棚を眺める。

「じゃあ桜色なんてどう」

ティターニアが下着を棚から取り出し手渡す。

「ちょっとその、レースが多すぎる気が……」

「えー、これくらいでいいじゃない。可愛いと思うわ」

サイスはティターニアと手に持っている下着を交互に見て

「判りましたわ。それにしますわ」

サイスはティターニアから下着を受け取ると試着室に入る。ティターニアはその間隙なので端末を操作してニュースを見る。特に目立ったニュースはなく、退屈しのぎには使えなさそうであった。

「やはり、過美ではありません?」

試着室から声が聞こえたのでティターニアはカーテンを少しだけ開き覗き込む。

「丁度いいくらいよ」

ティターニアはそう言うとカーテンをしめる。しばらくしてサイスが試着室から出てきてやはり少しだけ納得いかない顔をしていた。

「なんか、お互い様な気がする」

ティターニアが言うとサイスは首を縦に振った。

「それには同意ですわ」

サイスの言葉を聞いてティターニアはため息を吐きながら

「じゃあ今日はそういう事で」

「ええ」


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