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この太陽系で私達は  作者: えるふ
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はじめての無重力日

ティターニアは不思議な感覚で目が覚めた。目を開けるとヌイグルミ達が部屋の中を泳いでいた。

「そう言えば今日は無重力日だったわね」

無重力と予め聞いていたのでベッドに体を固定していたが、案外寝起きだと、忘れている物である。ティターニアはあくびをしながらベッドから降りる。

「う~ん、まさか夜中の間に無重力になってるとは……」

ティターニアは部屋の中を飛ぶように移動しながら言う。クロゼットにたどり着き、扉を開くと、制服を取り出す。

「うわぁあ、着にくい…」

無重力だとワンピースは着にくいようだ。覚えておこう。

「慣れてるとは言え、無重力はやだなぁ」

ティターニアはスパッツを最後に穿いて姿見を確認する。見事にスカートは捲れ上がっていた。

「う~ん、穿き心地は気に入らないけど、買っておいて正解って感じね」

ティターニアは手でスカートを押さえ、手の位置を戻す。スカートは確かに下りたままだが、不安定だった。

「う~ん、昔からとはいえ、なぜスカートなのかしら、ここの制服」

無重力日がある、と予め判っているならスカートをやめてズボンにしてほしいところである。

「考えてても仕方ないし、行こうかしら」

扉をくぐり、一歩外に出るとそこはお祭りだった。超高速で移動する者、変に回転がかかりカオス軌道を描いている者、天井を歩くように移動している者、様々だった。

「これ、通路の真ん中で静止しちゃったら大変よね」

無重力で飛べるとは言え、空気抵抗はもちろんある。ティターニアは壁際を浮遊するように移動する。

「いやーっ、誰か助けてー」

通路の真ん中で助けを求めている女子生徒がいたので、ティターニアは壁を蹴って移動し、真下辺りに移動したらその生徒めがけて床を蹴る。勢いがついて女子生徒を抱きかかえ、天井に着地。片腕で天井への着地を吸収すると女子生徒を開放する。

「これで大丈夫よね?」

「あ、はい…」

女子生徒の顔が赤い。自分のピンチに颯爽と現れ、危機を救う。しかも美人。惚れない訳がない。

「じゃあ、私はこれで」

ティターニアは天井を腕で弾いて床に向かう。

「あ、あの、お名前を!」

女子生徒は天井に捕まりながら言う。

「名乗るような名前なんて無いわ。またね」

ティターニアは地面を蹴って移動を開始する。女子生徒は慣れていないのかあっという間に差が開いた。

「あれ?フーガ君も無重力は苦手?」

ティターニアは天井を不慣れな動きで移動しているよく知った顔を見て声をかけた。

「従軍してたときも重力はあったからな。あいにく、軍艦にゃ乗ってないし」

フーガは天井を蹴ってティターニアのいる床に移動する。

「とゆう事は、軍艦には重力発生装置ないの?」

「ないらしいぞ……おあ、おわっうわっ」

うまく姿勢が作れず床と激突しそうになったり、反動で壁にぶつかりそうになったりとフーガは完全に無重力に不慣れらしい

「ふふっ、大丈夫?」

ティターニアは笑いながら救援に向かう。

「あ、ああ。なんとかな」

フーガはティターニアの手を取り姿勢を安定させる。

「軍属経験あるから、てっきり無重力でも大丈夫かと思ってたわ」

「残念だったな。俺がいたのは陸軍だよ。海軍か海兵隊だったらワンチャンあったんだろうがな」

結局フーガは自力で移動が困難だったのでティターニアに手を引かれ移動をする事にした。

「仕方ないなぁ、ほら」

ティターニアに手を出されそれを掴む。不思議な感覚であった。

「有難う。逆にティターニアはなんで無重力に慣れてるんだ?天王星はコリオリステーションだろ」

フーガが疑問に思っている事を聞く。

「5年くらい、かな?冥王星でアルバイトをね、してたの」

ティターニアは天王星がイヤになって冥王星に引っ越してしばらくそこで働いていた。政府としては重要人物がそんな辺境の地へ移動するのは遺憾としていたが、研究所のトラウマがあるとして許可したのだった。

「冥王星にコロニーがあるとは驚きだ」

エリスが滅んだのは100年前。つまりフーガが生まれる前の話である。フーガにとって人類圏は海王星までである。

「エリスにまだ人がいた頃サービスステーションとしてアウトポストコロニーがあったのよ。今も無重力試験棟として冥王星は現役よ」

人類が宇宙に進出して3000年あまりが過ぎたが、無重力は謎が多く、各所に試験棟が設けられていた。

「そんな人類圏の端っこで何してるんだか」

フーガが呆れたように言う。

「人類は無重力で交配できるか、ってまだやってるみたいよ」

ティターニアが言うとフーガは驚いたように

「できないって判ってるのにまだやってんのかよ」

「まぁ、生物は重力ありきだからね……とはいえ、人類が無重力で生活をずっとしていれば無重力に適応できるはずだ、とも言われてるわね」

ティターニアは体を静止させフーガの手を離す。

「あ、ああ、ここまで有難う。あとは大丈夫だと思う」

校門近くなったので、手をつないだままくぐるわけにもいかない。フーガはそう察して床を蹴って移動し、門柱に激突した。

「ふふっ、本当、無重力下手だなぁ」

ティターニアは笑いながら校門をくぐっていく。

「うるせー、無重力酔いしないだけマシだろ!?」

遠くからフーガの声が聞こえる。それを聞いて周りの生徒は共感する者、笑う者、二通りだった。

「学校内は移動用のグリップがあるから、不慣れな人でも大丈夫そうね」

ティターニアはグリップを使わず、天井伝いに移動していく。天井は無重力での移動を考慮して幾つもの凹凸があるので懸垂の要領で移動が容易であった。

「今日の教室、あいてる椅子多いなぁ」

ティターニアは教室に入り言う。椅子に座っている生徒はまばらであった。

「無重力酔いで部屋から出られないやつが多いからな」

フーガが自分の椅子に座りながら言う。

「でも、ティターニアさん、とても素晴らしいです」

隣の椅子に座っている男子生徒が言う。

「え?何が?」

ティターニアは首を傾げながら言う。

「スパッツ、最高っす」

ソレに対し、ティターニアはスカートを押さえながら

「男ってわかんない……」

ティターニアは考える。下着がもともと肌を見せないために発達したものであるのに、だんだんとエッチな物であるようになったように、スパッツもまた、時代の推移でエッチな物である感覚なんだろうか。

「ティターニアは無防備ですものね」

サイスに言われてしまった。歳を取る、と言うのはそういうものかもしれない。

「う~ん」

ティターニアは首をひねる。

「俺はアレだな、スパッツがエロいとゆうかはスカートの中ってのが重要だと思ってる」

「いや、俺はあれだな、見られてるって判って恥じらってるのが良いと思う」

「いやいや、見れない大丈夫って、見えそうで見えないのが最高にそそるんじゃないか」

「待て待て、穿いてるから大丈夫って無防備なのが良いんだろ」

「いやー、ティターニアさんはもとから無防備だもんなー、見えることは良いことだ」

「バカだな、見えないのがいいんだよ、見えたらそれで終わりじゃないか」

「終わればいいじゃないか。普段見えないんだから」

男子たちが一斉に談義しはじめた。ティターニアは目をパチクリさせ、それを聞きながら端末を立ち上げる。


『本日、臨時休校―――欠席者多数の為』


ティターニアは肩を落としため息を吐いた。

「う~ん、私は見えるほうがエッチだと思いますの。普段見えないものが見えるからこそ興奮するのですわ」

サイスが隣に座りながら言う。ティターニアは背もたれに体を預けながら、

「男ってわかんない……」

先ほどと同じことを呟いた。

「ティターニアが性に対して無頓着なだけですわ。ブラもつけてないみたいですし」

サイスがため息混じりに言う。

「だって無重力だったらいらないじゃない。普段も緩めのつけてるし」

それを聞いて男子の目が一斉に集まる。

「の、の…ノーブラですか?」

隣の男子が目線を胸に向けながら言う。

「ええ。無重力だと普通のブラじゃ苦しいだけだからね」

ティターニアの台詞を聞いてサイスは頭を抱えた。

「いいですね!」

流石に制服は胸ポケットもあるし生地もあるので浮き出る事はないが、つけてない、とゆうだけで男子は反応していた。

「ティターニア、ブラはただの拘束具ではありませんのよ。可愛く彩る下着ですのよ」

サイスは言うが、ティターニアはイマイチ納得いかない顔をしていた。その間も男子たちは男同士の談義をしていた。

「締め付けるのがあまり好きじゃなくて……」

「それならゆったりした物もありましてよ」

男子たちはティターニアとサイスの会話を聞きながら談義していた。メタい話になるけど我が妹は締め付けるのがダメで1ランク大きな物を着用していた。AVなんかを見てると脱いだ時に跡が残ってることがあるので締め付けている人もいるようだ。矯正が目的ならしめるしかない気がしないでもない。

「じゃあ今度からそれにしようかな」

ティターニアは端末のモニターを消すと談義している男子共をおいて教室を出ていく。

「これからどうしますの?」

「帰ってノンビリするわ」

ティターニアはサイスにそう答えると天井付近を飛ぶように移動していった。


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