あいのこくはく
思いの外長く着ることになったウラヌスドレスを衣紋掛けにかけて眺める。次に着る場面はないだろうな。そう思う。
『ティターニア、まだ部屋にいるんだろ?』
音声通話でフーガが声をかけてくる。
「……ええ、そうね」
ティターニアは少し考えた後そう答えた
『そろそろ出ないと遅刻するぞ』
「え?」
端末に表示されている時間を見る。確かにギリギリだ。走れば間に合うかも。
『まあ、今日くらいは遅刻しても許されると思うけどな』
ティターニアは慌てて制服に着替え、玄関を開けると、そこにサイスがいた。
「きゃっ。あ、危ないですわよ」
「あ、ああ、ごめん。何でここに?」
ティターニアはぶつかりそうになったサイスの顔を覗き込みながら言う。
「迎えに。色々ありましたから」
確かに。気にしてないと言えば嘘になる。
「それに、私はあの事については黙っているつもりですの。それだけは伝えたくて」
ティターニアはそれを聞いて「今日は遅刻しよう」そう決めた。だから歩いて学校へ向かう。
「言う、言わない、を抜きにすると、あれについてどう思う?」
ティターニアは怖かった。気を許せる友達なぞ一生に何人もできるものではない。それを失うのが怖かった。
「驚いた。と、言うのが正直な感想ですわね。それと……」
ティターニアはその先の言葉を想像しギュッと目を閉じた。
「とても羨ましい、と思いましたわ」
しかしティターニアの想像とは違う答えが帰ってきた。気持ち悪い、とかそういう言葉を想像していただけに意外だった。
「どうして……そう思うの…?怖くない…?」
ティターニアは震える声で聞いた。
「怖いだなんてとんでもないですわ。便利、と思いはしましたけど。それは命を狙われる程に……」
ティターニアは複雑そうな顔をする。サイスは続ける。
「私はそれを知ってなお、断言いたしますわ―――」
サイスはティターニアの手を握り言う。
「その力は美しいと思いますし……私は貴方を愛してますわ。ティターニア…」
その顔は恋する乙女そのものでとても眩しかった。ティターニアはその言葉に感動し涙を流した。そして、ティターニアは嗚咽混じりの声で返す。
「あり…がっとう…!」
ティターニアは強くサイスの手を握り返した。




