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この太陽系で私達は  作者: えるふ
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第二ラウンド

ティターニアは寝ぼけ眼で服を脱ぎシャワールームに入る。

「入ってましてよ」

しばらく時が止まり、ティターニアの頭が覚醒しはじめる。

「え、あれ、えっと?」

ティターニアが戸惑っていると、サイスはシャワーを止め、腰に手を当て言う。

「昨日、遅くまで飲んでて治安的に危ないから泊まっていく、と言ったのを覚えてらっしゃらない?」

半分しか覚醒していない頭をフル回転させて昨日を思い出そうとする。

「あ、そう言えばお泊りするって言ったっけ……」

ティターニアは頭を抱えながらシャワールームのドアを閉めようとして、サイスが手を取り止める。

「お待ちになって。せっかくですもの、一緒にいかが?」

サイスの申し出に少し戸惑いながらも了承した。

「2人だとちょっと狭いわね……」

「これくらいが良いんですわよ」

二人はほぼ密着するような形でシャワーを浴びる。寝起きの体に温かいお湯が心地良い。

「ティターニア、貴方……朝が弱いのですわね?」

「そこまで弱いつもりはないんだけどなぁ」

ティターニアはサイスに言われ首を捻りながら答える。

「まだ、寝ぼけてますわよね?」

「そんなこと無いよ?」

「じゃあなぜ私の頭をクシャクシャにしてますの?」

ティターニアは無意識にサイスの頭をワシャワシャしていた。

「あ……ごめん…!」

「別に構いませんわ、ここはシャワールームですもの」

サイスが言うが、ティターニアは申し訳なく思い、クシャクシャになった髪を梳いていく。

「あら、お上手」

サイスがその手慣れた手付きに鏡を見ながら答える。

「手櫛なら任せて。冥王星時代に良くやってたから」

ティターニアが言うとサイスは驚いた。まさか他人の髪を触ったことがあるとは。

「あら、他人の髪に触れたことがあるなんて意外ですわ」

「冥王星はやることなくて暇でね、トレッドミルでずっと走ってるわけでもないし、気がついたら髪型交換とかして遊んでたわ」

サイスはそれを聞いてティターニアの髪を手に乗せる。白く透き通った髪。体を見ると、温度変化で赤みを帯びていた。

「髪も肌も白くて羨ましいですわ」

サイスの言葉にティターニアは笑みをこぼしながら

「突然どうしたの?」

「いえ、その…もう少し自分も白ければ、と思うことがありましてよ?」

普通ならティターニアは苦労話をするところだが、相手はサイスである。少し言葉を選ぶ。

「そうね、私ほど肌が白い人はいないでしょうね。でも、私はサイスくらいの肌が好き」

「お互いがお互いを羨ましがる、なんだか、不思議な感じですわ」

ティターニアの言葉にサイスが言う。ティターニアは笑いながら

「ふふっ、隣の芝生は青いってね」

「なんですの?それ」

「地球時代のことわざでね、隣の家の芝生のほうが綺麗に見えるって意味よ。相手も同じ様に自分を見てるってね」

ティターニアはシャワーを止めるとサイスの額に唇を触れさせる。

「貴方も、経験があるはずよ……?」

そう言うとティターニアはシャワールームを出て水滴をタオルで拭き取りにかかる。サイスはしばらくポカンとしていたが、苦笑いしながらティターニアの隣に立つ。

「ティターニア、肌についての話だけど……苦労話でも聞かされるかと思いましたわ」

「やっぱり分かってたか。言おうと思ったんだけど、やめたわ。それを望んでる気がしてね」

ティターニアはサイスの額をコツコツと指先でつつきながら言う。

「なんだか、嫌な気分ですわ。見透かされてるみたいで」

サイスの拗ねた顔も悪くないな、とティターニアは思いながら下着を身につける。

「あ、そう言えば、今日の授業っていつもと時間違うんでしたわよね?」

サイスが言うので服に取り付けてある端末を起動し、時間を確認してみる。

「そうね、午前休みね」

ティターニアが端末から手を離し制服を着ようとして、サイスがそれを制した。

「もしよろしければ、一回でいいので……その…」

「ごめんね、気分じゃないの」

ティターニアはそう言いながらも身に着けたばかりの下着を脱ぐ。

「素直じゃないのね」

「こればっかりは素直になりたくないかなー」


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