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この太陽系で私達は  作者: えるふ
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ティターニア、ゲーマー説

「次は金星についてだ。すでに知っている人もいるかもしれないが……」

2日目の授業中である。今日の歴史はこれから向かう金星について。はじめに非常事態宣言の事を説明していた。どうやら100を越える火山が一斉に噴火し、地表は人が住める状況ではなくなった、との事だった。原因は不明。

「そして、かつて起きた独立戦争、海王星と火星が戦火を交えた。その時に劣勢であった火星は女性を金星に避難させ、金星から男性を引き抜き軍人にした。火星と金星はそれぞれ同性で子孫を残せる技術を天王星から輸入したが、そのまま戦争が終了した。時は流れ、それぞれの思想の変化で金星は女性のみの星。火星は男性のみの星となった。これについては惑星記号と男女を示すシンボルと偶然に起因するが、それを考察する者は多い」

同性のみの星、とはいえ、火星は男女が発生しえるので、女性が生まれた場合は金星へと移住させるとゆう徹底ぶりである。ちなみに金星は女性しか生まれないので居住問題は発生しない。

「火星に比べ金星は人口が少ないが、コロニー、地表ともに生活圏が存在していた。地表には裕福層が多く住んでおり、今回の事件は金星のみならず、火星や地球も影響がある。このクラスにも金星の出身者がいるだろう。彼女たちのことは心中察する。それでは今日の授業はここまで。明日は機械系の実技を行うが、無重力での実施となる。各自心しておくように。以上だ、解散」

ティターニアは端末からUIの一つを取り外すと、校門を目指して歩きはじめる。足早に下校する者、のんびりと歩む者までを、ティターニアは眺めながら校門に向かう。

「お、ティターニアじゃん」

声をかけられ振り向くとフーガと数人の男子生徒がそこにいた。

「どうしたの?」

「いや、これからゲーセン行くって話になったからついでにどうだ?」

「いいわよ、何で勝負する?」

ティターニアはフーガの誘いにノリノリで答えた。

「ほら、最近レースギアとかゆうレースゲームでたじゃん。アレがメイン」

フーガが言うとティターニアは嬉しそうに答える

「私も気になってたの。良いわよ。後でキーボードスタイルやってもいい?」

ティターニア、じつにゲームをプレイする。いや、むしろゲーマーだ。ちなみにティターニアが言ったキーボードスタイルとはピアノ風の鍵盤を叩く音ゲーである。

「お、いいぞそれくらい。マリノレーシングもやるか?」

「良いわねぇ、今度は負けないからね?」

そんな会話をしていたらすぐに校門に到着したので、門柱に設置されている端末で移動用ポッドを呼び出す。2人のりのポッドでは乗れないので6人乗りの移動用ポッドを手配した。

「火星からの友達?」

ティターニアがフーガに聞く。

「ああ、そうだぞ。コイツらとは長い」

フーガが言うと一人が頭を下げながら言う

「キャンベルと呼んでくれ。こいつとは実は小学校から一緒だ」

「俺はベルグ。こいつとは高校から一緒だった。趣味があったんで、一緒につるんでる」

「ティターニアです、よろしくおねがいします」

笑顔で挨拶をするティターニアに二人は見事に撃ち抜かれたようだった。

「やっぱりティターニアの笑顔に撃ち抜かれる男は多いと思うぞ」

フーガが言うとティターニアは少しキョトンとしながら

「え?そうなの?」

話しているうちに移動用ポッドが到着したので、4人は乗り込み、移動先を伝える。

「コロナワールドまで」

フーガとティターニアはいつもどおりに話しながら到着を待ったが、残り2人はティターニアをジロジロと見ていたり、目線をそらしたりと忙しかった。




「あ、あいてるよ!」

「よし、軽くやってみるか」

お目当てのレースギアに人が居ないのを確認して4人は筐体に乗り込む。

「船体は4種しかないの?あ、アンロックするタイプかぁ」

ティターニアは船体を見比べ、加速力と旋回力が高く、最高速の低い船体を選んだ。フーガは最高速特化型。キャンベルはバランス型、ベルグもバランス型を選んでいた。皆バラバラになるかと思ったが、そうでもないようだ。コースは初めてという事もあってコーナーとストレートのバランスの良い物にした。


レース開始直後は当然ティターニアは加速力を生かしてトップへと躍り出る。一番後ろはフーガだ。1コーナーへ飛び込む時にティターニアが多めの減速をした事もあってキャンベルが差を縮める。ベルグは壁に吸い込まれ、コーナリングスピードはフーガがやはり遅いようだが、さすがの技術を発揮し、ティターニアとの差を縮めた。




ティターニアを先頭にする集団は最終コーナーでの立ち上がりで全てが決まりそうだった。慣れたティターニアは最終コーナーを綺麗にまとめ、加速力を生かして脱出する。キャンベルの後ろに居たフーガはライン取りを考え、最高速が一番伸びる脱出をする。すばやくキャンベルをパスすると、ティターニアを追う。

「あぁー、もう少しでとゆうか並ばれてる!どっち、どっち!?」

二人はほぼ横並び状態でコントロールラインを超えた。リザルトは

「よっしゃぁ!」

フーガが1位。2位にティターニア。差は0.002秒。

「うっそぉ、そんなぁ…」

ティターニアは悔しそうにしていたが、楽しそうだった。

「危なかったぜ」

「逃げ切れると思ったんだけどなぁ……」

ティターニアは筐体から降りながら言う。

「もう一回やる?」

ベルグが聞いてくる。

「どうしようか?」

「個人的にお腹いっぱいだわ、マリノレーシングいくか」

そっちのほうはみんなでワイワイやるようなのではなく、タイムアタックを淡々とする方である。コロニー内を車でレースする。コースはテクニカルコースしか無いので腕が問われる。フーガがトップを、ティターニアは2位。キャンベルが3位、ベルグが4位とゆう結果になった。


「じゃあ私はキーボードスタイルやってくけど、皆はどうする?」

「見てくよ」

フーガが即答したので、奥の方にある音ゲーの集まりのところへ行き、筐体にカードを触れさせる。筐体からノリの良い音声が流れ、曲を選ぶ画面へ移動した。それを見ていた通りすがりが若干話し始める。

「あの曲何か有名曲?」

フーガが少し離れたところで煙草を片手にベルグに聞く。

「ありゃ、11段への卒業試験曲っすよ。10段の壁って言われてるけど、11段は世界大会クラスっだぜ?」

キーは14個あるが、その難しさは段違いだ。

「マリノレーシングで言う超超弩級コースみたいなもん?」

「そんな感じ。そこで世界大会タイムアタックしてるようなもん」

すごいんだなー、と言ってからフーガは動きが止まった。

「指の動きが見えん……」

「あんなもんよ。だけど、あれが最初のチョイスって事は、あれが準備運動だと思う……」

ティターニアが一曲終わる時、ギャラリーが増えつつあった。

「人だかりができ始めたな…」

「そりゃな…」

レースゲームはトップタイムを刻んでても誰も気にしないのに音ゲーって凄いよね。

「今日は調子が良いのか悪いのか、見てるだけだと判らないな」

「俺もあのレベルではないのでさっぱり判らない…いやぁ、フーガが目につけてる女ってやべえヤツ多いな」

キャンベルがジュースを片手に言う。

「そんなにヤバイのか?」

フーガが煙草の灰を灰皿に落としながら言う。

「今選んだ曲13段。今ゲーム最大難易度」

「よく分からん」

フーガが煙を吐きながら言う。

「世界大会でも選ばれる事がない曲。マリノレーシングで言う隠しコース3つ目くらいの難易度。完走すること自体が難しいレベル」

3人はその曲が終わるのをただ待った。人だかりはより多くなり、見物人の多さはフーガが知ってる限りでは最大クラスであった。

「まぁ、あのゲーム自体ライト層も多いから、あの難易度をプレイしている人がお目にかかれる事自体まれってのもあるんだろうな」



ティターニアはゲームを終えた時、振り向いてギャラリーの多さに驚き、すぐにフーガのもとへと向かった。

「ティターニア、すごかったんだな」

「でも今日は調子悪かったわ……と、言うよりもギャラリーの多さに驚いちゃった」

「ランクSで調子悪いってヤバすぎっしょ。そりゃ見物人もでますよ」

4人は満足げにゲームセンターを後にした。


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