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この太陽系で私達は  作者: えるふ
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火星とティターニアと

『間もなく、無重力状態になります。間もなく、無重力状態になります』

船内放送が流れ、徐々に体が軽くなる。いよいよ明日は火星のスイングバイである。ティターニアは気になって校長室まで移動した。

「校長先生います?」

メイドに問いかけると、一礼してメイドは扉の中へと姿を消した。

「是非会いたい、と」

メイドが慌てて戻るなりそう言うのでティターニアは中へと入る。

「心配になって来ちゃった」

ティターニアが言うと校長はモニターに宙域地図を表示した。

「航路付近にウィスカー率いる艦隊が展開しているままだ」

あの提督、まだ何かあるのか。とティターニアは航路と船舶の位置をよく見る。

「ギリギリ行けそうね。どれくらいかしら?」

ティターニアが言うと校長は地図を拡大する。

「計算では50000メートルの差しかない」

校長が未来予想位置を表示し、距離を計算する。

「ニアミスするわけね……天王星政府は何と?」

「呼びかけには応じず、だそうだ」

ティターニアはしばらく考えたあと

「提督に繋がる?」

「呼び出しはできると思うが……」

校長は戸惑いながら回線を開いた。ルイナーの通信士が映し出されたのを確認して校長は言う。

「ウィスカー提督に繋いでくれ。ティターニア君が話したいそうだ』

『今、お休みになられております。使いの者を送りましたので、ご用件はそちらへどうぞ」

通信は一方的に切られてしまった。学園都市船は冥王星コロニーよりも大きく、軌道修正は容易ではない。航路が交差した場合、国際法では大きな船が優先である、と定められている。つまり、学園都市船は最優先となる。

「取り付く島もない、と言う感じだな」

校長はため息混じりに言う。

「でも使いの人ってだれかしら」

ティターニアが言ったタイミングで校長室の扉が開き、メイドが一人の女性にしか見えない軍服を着た人を連れてきた。

「あら、この間の……」

「お久しぶりです、妖精様……その…」

使者がなにか言いにくそうにしているので、ティターニアが話を割る

「火星にも女性がいるのね」

ティターニアが言うと使者は笑みをこぼした。

「ご冗談を。私は立派な男です」

それを聞いてティターニアはマジマジと使者を見る。前回―――32話「ティターニア、火星との交渉に呼ばれる」で散々「女性」と書いたが、実は男である。そもそも火星は女性が住めない星なので、火星所属とゆうだけで男性なのである。

「なんか、その……ごめんなさい」

ティターニアが頭を下げると、使者は歩み寄り……ティターニアの腹部をナイフで刺した。

「そう……それが貴方の答えなのね……」

ティターニアは刺した相手の腕を両手で掴み睨みつける。

「私は……私は死ぬわけには…いかないんです…どうか……」

その光景を見ていたメイドがスカートの中から拳銃を取り出し使者に向ける。

「待って!」

ティターニアが叫ぶ。

「聞かせて、何が…貴方をっそこまで……させるの……?」

ティターニアは痛みに耐えながら声を絞り出す。

「私には息子が居ます。ですが、生まれながら病弱で……ウィスカーの支援金なしではあの子は生きられない……私は逆らえない…」

「その子の名前は?どこの病院?」

ティターニアは薄れゆく意識の中、なんとか情報を聞き出そうとする。

「……ジグ。場所は木星の中央総合病院…」

「それを聞けて安心したわ……」

ティターニアが言うと後ろで控えていたメイドが即座に身柄を確保、ティターニアは刺されたナイフが動かないように注意しながらデスクに向かう。

「天王星政府を……」

ティターニアが言うが校長は流れ出る鮮血に戸惑っていた。

「早く!」

ティターニアに催促され校長は慌てて天王星政府を呼び出す

「ティターニアだけど……聞こえる?」

『なにか穏やかじゃなさそうだね』

流れ出る鮮血が映っているのだろう、相手は心配そうにしていた。

「木星の中央総合病院にジグってゆう男の子がいるはずだから、確認してほしいの。もし、居たら……保護、して…あげ…て」

ティターニアは出血でだんだんと意識が朦朧としてきていた。

「分かった、今すぐ確認する」

通話は保留になったが、数秒も待たないで再連絡がつながった。

「その子なら、3日前に息を引き取ったそうだ」

その言葉に反応したのは使者だった

「そんな筈はない!」

『1周間程前に送金が止まり、生命維持装置が停止された、と報告書には書いてある。現在、霊安室にて眠っているそうだ』

「そんな……私は何の為……なんの為に……」

「君は利用されていたんだ、ウィスカーに……どうだね、もし良かったらこの学園都市に引っ越しては」

校長が言うが、使者は首を横に降った。

「私は……もう戻れない……昔のようにはなれない…なぜなら……私は妖精様を刺したのだから」

ティターニアの意識は使者のその言葉を聞いたのを最後に途絶えてしまう。


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