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この太陽系で私達は  作者: えるふ
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基本授業

ティターニアは授業の内容をペン入れしながら聞く。

「つまり、この時の圧力容器の圧力は、簡単に言えばダイナマイトくらいの威力にまで跳ね上がることとなる。そのため、この容器を開放する際は注意が必要だが、この容器と真空との移動に、どうすればいいか、分かるかな?」

教員が聞くと、生徒がこう答えた

「ゆっくり開けたらどうでしょう?」

「いい発想だね。では、その容器の中に別の誰かが存在した場合、どう開放するかね?」

ティターニアはピョコンと耳を反応させながら言う。

「中間部屋……中間部屋をおいて、開放可能な空間と密閉空間を両立できる……?」

ティターニアの解答に教員は頷く。

「その通り。しかし1つでは空気の損失も大きいので通常では2つ中間部屋を設けるのが基本となっており、未使用状態では半真空状態を維持している。この状態で生きていける人間は……ティターニア君。きっと君ひとりだろう」

ティターニアはそれを聞いて怯えた様子で周りを見渡したが、生徒は特に気にした様子はなかった。

「その中間部屋の空気を抜いたり加圧したりすることで出入りができるのは体感的にもわかっていると思うが、この中間部屋の外への扉が閉まらない限り加圧はされず、加圧されない限り船内への扉も開かない。あと、中間部屋では基本火気厳禁である。加圧されたばかりの空気は酸素が多く、火災の危険が比較的高いので、電気製品の取り扱いも注意が必要だ。一度火災が起きればどうなるか分かるね?」

その言葉に反応したのはサイスだった。

「あの、加圧中という事は内側の扉が開きますわよね?助けられませんの?」

サイスの言葉を待っていたかのように教員は指を指した。

「そう、かつての事故も、これからも、その危険性は同じく存在する。なぜなら、船内からの扉は外開きだ。これは昔からの名残だが、これが、以前起きた事故に繋がったが、根本解決には至っていない」

教員は新聞記事を黒板に表示しながら言葉を繋げる。

「外開き、つまり、中間部屋からは内開きとなる。一度火災が起きれば内圧は飛躍的に上がり、扉は開けられなくなる。酸素が消費されるから、酸素は供給される。人が中にいるから炭酸ガスを放出させるわけにもいかない。そして、ガリソン飛行士は酸素の供給を経ち、外への扉を緊急開放させるに至る」

その後、別の扉から船外活動服で移動し、くすぶっている火を消すため扉を閉め、炭酸ガスで室内を満たし、接触不良であった器具を引き剥がし、宇宙空間へ投げ捨てたのであった。まるで忌々しい過去を振り払うかのように―――。まるで怒りをぶつけるかのように―――。


「以上が、事故の詳細である。各自、火気には十分に注意するように。人名優先とは言うが、一人の人間のために全員を危険に晒すわけにはいかない。その事を十分に注意するように。以上だ」

教員がそう締めくくり授業は終わった。ティターニアは少し考えゲーセンに行く気分でもなく、かといって家でゲームと言う気分でもない。酒を飲みたいかと言われると、首をかしげる。

「あら、ティターニア。何かお悩み?」

サイスが隣の椅子に座りながら声をかけてきた。

「ゲームセンターに行く気分じゃないし、そもそもゲームしたい気分じゃないんだけど、お酒って気分でもないのよね……。どうしたものか…と思ってね」

ティターニアが言うのでサイスは耳に口を寄せながら

「なら、お茶にしません?とっておきがありますの」

背筋を撫でられたかのような感覚に痺れながら

「じゃあお願いしようかしら」

と応えるティターニアであった。


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