フーガ君の決意
「フーガ君、私の家で飲まない?」
授業後、ティターニアはフーガに声をかけた。そして彼はそれを快く了承したので今に至る。既に床には数本の一升瓶が転がっている。
「結構飲んだな」
フーガがグラスを傾けながら言う。
「そうね。このペースで4本かぁ」
ティターニアはそう言うといつもどおりのペースでグラスを空ける。そしてフーガは半分ほどになった瓶を手に持ち、ティターニアのグラスに注ぐ。
「ねえフーガ君。こっちに……こない?」
ティターニアに誘われるまま、フーガはティターニアの隣に座ると、ティターニアはおもむろに彼の顔を胸に押し込んだ。
「うわぷ」
「天王星に来るか、自分の道を歩むか、卒業までに決めなきゃいけないフーガ君に……せめてものお詫び。もう少し大きければ…もっと満足できた?」
「いいや、ティターニアのおっぱいってだけで最高さ……これ以上上はないよ」
フーガはそう言ってゆっくりとティターニアを押し倒してゆく。
「待って、待って、待って。溢れちゃう」
ティターニアは酒の入ったグラスを持ったままだったので、少し慌てた。しかし、フーガはそのまま床まで押し倒した。
「もうっ」
ティターニアが言うが、その口調は優しいものだった。フーガは徐々に下へと移動していき、お腹の辺りで一度抱きつく。しばらくしたらそのまま下がっていき、股間のあたりで顔を埋める。
「いい匂いがする」
「ばかっ……」
それは完全に恋人同士のソレであり、二人は絆を確かめあっていた。
気がつけば二人はベッドに移動していた。横になるフーガの腕に抱きつくティターニア。
「卒業まで……あと何日だっけ?」
ティターニアがわざとらしく言う。
「あと1周間くらいだな」
つまり、それがタイムリミットというわけだ。それまでに決断しなければならない。だが、フーガの心は決まっているようだ。
「ティターニア……抱いておいて言うのもアレなんだが……俺は天王星に行けない」
「……どうしても…だめ?」
「ああ。火星の兵役経験者が天王星に行くには風当たりが強い……」
「そう……振られちゃった……そっちがプロポーズしてきたくせに……そっちが振るんだね……」
男とはそういう生き物である。フーガはソレに対し何も言わず、ティターニアを胸の中に抱くくらいしかできなかった。
「……」
「いいもん、フーガ君が悔しがるくらい、新しい彼氏と愛し合うもん。いっぱいいっぱい……ぅっ…う」
ティターニアは徐々に嗚咽を漏らしていく。フーガはティターニアを力強く抱きしめる。体術の心得が有ると言っていただろうか。この腕の中の少女はものすごく華奢で力を込めたら壊れてしまいそうで……。
ティターニアも涙を流しながら、所詮この男はその程度だった、と…思ったが、それも一瞬だった。天王星が金星に嫌われているのは売春禁止法がないから、の一点に尽き、火星と天王星が中が悪いのはかつて戦争相手だったから。つまり、敵国同士である。厳密には同盟国である海王星が火星と戦う際、天王星は海王星を支援した。しかし、遺伝子技術は火星、金星ともに提供しており、あくまで中立である立場を示したが、民衆はそう思っていない。技術がどこから来たのかなんて秒で忘れるが、殴ってきた相手は末代まで覚えている。
そんな彼が天王星にやってきたら、民衆が何を言うか分かったものではない。自分が彼の立場なら、同じ選択をするだろう。
「ごめん……ごめん!」
ティターニアは涙を流しながらフーガに謝った。辛いのは彼も同じはずだから。
「いいさ……ティターニアの辛さが分かっただけでも…」
ティターニアは飛び出すようにフーガの唇を奪うように重ねた。
「こんな辛気臭いキスは初めてだ」
「私もよ……」
二人はしばらく抱き合っていた。その温もりを分かち合うように。
「不老長生の私は幾度となく分かれてきた。今回も大丈夫よ」
「目、赤くしながら言われても説得力無いぜ」
「私の目が赤いのは生まれつきよ」
「そうゆう事にしとく」




