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この太陽系で私達は  作者: えるふ
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スーパー銭湯

授業が終わり、ティターニアは端末の画面をしばらく眺める。

「あら、ティターニア。今日はおセンチですの?」

サイスが隣に座りながら言うので、ティターニアは少し考え、

「ええ。今日の朝、ちょっと言い難いメールが届いててね……」

「あらあら、それはいけませんわ。そうですわね……ティターニアは確かシャワーではなくお風呂派でしたわよね?ありますわよ?街の方に公衆浴場が。お湯でアンニュイ気持ちを流してはいかがかしら?」

サイスに言われ、ティターニアは端末を机から切断し、検索をかけてみる。街の方に確かに公衆浴場がある。名前もスーパー銭湯なので期待値は高い。

「じゃあ一緒にどう?」

「構いませんわ。裸の付き合い、ともいいますし」



二人は銭湯にポッドで移動した。移動中にティターニアがタオルや髪を湯につけないように、と注意を促す。

「えーと、靴は脱ぎますのね」

都市部として機能しているとはいえ宇宙船内であるこの船内で土禁なのは珍しいと言える。靴を下駄箱に入れ、すぐ目の前にあるカウンターに端末をかざす。

『当施設では、盗撮防止の観点から個人端末の利用を制限しています。こちらにて預かります』

ティターニアは首を傾げ腕に装着している端末を眺め、裏返してみる。確かにそこにはレンズがある。ティターニアは納得し、専用のスロットに端末を入れると、代わりのブレスレットが出てくる。

『購入はこちらでどうぞ』

言われたとおり、そのブレスレットを隣の自販機に触れさせボタンを押すと、タオルセットが出てきた。それを受け取り脱衣所へ向かう。


衣類を脱いでいると、チラチラとティターニアを見る人達がいる。子供たちは指を指している。ティターニアはさすがに恥ずかしそうに腕で体を隠す。

「あの……私…どっか変?」

ティターニアが不安そうにサイスに聞くと、

「おおかた、その白い肌が羨ましいのですわ。木星も金星も、白人種ですもの」

確かにティターニアの肌は白い。だが、それが黄色人だと知ったら、もっと驚くだろうか。

「それだけ、かな……」

「ティターニアはスタイルも良いですし」

胸は美乳でクビレもあり、お尻もある。整ったスタイル、と言うには下半身がムチムチであるがティターニアはその事に対しあまり気にしておらず、それも注目を浴びる理由だと思われる。フーガ曰く、腰から脚は美味しそう。との事。そんな事をこっちで書いている間に、ティターニアは簪を二本レンタルし、

「そう?もっとこう、綺麗な人も多いと思うんだけど……。サイス、どうする?」

ティターニアが脱ぎ終わりタオルで股を隠しながら言う。サイスも丁度脱ぎ終わっており、タオルを巻こうとしていたがそれを諦め

「ええ、大丈夫ですわ」

戸を開けると湯のニオイが鼻につく。ああ、そうそう「これぞ銭湯」そう言うニオイだ。

ティターニアはまず体を洗うべく洗い場へ向かう。サイスもそれに続き、隣に腰を下ろす。

ティターニアはボディソープをタオルに付け体に泡を走らせる。その光景はサイスが見惚れるほどだ。体を洗い終えて洗髪する姿も悪くない。シャンプーやコンディショナーを髪に馴染ませる姿はどことなく美しい。

「お美しい限りですわ」

サイスが隣で同じ様に体などを洗いながら言う。

「え?それは髪が長いからそう見えるだけじゃない?」

シャワーで髪を流しているその姿は余韻すら残る美しさと思われる。

「いえいえ、素晴らしいですわ」

そう言えばサイスは金星出身だった。忘れてた。ティターニアがため息を吐きながら洗ったばかりの髪を後頭部で束ね簪を挿す。サイスを見るとヘアゴムでうまく束ねられていなかったのでサイスの髪を綺麗に束ね簪を挿して止めてあげる。

「有難うございますわ。この……この棒は何て言いますの?」

「簪って言うの。こうやって髪を止めるのに使うんだよ」

ティターニアはそう言うと奥の方にある炭酸風呂に入っていく。

「炭酸だって」

ティターニアが言うとサイスは興味津々に湯船に入る。

「私達金星人は湯船に入る習慣はないんですのよ」

「シャワーだけでいいだなんて変わってるわね」

「私達からしたら、天王星人が変わってますわ」

そんなもんなのか。と思いながら壁面に付いているモニターに流れているドラマを見ていた。ライバル国をやっつけたい一心で出来たばかりの国にじゃぶじゃぶ課金する話だった。

「さすが炭酸。見て、肌に泡がいっぱいついてる」

ティターニアに言われサイスが自分の腕を触ると沢山の泡が肌を離れ水面に向かっていく。

「じゃあ私は隣に移動しますわ」

サイスは隣の湯船に移動したがティターニアはそのまま炭酸風呂に浸かっていた。


「サイスはまだいるかな、いたいた。おーい」

声をかけた頃にはすでに隣にいたのでサイスが驚いていた。

「きゃっ!いけませんわ、私に左側から近づいては」

ティターニアが不思議そう首を傾げるとサイスは寝湯に入りながら

「私、左目が見えてませんの」

ティターニアはそれを聞いて直ぐ隣に横になる。

「そうだったんだ、ごめんね」

「いえいえ、構いませんわ。生まれつきですもの」

ティターニアはそれは言い難い事だろうな、と思い先程話していたメールの件を話した。


「つまり、ティターニアに女王になれ、と」

サイスが復唱している。要約するとそうなる。

「一応、卒業するまでは学生でいさせろって返事をして時間稼ぎをしたんだけど……そのあとはどうなる事やら」

ティターニアが言うとサイスは横向きになり腕を回し抱きつくと、

「良いと思いますわ。私は女王様とお友達ですのよって自慢できますわ」

サイスは柔らかい笑みを浮かべていたがその声は少し寂し気だった。


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