校長先生とティターニア
学園都市船はこのあと火星をスイングバイする事になる。その事に対し、ティターニアは再び校長室に呼び出されていた。
「つまり、また顔を出せと」
「その通り。しかも今回の相手は国防省長官や将軍ではなく、国王になる。そのつもりで対応して欲しい。勿論、前回みたいなことがないように願いたい。前回は何もなかったから良いが……」
前回。そう言えば前回顔を出したときは殴られた跡がくっきりと残っている状態だった。
「じゃあ今度来るときは見せてもらうだけじゃなくて、イクまでしようかしら」
「ティターニア君」
ティターニアが言うと即座に校長先生が制する。
「だって、私……他国の政治に首を突っ込みたくないんですよ……」
ティターニアが本音を言う。校長先生はため息を吐きながら椅子から立ち上がる。
「もう少し自分の立場を理解したらどうかね」
「私は政治家じゃない、政治の事は判らない!そもそも字が読み書きできるようになったのも最近の事だし、難しい話はできないわ!」
ティターニアは少し感情を爆発させ気味に言う。校長先生はそんなティターニアの手を取り、優しく言う。
「大丈夫、みんな同じだ……。ただ、君のことをひと目みたい一心なだけだ。君は聞いてるだけでいい」
校長先生のその台詞を聞いてティターニアは目線をそらしながら
「それならホログラムで良いじゃないですか」
ティターニアが言うと校長先生はティターニアの腰に手をあてながら言う。
「君は自分自身の価値をもう少し理解したほうが良い」
それを言うと校長先生は机の前まで戻り、地図を開く。
「現在の位置はここだ。次のスイングバイまではしばらくある。その時にまたよろしく頼みたい。何、難しいことじゃない。何なら立っているだけでも構わない」
校長先生がそう言うとウォッカの瓶を取り出す。
「校長?」
「どうかね、一杯」
ティターニアは少し考えた後、杯を受け取り一杯口に含む。
「瓶ごと」
ティターニアの言葉に校長先生の動きが止まる。
「瓶ごとくれたら考えるわ」
「そうこなくては」
校長先生は瓶を手渡すとその場で瓶に口をつけ直接飲み干す。
「見事な飲みっぷりだね、ティターニア君」
「ええ、どうも有難う。丁度喉が乾いてたの。じゃあ、またこんどにでも」
ティターニアが去った後、校長先生はため息を吐きながら椅子に腰を下ろした。
「あれをあのペースで飲んで問題ないとは……そうとうなザルと見える」




