表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この太陽系で私達は  作者: えるふ
62/70

ARちゃんとお酒

ティターニアは正装ではなく制服に身を包み校長室に来ていた。

「私は国の代表としてではなく、生徒としてここに来たつもりだったんだけど……しかたないか」

ティターニアはため息交じりに校長先生に言うと

「まあ、重い話のつもりはなかったのだが……お詫びではないのだが、これを」

校長先生はテーブルからアマレットの瓶を取り出すと、ティターニアに手渡した。

「有難う」

会話中嫌がっていたティターニアも、アマレットの瓶を手渡されたときには笑顔になっていた。ティターニアは実に表情豊かである。

「では、学園都市船としても……木星の意見に賛成する、と言うことでこの会議を終えよう。ご足労有難う、ティターニア君」



ティターニアは帰る為、館内の廊下を歩いていたら偶然にもARに出会った。

「ARさん。今からお仕事?」

ティターニアが声をかけると、ARは足を止めそれに答える。

「いえ、逆です。今日はこれで上りです」

「良かったら一緒にどう?」

ティターニアは笑顔で胸のあたりまで瓶を持ち上げる。ARは瓶とティターニアの顔を交互に見る。

「分かりました。着替えてくるので待っていて下さい」

待ってろ、と言われたのだがティターニアは、ARの後ろを更衣室までついて行った。

「まったく、貴方と言う人は……」

ARはエプロンを外し、ワンピース状のドレスを脱ぐ。

「メイド服、防弾って言ってたけど、みんなそうなの?」

ティターニアの素朴な疑問にARは、脱いだドレスを衣紋かけに掛けながら言う。

「いえ、私達バトルメイドだけです。ベッドメイドやキッチンメイドは普通の布と聞いています。それにスカート丈や袖の長さもそれぞれ違うんですよ」

そう言いながらARは私服であるチェックのスカートを穿き、少しフリルの付いた可愛らしいブラウスに袖を通した。

「可愛い服ね」

ティターニアが素直な感想を言う。

「貴方は普段、落ち着いた服を着てましたね」

ARがロッカーを閉め、歩み始めたのでティターニアはそれに続く。

「それと、私はマイラです。メイド服を脱いだ私はARではなく、マイラと呼んで下さい」

「じゃあマイラ、行きましょうか」

ティターニアが先導し、マイラがそれに続く。




「じゃあ何で割る?コーラとかジンジャエールもあるよ?」

ティターニアが冷蔵庫から瓶を取り出しながら言うが、マイラは首を横にふる。

「すみません、炭酸は飲めないんですよ」

それを聞いてティターニアは「可愛いな」と思ったが、口にはしなかった。

「じゃあ牛乳で割る?ウイスキーやブランデーもあるけど?」

ティターニアが言うとマイラは目を細め

「いえ、お酒をお酒で割るのはちょっと……」

と言う。仕方ないのでティターニアは牛乳で割ることにした。

「これはカクテルですか?」

マイラが不思議そうにグラスを眺めている。

「うん。アマレットミルクって言うカクテルだよ。知らない?」

「ええ。アマレットと言うお酒じたい知らなかったので……では頂きます」

少し口にしてやはりグラスを眺めるマイラ。

「杏仁豆腐わかる?」

「ええ」

「似てる味のはずよ」

「確かに」

ティターニアは自分の分のアマレットをウイスキーで割ると、フと思ったことを言う。

「あれ、杏仁豆腐がわかるって、もしかして……」

「ええ。私は天王星出身ですよ」

出身地を告白され、ティターニアは驚いてしまう。しかし、天王星は田舎ゆえ仕事も少なく、選べる職種も少ない。どうしても、このように国を出るしかない。

「マイラはどうしてバトルメイドに?」

ティターニアはグラスを傾けながら雑談を続ける。

「もともと海兵隊だったのですが、軍縮で解雇に。再雇用試験中に、IWIさんに抜擢されたんです」

マイラは笑みをこぼしながら言う。どうやら今の仕事に満足しているようだ。

「もともと海兵隊だったのもあって、訓練は結構こなせました。先輩のHKさんにも良くしてもらえたのですが……」

マイラが口ごもるのでティターニアは思わず

「ですが?」

と、聞いてしまった。

「同期であるAKのセクハラに耐えれないんですよ……すぐにスカートを捲ったり胸を触ったり……IWIさんにも相談したのですが、頻度こそ減りましたが……なくならず」

段々口調が弱々しく、と思ったら、マイラは涙を零していた。

「分かるよ、分かるよ、その気持ち。私も冥王星に居た頃はひどくてひどくて……て、AKさんって女性ですよね…?」

会話に同意しつつ、気になったことをティターニアは聞いた。

「そうですよ。だからですよ……「これはセクハラではない、スキンシップだ」と、言い張るんですよ。確かにロッカールームでは皆の下着姿が見れますし、シャワールームでは裸すら見えますが、それとこれとは違うんですっ」

今度は怒り始めた。校長室のシャワールームはどうやら、横並びにシャワーヘッドが並んでるタイプのようだ。

「まあ、確かにスカート捲られるのは違うよね」

ティターニアもそろそろ同意するのに疑問を覚え始める。

「まあ、そんなこと言っても、同期ってのもあって、AKの事は好きだったりすのよね、ふふふっ」

今度は笑っている。ここまで目まぐるしく表情が変わる人は初めて見る。初めて見るタイプなので、次のお酒を勧めて良いのかどうか悩むほどだ。

「ティターニアさん」

「はい」

「私のグラスが空なのですが」

「え?あ、はい」

もしかしたらヤバイ人にお酒を勧めてしまったかもしれない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ