女王になると云う事。そして未来を決める一歩
「聞きましたわよ、フーガにフられたんですって?」
サイスがティターニアの隣に腰を下ろす。ここは教室。その言葉を聞いている生徒も多かった。
「ええ。ただ、納得できる理由だから引き止めれなくて」
ティターニアが言うと、サイスは少し考え
「私は立場上、フーガとイチャイチャするわけにはいきませんもの。さっさと爵位を捨てておけば良かったですわ」
サイスが端末で何かを表示しながら言う。その画面を見ると、金星のことが書かれていた。
「あ、あの首相。まだ首相続けてるんだ」
「ええ。まだこの船に乗ってるみたいですし、私としては……正式に謝罪をする場を頂けたら、と思いますわ」
サイスが申し訳無さそうに言う。そうか、あの事件もサイスの耳に入ったのか。
「ねえねえ、二人はさ、行き成り女王様になったんでしょ?どんな感じなの?」
生徒の一人が興味を示していた。ティターニアはしばらく考え
「ん~、私は庶民の出だからなぁ……突然地位と権力を与えられても……て感じかな」
「私はもともと爵位を持っていたので、管轄する人が増えるだけで感覚は変わりませんわ。ただ、どこへ行くにも護衛が付くのは、困りものですけど」
サイスがそれを言うとその生徒は驚いていた。
「え、護衛?今も?」
「すぐに駆けつけられる距離にいるわよ。さすがに学園内にはいないけど」
ティターニアが言うと、本当に違うんだな。と感じていた。
「さすが……でも、天王星はともかく、金星って帝国だったっけ?」
生徒が首を傾げる。
「帝国ですわ。ただ、女王は昔から政治には干渉せず、権威だけ、という立場ですわ」
「そうなんだ。ずっと大統領だと思ってた」
「ただ……爵位持ちがいなかったから選出された、というだけですし、私が適任というわけではありませんの。私は……できるなら早く爵位を捨てるべきだった、と後悔してますわ」
サイスが言うと生徒は首をかしげる。
「なんで?最高権威じゃん」
「過ぎたる力は身を滅ぼすだけですもの。それに、皆が皆、貴族を歓迎しているわけでもありませんし」
サイスが言うと生徒は口ごもってしまった。
「私の方は、もう政治に干渉してるし……覚えることはいっぱいあるかな……」
ティターニアはため息交じりに答えた。
「さて、私はそろそろ帰って支度するかな」
そのあと、こう続けた。生徒たちは首を傾げていた。
「金星とのやり取りでね、また会談しなきゃ駄目になったから、今度は2人で話すのよ」
ティターニアはウラヌスドレス。サイスはスーツ姿で会談を開始した。
「まず、この場を与えてくださった事に感謝を。そして、天王星の皆様には、謝罪を」
と、サイスが静かに話し始める。
「この度は金星のコーレル首相が大変ご迷惑をお掛けしました。本来なら暴行罪の罪に問わねばならぬ事態に、私サイスは深く受け止めております。このような事態になった事に対し、金星としては返す言葉もございません。ですが、今、金星は大変苦しい状況となっております。どうか、支援を再開して頂けないでしょうか。たった一人のために、50万人に苦労を強いるのは、私としても不本意です」
サイスはいつもの話し言葉ではなく、硬い言葉で話した。
「私は貴方と話せる事を幸せだと思います。そして、国民もまた、幸せでしょう。校長先生には支援の再開をお伝えしましょう。私も、支援の中断は不本意ですから。それに、支援する、と言っても支援物資のほとんどは木星の物ですから、大丈夫、だと思います」
ティターニアは、硬い言葉がたどたどしく、慣れてないのがよく分かる話し方だった。
「最後に、この急な会談の場を快く設けてくださった学園都市船の船長様。そして天王星の女王ティターニア様。ならびに関係者各位。皆様には深い感謝を」
こうして二人の会談は短くも確実に終わりを告げた。
だがどうだろう、この会談はマスメディアが放送したのだが、サイスにはマイナスに、ティターニアにはプラスに働いた。




