マイラとARと
ティターニアは眠気眼をこすりながらシャワーを浴びるべく風呂場に入る。すでに湯気が出ているが気にしないで湯船に入る。
「あの……」
誰かの声がするが気のせいだろうか。そのまま顎まで湯につかりながら、回らない頭を回転させる。シャワーを浴びるつもりだったが、なぜ自分は風呂に入ってるのだろう?
「ふにゃぁ……?」
あまりに頭が回ってなさすぎて声が言葉になっていない。
「あの、ティターニアさん……私、入ってたんですが…」
マイラの声がする気がする。
「ほえ?」
首を傾げているとマイラに頬をつねられた。
「きーこーえーてーまーすーかー?」
「ほえほえ、あーあーあー」
頭が急速に覚醒してくる。目の前にいるのはマイラで、自分もそこにいて……
「あへ、わはひ…」
ティターニアが引っ張られた頬のまま喋るのでよく分からなかっただろうが、マイラは理解しようとしてくれたのか、手を離してくれた。
「やっと目が覚めましたか?私、先に入ってたんですけど」
マイラがそう言うとティターニアは顔を真っ赤にして湯船から出ようとする。
「あ、待って下さい」
マイラに止められ、ティターニアは湯船に戻る。
「先に出られると、ティターニアさんの恥ずかしいところが見えてしまうので、私が先に出ます」
マイラが立ち上がりティターニアの前を通っていく。
「いや、そういう訳にはいかないでしょ?」
結局2人で並んで風呂場を出ることになった。おかしい、譲り合いしていたはずなのに、気が付いたらいい感じの雰囲気になってしまった。
「こう、まじまじと眺めると……ティターニアさん、スタイル良いですね」
「マイラさんも引き締まって良い体つきだと思う」
裸を見せ合うなんて、そうある話ではない。恥ずかしいのは確かだが、それ以上に相手の体も気になる。
「これだけ引き締まってて、胸があるなんて良いなぁ……私ももう少し脚が細ければなぁ……」
ティターニアは腰に手を当てスっと背筋を伸ばし足のラインを出そうとする。
「それ以上脚を補足したら彼氏さんがガッカリしますよ」
マイラの言葉にティターニアは首をかしげる。
「え?そうなの?でも……」
「男とはそういうものです」
マイラが言い切るとティターニアは下着に足を通しながら、
「そうなのかなぁ……そう言われてみれば……そうかも……」
首を傾げていた。マイラもそれを見ながら下着に足を通していた。
「話は変わりますが、毛はお手入れを?」
「毛?」
ティターニアが首を傾げるのでティターニアの下着の真ん中を指差す。
「あ、これは生まれつき」
ティターニアが言うとマイラは小さく
「羨ましいですね」
と答えた。それに対しティターニアはため息交じりに言う。
「自分としては生えてて欲しかったかなぁ、なんて」
「見た目や衛生観念から剃り落とす人もいますし、私は無いほうが羨ましいですよ」
マイラは言いながらブラを身に着けており、ティターニアは少し納得いかないながらもチューブトップの服を着る。
「そんな感じなのかなぁ……」
「人は無い物ねだりをする生き物です」
マイラが服に袖を通し、ティターニアを見つめる。
「ティターニア様は女王でも妖精でもなく、一人の女の子です。立派な人間だと言うことをご自覚下さい」
そのハッキリとした物言いはティターニアに深く刺さった。
「貴方が特別な存在なんじゃないんです。皆…一人ひとり大事な…特別、なんです。貴方だけが特別なんてことはないんです」
マイラが言うとティターニアはマイラの胸に飛び込み
「職業軍人は言うことが違うなぁ」
頬を伝う雫が見られないようにした。それはマイラにも分かっており、暫くそのまま受け入れていた。




