ティターニア 告白す
ティターニアは乱れた衣服を戻しながら姿見の前に立つ。
「サイスも困ったものね」
ティターニアは言いながら三面鏡の前に座り髪を整える。今日は気分を変えて首の後で結う。
「サイスー、起きてー」
サイスを揺さぶりながら言う。昨日。襲われたわけだが、そのまま相手が眠ってしまったので、自分もそのまま寝たのだった。
「ん……?ティターニア……?はっ、私ったらはしたない事を……しませんでしたか?」
おぼろげながら覚えているようだ。だがはっきり思い出せないようであった。
「昨日はお盛んでしたわよ」
そう言うと、サイスは顔を赤くして
「申し訳…ありませんでしたわ…」
と、素直に頭を下げた。
「まぁ、良いけどね。今、ルナと並走してるらしいから、あっちに行けるみたいよ?」
「並走?追い越すのではなかったのかしら?」
サイスが疑問に思っていることを言うと
「なんか、ニュースによると、しばらく並走して、お互いの交流を図る、だそうで」
ティターニアは端末でその記事を出しながら言う。そこには確かに並走する、と書かれている。
「向こうの校長先生は物好きかもしれませんわね」
サイスがそう言うとティターニアは
「私を見たいってだけで私を呼び出すくらいだから、かなりのね」
ため息混じりに応えた。
「さて、行けると分かったのだし、行ってみません?」
「そうね、フーガ君も誘おうか」
二人は早速フーガに連絡を入れ連絡艇発着場に向かう。
「ここから遠いのかしら?」
サイスは言いながら地図を見る。見ると結構距離があるので、高速用移動ポッドを呼び出し、フーガがそこに到着するのを待つ。
「悪い、待たせたな」
「かまいませんわ。では、参りましょう」
サイスが最初に乗り込み、フーガに続いてティターニアが乗り込む。乗り込むとすぐに天井付近の扉にポッドが入り、高速巡航を開始する。
「10分くらいかしら?」
ティターニアの問に答えたのはポッドの人工音声だった。
『5分ほどで到着します』
「じゃあ、アバのヴーレ・ヴーを流してくれるかしら」
『再生には追加料金が必要です。支払う方は端末で触れて下さい』
ティターニアは迷うことなく装置に端末を触れさせる。間もなくして曲が再生される。
「ティターニアの事だからメタルかと思いましたわ」
「だってこの間不評だったじゃない」
「顔に似合わないってだけだぞ」
「それを不評って言うんじゃないの?」
と、会話しながら曲を楽しみ、流れる風景を眺めていた。ちなみに蛇足だが、このヴーレ・ヴー、最初ずっとフレボと聞こえてました。
『到着しました。お疲れ様でした』
高速用ポッドは通常ポッドと台詞が違うようだ。
「えー、只今の待ち時間は130分ですー」
離発着場の受付の前で係員が拡声器でお知らせしてくれる。
「2時間は長いな」
フーガが不満の声をもらす。
「喫茶店がターミナルにあるみたいですわ。そこでどうかしら?」
「いいわね、そうしましょう」
喫茶店は繁盛していたが空席が何席かあったので、そこに座る。3人は珈琲を頼み、ゆっくりと飲みながら窓から見える2番艦ルナを眺めていた。
「そう言えば時計はグリニッジ標準時って言う、地球時代の時計を使ってるのに、カレンダーは国ごとに違うのはなぜかしら」
ティターニアは外を眺めながら言う。
「カレンダーは地球が基準ですもの。国が違えばそのカレンダーは意味をなさなくなってしまいますわ」
サイスは人差し指で天井を挿しながら言う。
「いや、それだと時計を使ってる理由にならんだろ。1日が24時間なのは地球時代の名残だし」
フーガが言う。
「チグハグなところが、時代を感じますわね」
サイスは少し納得して珈琲を口にする。
「間もなく連絡艇が発進します、お乗りの方はお急ぎ下さいー」
放送が聞こえたので3人は席を立ち、乗り場に急ぐ。
「乗れますわよね?良かったですわ」
「ぎりぎりだったわね」
サイスとティターニアは胸を撫で下ろしながら言う。連絡艇の椅子に座り、シートベルトを締めると、間もなくして連絡艇は発進。シートに加速Gを感じる。
「結構加速は強めですわね……」
少し苦しそうにしているサイスにティターニアは
「え?宇宙船ってこんなもんじゃない?」
涼しそうにしているティターニアとは対照的であった。フーガもあまり楽そうではなかった。
『間もなく寄港します、ご利用、有難うございました』
加速だけではなく、減速も派手で、体が前につんのめり、シートベルトに体を押し付けられる。
「この船長さんは旅客経験が浅いわね」
ティターニアが言うと、フーガも納得していた。
「そうだろうよ、このGに耐えれるのは天王星人か、船長だけだろうよ」
「あの、私……気分が悪くて…」
無重力に酔ったわけではない。加減速のGで体調不良を訴えていた。
「じゃあすぐにホテルにでも」
港の近くにあるホテルに入り、サイスをベッドに寝かせる。するとサイスは疲れからか、すぐに寝息をたてはじめる。フーガはテレビでも観ようかとモニターの電源を入れ、慌てて電源を消した。
「今って何時だ?」
フーガは慌てるように時計を見る。
『13時52分』
「まさかこんな真っ昼間からエッチなテレビやってるとは思わなかったわ」
ティターニアも言いながら食堂のご飯を確認する。メニュー表がテーブルに置いてあったからだ。紙媒体を使っているとは珍しい限りである。
「あ、でも1級品の良いご飯が出るみたいだよ?」
ティターニアが言うとフーガは考える
「港近くで1泊あたりの金額が安くて、でも料理は豪華で、でかいベッドがある?もしかしなくてもここはそっちのホテルなのでは?」
フーガは疲れたような顔をしていた。
「あはは、反対隣のホテルにしとけば良かったね」
ティターニアは言いながら服を脱ぐ。
「え、おまっ」
「しっ、静かにして……起きちゃう…」
「ティターニア……」
フーガは上半身裸のティターニアを抱き寄せ
「いいのか?」
「女の子にそれを言わせるの?」
「……俺と付き合ってくれって言っても断り続けてたくせに…」
「しょうがないなぁ……フーガ君。私と、その……付き合ってくれる…かしら?」
「もとより、そのつもりだ」
二人は口づけを交わしながらもう一つのベッドに倒れ込む。




