偽物撃退
ティターニアは待ち合わせの場所に向かう前に市長官邸に向かう。
「お姉さん。名前は?」
玄関の前に2人立っていたので、その内の1人に声を掛ける。
「お答えできません」
そっけなく答えるメイドにティターニアは笑顔で手を出す。
「ちょっとソレを貸してくれないかしら。必要なの」
メイドはその手を払うと、当たり前のことを言う。
「これは私のです」
「そこを何とか」
ティターニアが食い下がる。メイドは嫌そうな顔を崩さない。そこで、ティターニアは思いつきでメイドの頬を思いっきりぶん殴る。突然のことに殴られたメイドと、慌てて銃を構えるもうひとりのメイド。
「あら、意外と……」
倒れたメイドを抱くように起き上がらせ、胸のあたりを撫でてあげる。
「あ、あの……打ったのは胸ではないのですが……」
メイドが困惑しているので笑顔でティターニアは答える。
「それだけ言えれば十分ね。今日は諦めるわ」
ティターニアはそう言うと、近くの端末でポッドを召喚し、移動を開始した。
待ち合わせの場所は公園のベンチだったのだが、すでに2人の男が座っている。彼らの可能性もあるし、違う可能性もある。仕方なく近くの自販機で珈琲を買うと、ベンチに近づく。
「隣、良いかしら?」
「どうぞ」
二人はすぐに了承するのでティターニアは腰を下ろし、珈琲に口をつける。二人の会話を聞いているが、どうやらこの2人が例の偽物らしい。どうカミングアウトしようかと思っていたら、目の前を知った顔が通過しようとしていたので声をかけた。
「フーガ君!」
手招きして合図すると、フーガはすぐにこちらに駆け寄ってきた。
「ティターニア。お前もか。相手はまだか?」
「多分この2人よ」
その会話を聞いていた二人が驚いてこちらを見る。
「ほう、こいつが例の偽物か。どう落とし前してやろうかな」
フーガが腕を回しながら見ているとティターニアは立ち上がり、背中に入れいていたピストルを取り出しコッキングする。
「待て待て。それはさすがにやり過ぎだ」
フーガが慌てて止めるのを、偽物の二人は怯えながら見ていた。
「えー、だって……」
「だってじゃない……二人共…覚えていて欲しいのだけど…ティターニアはすごく引き金が軽い。だから、その……こうゆうのは二度とやらないと誓って欲しい。じゃないと、お前たちの命の保証はできない」
「は、はいっ」
「す、すみませんでしたぁ」
二人は全力で走って逃げていった。
「全く……これでいいかな」
フーガがため息混じりに言う。ティターニアは少し不満そうだったが、すぐにピストルを背中にしまい、
「じゃあ私はこれを返してくるから。私の家で待ってて?」
「分かった」
ティターニアは再び市長官邸へ向かい、メイドに話しかける。
「さっきの場所大丈夫だった?」
ティターニアが触れようとすると、メイドはそれを弾く。
「ええ。お陰様で」
少し苛ついているようだったがティターニアは笑顔で背中からピストルを取り出す。
「はい、返すわ」
え?と小さく聞こえ慌ててスカートの中のホルスターにふれる。そこにあるはずのピストルは確かに抜き取られていた。
「じょ、冗談でしょ……」
メイドがあっけからんとしていた。まさかあの一瞬でスカートの中からピストルを抜き取っているとは思うまい。
「ふふっじゃあまたね」
ティターニアは笑みを崩さぬまま歩み去る。メイドは手渡されたピストルとティターニアの背中を交互に見るしかできなかった。ティターニアは背中から「そんなバカな……」と聞こえるたので、手を振ってそれに答えると、ポッドに乗って移動する。
「おまたせ。飲んでく?」
「せっかくだしな。何がある?」
「何かがあるよ」
と、いつもらしい会話をして扉を開けるティターニア。
「えーと、今だと……ブランデーがあるけどどう?」
「悪くない。何で割れる?」
「コーラならあるよ」
「よっしゃ、それで」
ティターニアはブランデーのコルクをポンッと抜き取りグラスに注ぐ。続いてコーラを多めに入れる。
「ところで、このブランデーはなんて言うヤツなんだ?」
フーガがグラスを受け取りながら言うのでティターニアは瓶を見せながら
「J.P.シュネーと言うお酒よ」
以前はわざとらしく天王星語で話したが、最近は天王星語をあまり使わないティターニア。
「そう言えば最近天王星語使わないな」
フーガがグラスを傾けながら言う。ティターニアは首を傾げながら
「だって、英語じゃないと判らないって皆言うんだもん」
ティターニアはブランデーをストレートで飲んでいる。ここでも強さを発揮しているようだ。しかし、ティターニアは一杯飲むとフーガの隣に座り、座っているフーガの膝を枕に寝る体制に入る。
「おいおいマジかよ」
フーガが言うとティターニアは
「たまには膝枕くらいさせてよね」
と言うが、フーガは抱きかかえ、ベッドへ。
「ツレないなぁ」
ティターニアが言うと、フーガは添い寝し、腕を下に回す。
「腕枕じゃだめか?」
フーガに言われティターニアは顔を赤らめながら脇のあたりに顔を埋める。
「ええ、良いわよ……」




