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この太陽系で私達は  作者: えるふ
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盗撮の次は偽物、だと?

『ティターニア。やっぱり盗撮動画、上がってたぞ』

フーガが通話で教えてくれる。

「あ、やっぱり?フーガくんが来た日は無いはずよ」

街を歩きながらティターニアは通話で答える。

『ああ、たしかに無かった。何をした?』

「なにも?」

『まあいいか。じゃあ今夜、頼むぜ』

「うん、分かった」

フーガとの通信を終えた時、待ち合わせ場所に到着した。

「あら、早かったですわね」

「あ、ごめん。待った?」

「いいえ、さっき来た所ですわ」

待ち合わせていたのはサイス。ヌイグルミを買いに行こう、と言う約束だった。サイス曰く「一度も買ったことがないので是非一緒に選んでほしい」との事だった。ティターニア自身も新しい子をお迎えしたかったので、快く承諾したのだった。



「あら、この長い子……可愛い…」

ティターニアが棚から引っ張り出したのは蛇のヌイグルミ。大きいが値段は手頃で、肌触りも悪くない。

「えーと、札によるとニシキヘビみたいですわよ」

サイスに言われるがいまいちピンとこない。

「え、この子…実在するの?」

ティターニアが驚いて聞くと、サイスは札を指差し、

「火星と地球くらいしかいないそうですわよ?」

サイスが言うと少しだけ納得し、

「君、いるんだ?……よし、私はこの子にしよう」

ティターニアが抱いて陳列棚を歩いていく。サメや像など様々な動物のヌイグルミが陳列されている。

「私は…これにしますわ」

手に取られたのは犬のヌイグルミだった。最初だし、無難に可愛いものを選ぶのが良いだろう。

「あら、可愛いじゃない。じゃあレジ行こうか」

ティターニアと並んでレジをすませ、袋に入れて店を出る。

「ティターニア、この後どうしますの?」

ティターニアがどうしようかな、と悩んでいると、すれ違った通行人が声をかけてくる。

「貴方、ティターニアさん?」

「え?あ、はい。そうですけ……」

ティターニアは言い終わる前に言葉は途切れた。ティターニアは何が起こったか判らなかったが、地面に倒れていることと、頬が痛む事だけは理解できた。

「ティターニア!ちょっと、いきなり殴るなんて!」

サイスがティターニアに駆け寄りながら抗議の声をあげる。

「貴方、何をしたか自覚ないの!?」

興奮する相手にティターニアは何度も瞬きをする。顔への強打で視界が安定していないためだ。

「ご、ごめ…何を言ってるか……」

ティターニアが痛みに耐えながら言う。相手が再び手を振り上げるので、サイスが間に入る。

「お待ちになってくださる?貴方の怒りは根拠のあるものだと思いますの。ですが、無抵抗の人間相手に暴力を振るうのは許せるものではありませんわ。どうか理由を聞かせてくださるかしら?」

サイスが間に入ったことで相手は冷静さを取り戻しつつある。ティターニアが少し安心してよろけた表紙に移動用ポッドの呼び出し端末に触れてしまう。

「立ち話も何だし……話せる場所に案内するわ…」

ティターニアはポッドに相手をまず先に乗せ、続いてティターニア。最後にサイスが乗車した。



『到着しました。足元にご注意下さい』

機械音声が流れ、ティターニア達は降りる。

「ちょ、ちょっと…ここ」

相手が驚き戸惑っている。それは仕方ない。なぜならここは市長官邸なのだから。つまり、校長先生のお部屋である。乱暴に言えば。

「メイドさん。問題があるから、部屋を貸してくれないかしら」

扉の前に居るメイドに声を掛けると、メイドは扉の中へと姿を消す。扉の前には2人立っていたが、手には自動小銃。

「そんなARで大丈夫?AKでも良いのよ?」

ティターニアが気さくに声をかけるのは2人には気が気じゃなかった。いつ、その自動小銃が自分に向けられるか分かったものではない。

「ARは最も信頼でき、最も高貴な銃です。野蛮なAKと一緒にしないで下さい」

ティターニアは銃を眺め

「なるほど、300ブラックアウトなのね。確かに、その方が良いかもしれないわね」

笑顔で答えるティターニアに目をそらすメイド。それを見てティターニアは頬に触れる。

「気安く触れないで下さい。撃ちますよ」

手を弾かれてもティターニアは笑顔のままだった。

「校長先生の許可が降りました。どうぞこちらへ」

門前払いを想像していた二人は驚いた。そのメイドは顎で早く入れと催促すると、ティターニアは玄関をくぐる。ティターニアに続いて中へと入っていく。案内されたのは6人部屋の会議室のようであった。

「どうぞ、自由に議論して下さい。規則ですので私は室内にいます。何かご要望があれば何なりとお申し付け下さい」

メイドが言うので、椅子に腰を下ろしながらティターニアは言う。

「じゃあ冷えたタオルを下さるかしら。さっき殴られた跡が痛くて……」

「かしこまりました。少々お待ち下さい」

メイドは端末を操作し、文字を走らせる。それを横目に見ながらティターニアは言う。

「ほら、二人も座って」

二人は思い出したように椅子に腰を下ろす。

「まずは自己紹介からね…私は……言うまでもないかもだけど…ティターニアよ」

「サイスですわ」

「サラよ…」

簡単な自己紹介が終わったタイミングでタオルが届いたのでティターニアは礼を言って受け取り、すぐに頬にあてがう。

「まずはサラさんの言い分を聞くわ。何があったの?」

ティターニアはサラを見ながら言う。サイスもそちらに向き直る。

「えっと、私の友達なんだけど……ゲームで知り合ったらしいのよ。それで、オフ会をすることになって……」

押し倒された。と、言うことらしい。

「にわかには信じ難い事ですわ」

偽物がゲーム内にいる、と言うのは実は過去に何度か経験がある。おそらくこれを読んでいる人ももしかしたら経験者がいるかもしれない。いつの時代も変わらないものだ。

「なんていうゲームか分かるかしら」

ティターニアが言うがサラは首を傾げた。

「ちょっと分からないわ」

サラが少し困っているので、サイスが助け舟を出す。

「なら、今その友達に連絡をとってみては如何かしら?」

サイスに言われ、端末を操作するサラ。

「あ、エレン?サラだけど……今ティターニアさんと一緒にいるの」

『え?』

まあ当然の反応か。ティターニアは自身の端末を操作し、通話に混ざる。通話に参加させてくれるサラに感謝するしかない。

「こんにちは。私がティターニアよ」

『え?え?』

相手が凄く困惑している。はて?

『本物……ですか?』

「ええ、そうよ。これが、学生証よ」

端末に表示させ、相手に見えるようにする。こればかりは偽造できない正真正銘の本物である証拠である。

『あ、えっと…』

「相手の容姿は分かる?」

『はい。今写真を送ります』

写真をとる余裕はあったのか…ティターニアはどんな相手が送られてくるか楽しみにしながら画像が貼られるのを待った。そして驚いた。

「え?男ぉ!?」

ティターニアは変な声が出た。この名前は女性名だぞ。なんで嘘って判らなかった?サイスは呆れて肩をすくめている。

「ま、まぁ、ゲームだとどんな名前でも名のれるから……」

サラが言う。しかし、被害が出ているので放って置くわけにはいかない。

「えーと、誰さん、でしたっけ?」

『エレンです』

「エレンさん。その「ティターニア」さんを呼び出せる?」

ティターニアのいつも似まして真面目な声。ああ、怒ってるんだな。無理もない。

『えーと、無理っぽい、です……私、ブロックされてるみたいで…クランも追い出されましたし』

なるほど、手は打ってるわけか。

「なんていうゲームかしら?」

『エアフォース4.2です』

まだ新し目のタイトルだが、ティターニアは十二分に遊んでいる。

「基地の名前かクランの名前は?」

『基地の名前は覚えてないですけど、クランはアーバンコンバットです』

「有難う、今すぐ確認するわ」

そう言うと通話から一旦抜け、席を立つ。

「さあ続きは私の家でやるわよ。サイスはフーガ君に連絡して、仲間を集めて」

「わかりましたわ」



「さて、基地の場所も分かったし、あとはフーガ君を待つだけね」

ティターニアは買ったばかりのヌイグルミを袋に入れたままベッドに投げる。そして棚からフライトスティックを取り出し、机にセットする。

「本格的、ですね」

サラがそれを見て感想を漏らす。

「私こう見えて結構暇人でね?ついつい買い揃えてしまうのよ」

『フーガだ、偽物だって?』

「そうよ。飛べる?」

『ああ。ハンガーで待ってるぜ』

ティターニアはそれを聞いてゲームを立ち上げVRモードにセットする。部屋の壁に風景が写り、すぐにハンガー内になる。

「よし、行くわよ!」

ティターニアが言うと、すぐさまタキシングを開始。滑走路前で一旦停止。

「管制、行くわよ?」

『ディビジョン1、離陸を許可する。ディビジョン2は並んで離陸せよ』

並んで、と言うが実際は右後ろである。

『いよう、助けに来たぜ!』

「誰?」

知らない声にティターニアはすぐにレーダーを見る。いつもよりよく見える。

『エリア81だ。よろしく』

ティターニアはすぐに理解する。隣の基地で基地の名前がエリア81。クラン名は確かナイトメアパーティだったか。

『電子戦機に情報収集機?ほんとに?有難うございますわ』

聞き慣れた声が聞こえる。いつもは不在の3番機が存在している。

「サイスもやってたのね」

『ええ。意外かしら?』

後ろを振り返り機種を確認する。

「クフィル?良い機体よね」

『ええ。もっとも、私は初心者の域を超えてませんけど…』

初心者、と言っているサイスだが、ティターニアのすぐ左後ろにピタリとついている。

「初心者、ねえ?初心者が編隊飛行なんてできるかしら?」

『さあ?』

サイスは答えない。まあ良いか。

『そろそろ、相手側の声が聞こえてくるはずだけど』

「情報収集機って便利ね。相手のVCの音が拾えるなんて」

『そのための情報収集機。まあ、接近遭遇したら、結局相手に自分の声が行っちゃうからあまり有力視されてないけどね』

友軍として駆けつけてくれた人が言う。

『領空を侵犯してるやつがいるらしい』

『ほほう、フーガ、相手にしてやろう。丁度暇してたんだ』

相手の言葉に口笛を吹いたのはフーガだ。

『驚いた。俺の偽物もいるらしい』

「フーガ君を呼んで正解だったわね……さて、相手の離陸に何分かかるかしら?」

ティターニアがレーダーを見ながら言う。基地まではもう少しかかる。

『5分くらい、じゃないか?』

『残念。この速度なら2分で着くよ』

フーガの言葉にすぐに訂正が入る。2分か。相手は離陸してしまうかな。

『ティターニア、離陸!』

『フーガ離陸。さあてお手並み拝見と行こうか』

相手はまだこちらが何者か気がついていない。

「こちらのレーダーに映ったわね、足が速い事は良いこと、よね」

ティターニアはレーダー照射を行い、即座に長距離ミサイルを発射する。

『え?早くね?』

『ティターニアはな…引き金が軽いんだ……』

驚くチームメイトをため息混じりに答えるフーガ。

『ミサイルだ!』

『回避!回避!』

相手は回避運動に入る。しかし、そこはティターニアのミサイル、と言うべきだろう。ロックオンした4機は見事撃墜していた。

『くそ、3番機から6番機までやられた!』

そろそろ相手との距離が近づいてきた。

『ECM作動を開始』

『4、3、2,1,エンゲージ』

恐らく相手にもこちらの声が聞こえるようになったのだろう。

「遅い羊はどこかなっと」

ティターニアは赤外線誘導ミサイルの狙いを定めようとするが、なかなか上手く行かない。

『なるほど、なかなかいい腕だ。聞こえてるんだろ?良かったらウチの基地に来ないか?その腕なら歓迎するぜ?』

ティターニアの偽物だろう相手が言う。

「お断りよ」

ティターニアが返事をした直後、ティターニアの機の後ろに敵機が入り込む。

『なんだ、女か。腰振ってアヒンアヒン言わせたろか?』

『うへへへ』

ティターニアはため息を一つ。

「こんな下品な相手が私の偽物なわけ?」

『それがどうしたってゆうんだ?自称本物さんよ?こっちはお前のケツについてんだぜ?いつでもイかせられるって事をわすれんなよ?』

いちいち下品な言い回しに聞こえるようになってきた。そろそろ我慢の限界と言うやつだ。

「フーガ、私の前のヤツ……お願い。私、後ろのやつを叩かないと気がすまないの」

ティターニアの機は急激な機首上げと減速で後ろにいた機は対応できる間もなく背後に回るのを許してしまう。しかし、相手の機体は隠し機体。性能だけは折り紙付きだ。

「フォックス2!」

ティターニアがミサイルを発射するが、相手はフレアを撒いて回避運動に入る。よほど性能の高いフレアなのだろう。簡単に避けられてしまう。だが、ティターニアの目的はその回避運動にある。即座にティターニアは旋回し、相手から少し離れる。

『どこだ?見失った!』

『こっちもだ!』

相手がこちらを見失うのは無理もない。電子戦機によってレーダーがジャミングされているのだ。

『どこかに電子戦機が居るはずだ!探せ!』

相手がそろそろ電子戦機に注意が向き始める。

「そっちに行くわよ」

ティターニアが注意を促す。

『へえへえ』

やる気のない返事が帰ってきた。相手にもこちらの通信が聞こえてるのは百も承知。ティターニアは注意を促すように言った。ようにしか聞こえない。実際は離れた場所にいるため発見は困難だろう。

『なんでアイツら……ECCM持ってないんだ?あの機体には標準装備のはずだが…』

『バカはバカらしく、クイックミサイルか多弾頭ミサイルでも積んでるんでしょ?』

チームメイトから馬鹿にした声が聞こえる。味方で本当に良かった。外交は大事ってね。昔から言われてるんですよ。そう、孫氏のあたりから、ね。

「私の偽物は……いたいた。では……さようなら」

ティターニアは上方向から機銃を浴びせ、1機を撃ち落とした。

『よし、片付いた!』

フーガもほぼ同時に始末したらしい。

『も、申し訳ありませんわ!誰か…!』

2機に夢中になりすぎて、サイス機がモブに狙われていた。フーガは遠すぎ、ティターニアは角度が悪くミサイルを撃てない。まずいかもしれない。そう思った時だった。

『た、助かりましたわ……有難うございます!』

サイスが礼を言っていた。不思議に思いキルレートを見る。

『電子戦機とは言え、戦闘を放棄した機体じゃないからね……間に合ってよかったよ』

「フーガ君って何乗ってるの?」

『俺はファルコンだぞ。ティターニアは?』

「トムよ」

『ちなみに、私はグラウラー』

困った。対地攻撃が誰もできない。そう思っていた。

『いやー、思ったとおり、片付いてるねー』

新しい声が聞こえた。と思った瞬間、基地を絨毯爆撃する爆撃機。

『真っ先に落とされるの分かってたから、遠くの方で待機してたんだよね』

絨毯爆撃が終わると、どこから湧いてきたのか、複数の攻撃機や爆撃機が基地を襲撃していく。

『え?何が起きてるんだ?』

「こんなに多くの地表攻撃、見たこと無い…」

『うへへ、ウチのクラマスが複数のクランに応援を呼びかけたんよ……有名人の偽物を一緒に叩こうってね』

有名人の自覚は無かった。このゲームはあまり出没していなかったから。

「有名人?なの?」

ティターニアが首をかしげる。

『ああ、有名だぞ?「キューピットハートの黒いトム猫」はもう伝説的さ』

ティターニアは慌てて後ろを振り返る。流石にコックピットからは垂直尾翼のマークは見えない。

『そもそも、よほど物好きじゃなけりゃ、トム猫なんて選ばないし』

トム猫は性能に優れているわけではない。カスタム性も高いとは言えない。だが、ティターニアは先の起動もさることながら、腕前でそれを補っていた。

『キューピットハート、会えて光栄です。是非一緒にお茶でも』

『おいおい、ここにきてナンパかぁ?』

『ひゃー、これだからランサーワンは嫌われるんだぜ?』

『う、うるせぇな、ほっとけよ』

茶番が始まった頃、地上攻撃評価が98%になっている事に気がついた。

「あと少し、ね」

『滑走路が残ってるからな』

ティターニアは旋回し、滑走路が見える位置に向くと、一機の戦略爆撃機が進入していた。

『たーーーまーーーーやーーーー』

そして巨大な爆炎があがる。

「ふふ、皆有難う。じゃあ明日、本人と直接対決してくるわね」




そして、ゲームを終えた頃、サラは少し心配そうだ。

「あの、大丈夫ですか?」

「いいえ、むしろ狙ってやったのよ。これだけ叩きのめせば、必ず私を呼び出すはずってね。現に、私を呼び出すメールが来てたし」

「じゃあやっぱり……」

「大丈夫よ。なんなら泊まってく?」

「いえ、大丈夫です。帰ります」


なんか空戦シーンがあっさりし過ぎな気がしますが……まあ今季のアニメが2つも空戦ものだから、まあいっかって事で

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