クレープとティターニアと
工場見学のあとはショッピングモールへと案内された。木星最大のショッピングモールと言われるだけあってかなりの規模だ。
「行き先案内に行き先を告げれば移動用ポッドで簡単に移動できますよ」
ディーツに言われ、ティターニアは即座に画面に触れる。最初はクレープ屋だ。
「この距離なら歩けそうね」
ティターニアが言うとサイスが通路を見ながら言う。
「そうですわね。すぐそこに見えてますわ。歩きます?」
サイスが振り向き言うとARは
「大丈夫よ」
と返したので皆で歩くことに。
「なあ、ティターニア。なんでクレープなんだ」
フーガが不思議そうにティターニアに言う。
「あれ?食べ歩きって言ったらクレープが定番でしょ?」
「そうね」
ティターニアのセリフに即答したのはARだった。
「学生時代は良く食べたてわ」
ARが言うとAKはARを見ながら
「つまり、その胸はクレープでできている、と!」
AKはまたわけのわからないことを言う。
「どういう事よ……」
「だって成長期に食べててお腹じゃなくてソレが出てきたんでしょ?」
それを聞いてフーガは何気なくARの胸を見た後にティターニアの胸を見る。
「女同士の会話ってこんなもんなのか?」
フーガが少し気になって言うと、サイスは顎に手を当て考える。
「確かにこんな感じかもしれませんわね」
しかしサイスは肘でフーガをどついていた。
「何で俺なんだよ」
「分からないようでしたらもう一発お見舞いしますわよ?」
「……いや、うん。分からん」
結局フーガは2発目を貰っていた。
「やっぱりクレープは美味しいわね」
本当は食べ歩くつもりだったが、ディーツに止められ店の前で食べていた。
「ティターニアは何を?」
サイスが言うのでティターニアは一旦口の中のものを飲み込むと
「ホイップとチョコレートとアイスの物ね」
「あら、私は苺をトッピングしましたわ」
「私は護衛ですので」
「え?」
サイスが答えた後ARが答えたのだが、直後に答えたAKはちゃっかり食べている。
「AK……仕事中ですよ?」
「ARが居るからへーきへーき」
AKが食べているのをARは目を細めて見ていた。
クレープ屋は大通りに面しているので人通りがそれなりにある。
「ねえ見てあの女の人。真っ白!」
「メイド連れてるし、どこかのお嬢様じゃない?」
「ディーツ外交官も一緒だ。どこの国の人だろう?」
「それにしても美人美男の夫婦で羨ましいなぁ」
「お子さんも美人だよな」
と様々な言葉が聞こえてきたが、ティターニアはとくに気にせずクレープに舌鼓。おそらく色々指を指されるのは慣れているのだろう。サイスは眉を吊り上げていたが。
「次はどこへ食べに行こう?」
「お向かいがアイスクリーム屋さんみたいね。行きましょう」
一同は通路向かいのアイスクリーム屋へ向かう。
「私はバニラかな」
ティターニアがパネルを操作しながら言うとサイスが続いて
「私はチョコミントにしますわ」
「じゃあ俺はチョコクッキーかな」
フーガもパネルから注文をする。即座にカップに入ったアイスクリームが出てくる。それぞれ手に椅子に座ろうとしながら振り返ると、またもAKが注文をしていた。
「え?」
AKは何でダメなの?と言う顔でテーブルを囲む中に入る。
「AK……」
「何?AR」
「IWIさんへ報告しますからね」
それを聞いてAKの手が止まる。
「待って」
AKが言いかけたところでティターニアが端末で写真を撮っていた。
「二人共お似合いね」
「そうですわね……いいカップルですわ…」
サイスが少し進んだ感想を言う。
「あ、いや…確かにAKとは長いけど……」
それについ反応してしまうAR。
「まあ!長い付き合いだなんてそんな……金星はいつでもお二人を歓迎しますわ」
サイスのスイッチが入ってしまった。
「この子……妄想癖ある…?もしかして」
AKが恐る恐るティターニアに言うと、力強く頷くティターニア。
「ARさん、ちょっと」
ティターニアが助け舟を出してくれるのだろうか。ティターニアがARを手招きする。
「はい、あ~ん」
ティターニアがスプーンでアイスを差し向ける。ARは一瞬戸惑う。
「あ~ん」
ティターニアが2回目を言うのでARは腰をかがめ口を開く。
「どう?」
口の中に入れられたアイスはいつもより甘く感じられた。
「美味しい、です…」
それを見ていたサイスは手を合わせ
「まさかのライバル登場ですわ」
嬉しそうにしていた。スイッチの入ったサイスは何でも良いらしい。困ったお嬢様だ。
「あんな幸せそうな顔のAR初めて見た……」
AKも手が止まるほどの驚き様だった。
「ほら、一緒に食べよ?」
ティターニアが言うがARはティターニアの丁度真後ろに居た男の手を掴みながら
「いえ、このような不届き者がいるので遠慮しておきます」
ティターニアが振り返り首をかしげる。
「髪に触れようとしていました」
ARが言うとティターニアは少し困ったように
「私の髪なんて珍しいものでもないでしょうに。確かに色は白いけど」
ティターニアはサラリと一回髪を流すとそのサラサラとした美しい髪が流れる。
「髪くらい……触っても…」
男が言うとティターニアは目を尖らせ
「触ってもいいけど…高いわよ?何せ300年くらいかけてるもの……」
ティターニアが言うと男は一歩離れる。
「この御方は天王星の女王であるティターニア様です。どうぞご無礼なきよう」
ディーツが睨みつけると男はARの手をほどき走り去っていった。
「すみませんでした、お楽しみの最中に」
ディーツが謝罪するのでティターニアは微笑み
「いえいえ、構いませんよ。これでトントンかしら?」
ティターニアが言うと
「寛大な心遣いに感謝します」
とディーツは頭を下げた。




