無重力4日目:スイングバイ当日
無重力4日目。スイングバイ当日。今日は自宅待機が命じられており、街としての機能も停止している。
「外出禁止ではないけどって書いてあるわね」
自宅待機を命ずる。ただし外出禁止ではない、と書かれており、詳しく見てみると許可制のようだ。
「スイングバイ中は安全のため、だ、そうですわ」
インターホン越しにサイスの声が聞こえる。
「まぁ、そうゆうわけだから入れてくれ、起きてるだろ?」
つづけてフーガの声が聞こえる。ティターニアはため息混じりに扉を開ける。
「許可とってまでして外出する?」
ティターニアの台詞にフーガは即答する
「暇だからな」
それにつられてサイスも言う。
「暇ですもの」
サイスは言いながら部屋に入っていき、空中を泳いでいる鶏を抱きしめる。
「この子、可愛いですわね」
サイスは顔をまじまじと見つめながら言う。
「デフォルメされてるからだと思うよ」
ティターニアはフーガを招き入れ扉を閉める。ティターニアは空中を泳ぐように器用に動きベッドの中に入る。
「まぁ、あれだ。俺も無重力状態に慣れないといけないからな」
真ん中に移動したかったのだろう、中央のテーブルにスネをぶつけ、その反動で壁に背中からぶつかった。
「痛ってぇ!あぁあぁあぁあ」
フーガは足を抱えもだえていた。ティターニアはたまたま目の前にいた鳥のヌイグルミを投げつける
「痛っ、な、なんだこのブサイクは……」
頭に当たって失速しながら跳ね返っている鳥のヌイグルミを掴み、顔を見る。
「ブサイクとは失礼な。モアってゆう鳥だよ」
ティターニアはうなぎのヌイグルミに抱きつきながら言う。
「モア……ロボットなら見たことあるけど、鳥の名前だったのか……」
フーガはヌイグルミを回転させたりジロジロと見る。
「地球にかつて存在していた鳥。もう絶滅してしまったけどね」
「むしろ絶滅してない動物なんているのか?大半が人工生産で再現したやつらじゃないか」
フーガはモアのヌイグルミを放り投げながら言う。それは壁に跳ね返ってティターニアの抱いているウナギのヌイグルミにぶつかり、ちょうど真上で失速していた。
「痛……まぁ、絶滅種なんて美味しいか毛皮や羽に価値があるか、開発が進んだか、外来種が来たってのがほとんどじゃない。美味しいは生き残れないのよ」
ティターニアはウナギのヌイグルミを放り投げ、空中に漂っているモアのヌイグルミにぶつける。ぶつかったヌイグルミ同士は斜めに弾かれティターニアのもとに帰ってこなかった。
「とりあえず何かしようぜ、おわっ、行くな、そっちじゃないっ、戻れぇ!」
フーガは再び真ん中を目指そうと移動をしたのだが、通り過ぎ、ティターニアにぶつかってしまう。
「きゃっ、もう……いつも乱暴なんだから…」
ティターニアは言いながら足を絡め、肩を掴む。サイスはその光景を見て
「ぜひ、そのまま行為に至って欲しいですわ」
目を輝かせていた。ティターニアは目を細め
「性交に興味があるなんて、金星人は変わってるわね」
「いや、俺も興味あるぞ」
ティターニアの台詞に即答するフーガ。
「じゃあする?」
ティターニアは下着に手をかけるとフーガは慌ててそれを止める
「いやいやいや、待て待て待て。人前じゃ嫌だし無重力でも嫌だ」
ティターニアはそれを聞いて下着に手をかけていた手を止める。
「じゃあ今度二人っきりのときに……しないわよ!サイス、何させようとしてるのよ!」
ティターニアは我に返りフーガを蹴り飛ばし、天井へ放り投げると痛そうにしていた。
「あら、残念。もう少しで3人が楽しめるかと思いましたのに」
サイスは少し残念そうにティターニアのそばに移動する。
「そう言えばサイスは金星育ちなのに無重力大丈夫なんだね」
ティターニアは疑問に思っていたことを言う。家を飛び出した、と聞いたが、金星のコロニーはちゃんと重力がある。
「地球の無重力試験棟でしばらくバイトをしてましてよ。最初はひどかったですわよ?」
ティターニアはそれを聞きながらベッド脇に固定してある端末を操作して音楽を流す。サイスはそれを聞いてしかめっ面になる。
「何ですの、この音の洪水は……」
「スピードコアはだめだったか……じゃあスピードメタルに変えるか」
ティターニアは呟きながらドラゴンフォースのCDをダウンロードして再生する。ヒューマンランペイジはいいぞ。
「ティターニアって見た目によらず激しい曲好きだよな……」
フーガも首を傾げていた。
「フーガは何をお聞きに?」
「俺はバグルスかなぁ。あとスパイエアとかバックストリートボーイズとか」
フーガは自身の端末の履歴を見ながら言う。
「フーガ君は見た目のよらず大人しい曲聞いてるのね」
ティターニアに言われフーガは口を尖らせる。
「ポップはともかく、ロックを大人しい曲って言うの、おかしくないか?」
「私もロックは激しい曲に入れていいと思いますの」
フーガとサイスは言うが、ティターニアは首を傾げていた。
「ロックが激しい?う~ん」
ティターニアが首を傾げているあいだにサイスは自身の端末からギフト送信して曲を変える。
「アバのダンシングクイーンは誰でも知ってるいい曲よね」
ティターニアは素直にそう言い、曲を楽しんでいた。
「ダンシングクイーンは名曲だと思うが、少し古すぎやしないか?」
フーガは言うがよく考えたら自分が聞いてる曲も古いのである。
「貴方も大概よね」
ティターニアはため息混じりに言う。
「言われてみればそうだ」
フーガは素直に認め、曲をミュージックサウンズベターウィズユーに変える。
「まったく、人の曲リストに遠慮もなく送ってきて……」
ティターニアはベッド脇にいるサイスを見ながら言う。
「私が何か?」
「最初にした人が悪いって事で」
ティターニアは首を傾げていたサイスを抱き寄せると脇をくすぐる。
「ふふ、ふぁ、ははっ、だ、だめですわっ」
サイスは身をよじって逃げようとするがティターニアは足を絡めそれを防ぐ。フーガは近くを泳ぐように漂っているヌイグルミに気を取られ二人に激突してしまう。
「ぐはっ、さすがにその勢いはお腹に響くから減速してきてほしいな」
ティターニアは少し苦しそうにしていたが、ソレ以上どこかにぶつかっても困るのでサイス越しにフーガの肩を掴む。
「す、すまん……」
「あの、その…私の腰に暖かくて適度に硬い物が……」
サイスが困惑している。
「すまん、さっきからそんな感じで制御できてないんだ……」
か、と思ってサイスの顔を見ると輝かせていた。
「サイス……なんで嬉しそうなの…」
ティターニアが困惑しながら聞く。
「私、女性が確かに好きですが、その、男性も同じくらい好きでしてよ」
ティターニアは少しだけ考え
「二人はお似合いね」
そう言う。
「私は構いませんわ。私は備えがありましてよ」
サイスは嬉しそうだったがフーガは首を横に振った。
「いや、さすがにこんなにちっこい女を抱く気にはならねぇ……」
フーガが言うのも無理はない。
「いえ、じゃあ私がリードしますわ」
サイス、人の話を聞いていないのである。
「お、おい、待て!」
ティターニアが手を離すとサイスはフーガを引っ張り部屋を出ていった。
「私としても、あの二人がくっついてくれた方が嬉しいかな」
ティターニアは誰もいない部屋で呟いた。その呟きは空調の音に流され消えていった。




