火星クーデターを止める
「ティターニア君、待っていた……が、その顔はどうしたのかね?」
校長先生はため息混じりに聞く。
「いえね、お宅のメイドにセクハラしたら殴られちゃって」
ティターニアは素直に応えると校長先生は頭を抱えた。
「大事な国際問題に向かう人間が問題を起こした直後などと言うことが許されるとでも思っているのかい?」
校長先生の問いかけにティターニアは即答する。
「勿論!」
校長先生は聞こえるようにため息を吐くと机に向かい、通信を開く。
「提督、ティターニア君……妖精をつれてきた。要件を」
校長先生が言うとモニターに提督と呼ばれた相手が映し出される。
『率直に言おう、ティターニア君。ぜひ、我が艦に招待したい。勿論、そちらの船長も同様に招きたい』
提督が言うと間髪入れずティターニアが言う。
「その理由を求めます」
提督はそれを聞いて顎に手を当てながら言う。
『我軍の力強さを見ていただければ、地球軍などひれ伏すのは余裕だと感じますよ』
ティターニアは机に歩み寄りながら言う。
「どうしてあなた達軍人は武力を見せびらかそうとするんですか?」
ティターニアの言葉に提督は言う。
『力に対抗できるのは力だけです』
ティターニアは机に手を置きながら聞き返す。
「言論は暴力にまさる。そんな言葉をご存知?武力に勝るのは武力だけじゃなくってよ」
相手はそれを聞いて何か言おうとして言葉を飲み込む。それを見てティターニアは続ける。
「国民にどう説明するおつもりですか?戦争は無益ですよ」
ティターニアが言うと提督は背もたれに身を預けながら言う。
『それを考えるのは政治家です。私じゃない』
「なるほど、つまり貴方は国賊なわけですね」
ティターニアが言うと提督はさすがに穏やかではない顔をする。
「軍人とは本来国の組織なのに国のことを思ってない。しかも武力行使する。貴方のことを分かりやすい言葉にすると、国賊かテロリストのどちらかです」
提督はそれを聞いて流石に口を開いた。
『例えそうであったとしても、我々を止める艦隊は地球にしかないのです。我軍の思惑通りに事が運ぶでしょう』
ティターニアは端末を操作し、天王星政府を呼び出す。
「火星軍がクーデターを起こしております、対応をお願いします」
『善処しよう』
それを聞いて、提督は慌てる。
『天王星が割り込んでくるなんて聞いてない』
「存じないなら言わせてもらいます。私、ティターニアは妖精として、つまり、天王星代表として、この会話に参加しております。妖精と言う肩書きは何も見た目だけではありません」
これだけ大見栄きっても頬が殴られて赤くなっているのである。
「では地球軍に、友軍として天王星が参加する、と伝えておこう」
校長先生がそう言うと提督は少し間を置き
「分かった、考える時間が欲しい」
そう言うと、火星軍との通信は切れた。
「一段落しそうですね。問題が火星側にあって良かったです」
ティターニアは嬉しそうにそのまま天井付近まで飛んでいく。
「ティターニア君、今回は礼を言おう。お礼は何が良いかな?」
ティターニアは少し考え
「ジンを」
校長先生は笑顔で「分かった」と伝えるとティターニアを目で追う。
「校長先生のエッチ」
ティターニアはいたずらっ子の笑みを浮かべながらスカートを押さえる。
「ティターニア君、火遊びはほどほどにしなさい」
校長先生のその言葉を聞いてティターニアは嬉しそうに校長室を後にした。




