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この太陽系で私達は  作者: えるふ
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火星人てみんなそうなの?

火星へのスイングバイまで日が短くなってきた。再び校長先生に呼ばれ、ティターニアは校長室に来ていた。

「進路上に軍艦が多数展開している。君ならどうする?」

ティターニアは顎に手を当て考える。

「う~ん、戦略上無意味ですし、我々を襲うことはないんじゃない?」

ティターニアが言うが校長は椅子に深く腰掛け、ため息を一つ。

「もし目論見が外れれば大勢が犠牲になる事になる」

「でも、非武装でしょ、この船」

校長はその言葉を聞いて「確かに」と小さく呟いた。

「非武装の船でできることなんて、サイレントランくらいじゃない」

サイレントラン。普段宇宙船は翼のように大きく広げたラジエーターによって船内で発生した熱を外へ逃している。それを一時的に止める方法である。危険であるが、熱源の発生を抑えられ、レーダーから消え、ロックオンを不可能にする。

「サイレントランか……できれば使いたくない。大勢に負担をかける事になる」

「なら、外交で何とかしませんと」

ティターニアが言うと校長はしばらく考えた後、通信を開いた。

「展開中の艦隊司令に繋いでくれ。ああ、ティターニア君も一緒だ」

通信が途中でスピーカーに切り替わる音が聞こえた。やれやれ、またか。

『ティターニア君、お初にお目にかかる。第一艦隊ルイナー級バトルクルーザー艦長のウィスカーだ。以後お見知りおきを。早速だが、貴官らを通過させるつもりだが、ひとつ条件がある』

ティターニアは嫌な予感がしながらも次の言葉を待った。

『ティターニア君のスキャンデータをよこして欲しい』

ティターニアはその瞬間察した。火星は徴兵制である。

「提督も女性の裸に興味が?」

校長が言うのも無理もない。艦隊司令も冗談だと受け取り笑って答えた。

『はっはっは、まさか。私は男のほうが好きでね。私が興味を持っているのはその不死性だ』

ティターニアはそれを聞いて反射的に答えた。

「天王星はまだデータを持ってるはずです。天王星とは交友関係にあったはず。技術提携はできないのですか?」

ティターニアの言葉に艦隊司令は

『確かに技術提携はできたし、再現を試みた。だが、全て失敗に終わってるのだよ。君が生まれたのは何かの偶然か奇跡か……実際に君のデータを見るまでは納得がいかない』

少しイライラした言葉遣いであった。ティターニアはそれに冷静に答える。

「私の体のスキャンデータを作るのは構いませんが、結果は同じだと思います」

ティターニアの言うことは最もだった。制作とは準備、過程、結果、その3つが繋がってなければならない。結果と準備だけのデータでは不十分である。しかも生データではなく、経年データである。生まれてから200年以上も生活している。しかも生まれた1.2G環境だけでなく、無重力状態で5年。0.9G環境で100年は生活している。骨格や筋力にも大きく影響しているだろう。もちろん、細胞レベルでは変わっていないはずなので、そこは問題ないかもしれないが

『見てみなければ判らないだろ!』

艦隊司令の怒鳴り声にティターニアは思わず首が縮んだ。

「判りました。スキャンデータがあれば通してくれるのですね?」

「まったく……すまない、スキャナーを隣の部屋に用意してほしい」

校長が内線でメイドをよび、スキャナーを用意させる。メイドから元気のいい声が聞こえたので校長はティターニアの背中に触れ、

「すまない、本来なら断るべきなのだが……」

「いつもの事です」

ティターニアは笑顔で校長室を後にして客室に入る。

「すみません、医療データとの事ですので服を脱いでもらっていいですか」

メイドが申し訳なさそうに言うのでティターニアは了承し服を脱ぎ、机の上に置く。

「靴も?」

ティターニアが言うとメイドは装置を操作し画面を見た後

「そうですね、靴下も脱いでください」

そう言われたのでティターニアは生まれたままの姿になり、スキャナーの横に立つ。

「ではこちらへどうぞ」

スキャナーの上に立つとリングが何度か往復してスキャンは終わる。

「これで終わりです、お疲れ様でした」

ティターニアは下着を身に着け少し考えすぐに制服に身を包んだ。

「あの、校長先生」

ティターニアが校長室のドアを開けると、通話はまだしていたらしく、艦隊司令の声が聞こえた。

『これで我軍は死の恐怖から開放される、ふ、ふ、ふははは』

ちょうど笑い声が聞こえたあたりで通話が切れた。

「何かね」

「お酒頂戴?今回はとびっきりのが良いな」

ティターニアの言葉に何か言おうとしたのか、言葉を飲み込んでいる校長の動きに首を傾げるティターニア。

「そうだな、ローヤルコンティでよければ」

「えぇ、それ普通に買えるじゃん」

「ではこの山廃大吟醸の日本酒でもどうかね」

「いいわね、それを頂こうかしら」

ティターニアは一升瓶を抱えながら部屋を出ようとする。

「私、プライベートもないから、こうゆうのは慣れてるの。校長先生が気に病む事はないわよ」

ティターニアは校長の言葉を待たずに部屋を出て扉を閉めた。


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