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この太陽系で私達は  作者: えるふ
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宅飲み

ティターニアはお酒を飲み交わすべく、フーガの家に来ていた。サイスも一緒だ。

「いやー、宅飲みを一緒にするなんて久々だから気合い入れて持ってきちゃった」

ティターニアはネコを片手に箱でお酒を持ち込んでいた。

「ティターニア、これは気合い入れすぎでわ……」

フーガが箱の中身を取り出しながら言う。

「私はあまり飲めませんの……見てるだけになるけれど、本当によろしくて?」

サイスが恐縮そうに言うのでティターニアは

「大丈夫大丈夫、こうゆうのは雰囲気が大事だから」

そう言ってサイスにノンアルコールアマレットを渡す。

「変なところで変な気が使えるティターニアだからな……」

「なにそれ……とりあえず、乾杯はウォッカで?」

ティターニアが言うとフーガは手を突き出し顔をそむけ

「いや、ウォッカはちょっと……せめて日本酒にしてほしい」

フーガに拒否されたので、仕方なくウォッカは自分のグラスに注ぎ、フーガのグラスには日本酒を注ぐ。サイスからノンアルコールアマレットを受け取るとサイスのグラスにそれを注ぎ、ミルクで割る。

「じゃあ第一回、宅飲みを記念して、乾杯ーっ!」

ティターニアが言うと二人は坏を掲げる

「乾杯」

「乾杯ですわ」

ティターニアは一気に飲み干すと、すぐに次をグラスに注ぎ始める。

「相変わらず、ペース良いなぁ」

フーガが感心したように言うが、フーガも決して悪いペースではなかった。ティターニアが良すぎるだけである。フーガは2杯目の日本酒を飲むべく、瓶を手に取りグラスに注ぐ。

「テキーラもあるよ?」

ティターニアが言うとフーガは首を横に振る。

「いや、勘弁してくれ……酒は日本酒と焼酎で十分だ…」

フーガが言うとサイスは疑問に思ったことを言う。

「ところで、フーガが好きなお酒って、日本酒に焼酎?ですのね。どちらも天王星の名産品ですけれど、なぜ火星にいながらも好きと言えるくらい飲まれてますの?」

「あぁ、それな。それはな、火星には時折各惑星の名産品が集まる日があってね。俺のときはたまたま成人したタイミングで天王星フェアやってる最中だったから、その時飲んだ味が忘れられなくてね。以降は取り寄せで飲んでたんだよ」

グラスを傾けながらフーガは言う。火星と天王星は古くから交流があり、いろいろな物資交換をしていた。その中でも特に好評だったのが、日本酒に焼酎だった。大変美味なお酒は当時の外交官を唸らせた。すでに代替アルコールが蔓延していたので、その味の深みに感銘を受け、販売に乗り切った。火星での日本酒は好評で、瞬く間にその噂が広がり、バーや飲み屋での取扱も即座に開始された。

「ちなみに、そのPRに使われたキャラクターは私だったりするのよ」

ティターニアが何杯目か判らないウォッカをグラスに注いだ。もう瓶を開けてしまいそうな勢いだ。

「お前だったのか……え、まじで?ティターニアなの?」

フーガはお酒が回って来たのか、反応が怪しくなっていた。そろそろ10杯目だろうか。そのペースで飲んだら普通はこうなる。

「そうよ、ほら、これがそのPRキャラクターだけど……」

ティターニアは端末に表示し、自身の顔の横に並べる。

「あ、本当だなぁ」

フーガが間抜けな顔をしながら言う。そろそろ自我を保つのが厳しいのだろう。

「フーガは良く付き合ってくれますわね……ずいぶん差があるように見受けられますけど?」

サイスが心配そうに言う。

「あ、大丈夫大丈夫。潰しても大丈夫なようにフーガ君の家を選んだから」

それをティターニアが言った頃にはフーガはフラフラしていたので、ティターニアがウォッカをパイナップルジュースで割り、それをフーガに渡す。

「ん?パイナップルジュース?またなんで?」

一口飲み、フーガが首をかしげるが、すぐに飲み干し、酔い止め代わりに置いてあるラムネを食べていた。

「ティターニア?貴方結構な事をしますのね」

「うふふ、こう見えて飲み屋で絡まれた相手を何人も潰してきたからね」

ティターニアは少し自慢気に言うが、そもそもザルのティターニア相手に何をどう飲み比べても勝てっこないのである。絡んだ相手が悪かった、としか――――。



「頭がグルグルする……う~ん」

30分後、フーガはティターニアの手によって飲みつぶれてしまった。それに対しガッツポーズをしながら、何本目か判らない瓶を開ける。

「ティターニア。まだ飲みますの?」

「まだ飲み足りないし。サイスは気にしなくても良いのよ?」

サイスが気になって声をかけたが、ティターニアのペースが落ちることはなかった。


結局ティターニアは持ってきた瓶、フーガ用意した瓶、その殆どを一人で飲みきり、天井を眺めていた。

「私も酔いつぶれたいなー」

ティターニアがボソリと呟いた。

「あら、それはどうして?」

「そっちの方が美味しく飲めそうじゃない?」

ティターニアが言うが、サイスは良くわからない顔をしていた。

「いつまででも飲めるほうが、私は美味しそうな感じしますけれど?」

サイスの言葉にティターニアは少しだけ間を置き答える。

「……上限がある方が、ゆっくり味わって飲むと思うのだけど」

「際限なくても、そう飲めば良いのでは?」

サイスに言われティターニアは

「際限ないって自覚したのが運の尽きってね。もう、後には戻れない……」

空き瓶を見ながら言う。夜は更けていた。


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