第1話 おしごと
みなさんどうも、輝瀬いすらです。
これまでにない設定のものをと考えて書きました。
ディストピアな世界観ですが、基本的にゆるゆるとやっていきます。
ある程度話が固まったらシェイクしていきたいとおもっています。
わたしは昼下がりのうららかな日差しの中で目を覚ましました。
両親はもう学校に行っているでしょうから、家にはわたしひとりだけだったでしょう。
ねむい目をこすりながら玄関のポストを開けると、滝のように大量の封筒がでてきました。これらの封筒は、わたしの第二次就職先として面接に行った企業のものです。
いまどき封筒なんて特別感がでている気がしますが、そこはいまや巨人のように肥大化してしまったインターネットの情報網では通知が迷子になったりいたずら好きに見られる可能性が高いからなだけであって、結局、中身は落選、落選の連続なのでしょう。
この時わたしは働いてもいない、勉強してもいないいわゆるニートなのでした。
そして実は、今のご時勢は、子供が働くというのが普通なのです。
これは語弊のある言い方かもしれません。ようは13歳から18歳、このかつての学校生活のあった6年間がずれ、20歳から35歳のどこかから約10年間教育を自由に始められるようになったのです。(つまり大学も込みです)そしていまの少年少女たちは働くこととなったのです。
このシステムは昔ある国のある首相が「子供の教育なんて道徳と基礎で十分だ。過去の富国強兵の亡骸にとらわれるな」といってのけたのが始まりだそうです。
ずいぶん暴論だとは思いますが、この首相はかなり人気があったため、みんな大好き民主制の投票によりきまってしまったんだとか。
しかもこの国は先進国だったようで、他の国も真似し始めて結局全世界の教育システムが変わってしまったのです。幼稚園、保育園、小学校をのぞいて。
わが国も遅れまいと取り入れて、「子供の自立を促す」とか「大人になってこそ専門学が判る」などと言って、養育費を大幅にカット!自分の勉強代は自分でかせぐほかなくなってしまいました。(という歴史を両親に教えてもらいました。)
しかし第一次職(13歳から15歳)、第二次職(16歳から19歳)は給料がいいので、まあまあできるのですが・・・。
なのでかつて二次就活中ニートだったわたしにとって受かるか受からないかは文字通り生命線なのです。 大人になって学生ライフをエンジョイするためにこの一次職の終わった春休みになんとか企業に入れてもらわないといけませんでした。
大量の封筒を抱え居間に行き、ソファに座って封筒を開きました。
「時向ひぐれさんの結果は・・・・落選、・・・・これも落選」
落選の封筒を開ける度にわたしの気持ちはしずんでゆきました。
もう慣れたと思っていてもやはりつらいものです。こんな情報いっそのことネットの海に沈んじまえと思いますが、ちょっとの希望を胸に次の封筒に手をのばします。裏切られるとしても。
そうして最後の封筒を開けた時、その希望がむくわれたのです。
そうです。受かったのです。わたしは信じられない気持ちと喜びがないまぜになった興奮で手紙を式辞を高らかに読み上げるかのようにびっと伸ばし、まじまじと見つめました。
その企業は名をタイムアクロス社といいその手紙はそっけなく、おめでとうございます。受かったから来いよ、というような少し疑わしい感じでしたが、やっとニートからぬけだせるといううれしさでいっぱいで気付きませんでした。
そして少し仕事も慣れてきた一年目の五月の今。わたしは実行課の大きな樫のテーブルに頭を押し付け、うだうだしながら今日の仕事を待っていました。会社は怪しさの巣窟みたいなところでした。べつにブラック企業だったわけではありません。
この会社の怪しいところはそう、どちらかというとフリーメイソンのような感じです。
そうしていると、がやがやと三人のわたしの同僚がこの部屋はいってきました。
この部屋も結構年季が入ったものが並べていて、19世紀感と怪しさでいっぱいです。閑話休題。
先陣切って勢いよく入ってきたのは笹川夕七、小柄で少しだぼついたシャツとスカートというかっこうをしていて、茶髪のショートヘアーで、サイドを少し結んでいるのがこれでもか、というほどうっとう・・・・いや活発な感じをよくあらわしています。
次に入ってきたのは月丘鶫、こちらはいかにもリーダー然とした面構えで(しかし係長)、シャツに優雅にカーディガンを羽織り、かぶったハンチング帽からあふれる滝のように豊かな金髪がお目見えです。もちろん胸も豊かです。
最後に入ってきたのは秋葉あけび、清楚な顔立ちにセミロングの青髪でセーラー服で、ここの|課長≪リーダー≫です。
セーラー服は昔学校の制服だったらしいですが、ある時有名デザイナーが目をつけてファッションにして以来普通の服となりました。
服装ってのはそんなものです。ルイ・ルオールとジャック・エイムが発表する前にビキニなぞ着たら痴女あつかいされたでしょう。
なぜ知ってるって?この仕事柄、歴史には詳しくなるもんです。
「おーいひぐれ、仕事入ったよー」
「はーいわかりました鶫さん。では会議しましょう」
「そんなにぼーっとしてて頭に入るのかな?ひぐれ」
にやにやしながら夕七が言うものだからむっとしてわたしも言い返します。
「わたしはあなたと違って発育がいいものだから眠くなるのです。あなたはそのぺったんこな体で夜まで遊び通したらどうです。公園で」
「なっなんだとおまえ!けんか売ってんのか!」
「まあまあやめて、二人とも」
あけびさんが止めに入ります。まだ五月なのにこのパターンをもう何回やったことでしょう。はあ。
「あなたたち元気だね・・・・。元気なのはいいけど仕事の内容を聞き漏らすないでよ、じゃあ気をとりなおしてリーダーであるわたしが今回の仕事を説明するよ」
「「「あなた(おまえ)リーダーじゃないでしょう(だろう)」」」
総ツッコミを受けますが鶫さんは無視して説明をはじめます。
「今回の我々のターゲットは・・・」
ここで、わたしたちの仕事について説明しようと思います。
わたしたちの仕事は、人をしに向かわせることです。
くわしく言うとまずこの世界で人間がわざとしねないという基本法則を理解してもらわなくてはなりません。
何千年も前、人類が繁栄できた最大のアドバンテージはしなないことだったのです。
まさかと思われるかもしれませんが、どうやら本当のようです。
もちろん老衰、自然災害、一部の病などではしぬらしいですが、基本的に殺人などではしにません。
そうすると人類が増えすぎてしまう、どうするか。
ここでわたしたちの仕事です。わたしたちは時空を超え人を選んでその人をこちらで保護し、まわりの人に虚偽の記憶を植え付けその人をしんだことにするのです。(本部はわたしは時の歯車のひとつにすぎないといって保護した人はどうなるかは教えてくれません。)
つまりわたしたちの仕事は時を超えてしぬひとを選別し保護し、まわりの人に嘘の記憶を植え付けることなのです。
はじめはわたしもこの世界の真相を知ってしまった時は、事の異常さにびっくりして、回れ右して帰りたいと思いました。しかしやることは人を連れてきて本部にひきわたすことですし実感もわかないし、なにより慣れてしまいました。
「・・・・ねえひぐれ聞いてる?」
「ああすいません。聞いていますよもちろん」
もちろんうそです。ですがみんなについてやればどうにかなるでしょう。
今日の仕事もスタートです。
部屋にある昔っぽいエレベーターのようなものがわたしたちの仕事道具の一つ、タイムマシンです。
「時空間を行き来するというのは夢のような話ですが、やることは夢の欠片もないことですね、あけびさん」
「たまにあなたは酷なことをいいますね・・・・。しかしこれも仕事だからしかたありません。そう割り切るしかないのですよ。さあ、いきましょう」
あけびさんが蛇腹になった柵のようなエレベーターもといタイムマシンのドアをきしませながら開きます。そしてみんな乗り込みます。
・・・・内装もやっぱりエレベーターにしか見えません。
「今日行くのは何年ですか」
とわたしが聞きました。タイムアクロス社は察するに巨大組織で、各地に大量に支部があるらしく、わたしたちが行くのは19世紀から現在までですが、それでも時代の範囲は広いです。どこもかしこも不景気なのでしょう。
「やっぱり聞いてなかったんだね。じゃ、ついてからのお楽しみということで」
「そーですか」
「かわいげがないなーもっとつっこんでよ『えー鶫先輩どこなんですかおしえてくださいよ』とかかわいい感じでいってみてよ。ほんとうにかわいいんだからさ、ね?」
うっ・・・・。こ、この天然のジゴロはどうすればいいんでしょうか。
「い、いっそのことあなたを本部に渡してやりましょうか」
「顔が赤いよ~大丈夫かあ。以外とチョロいな~ひぐれちゃんは」
「うるさいです」
夕七がわざとらしくため息をつきます。
「くだらないこといってないでいこうぜ、日が暮れちまうよ」
あけびさんがタイムマシンのボタン部分のしたに鍵を差込みました。それから、年代をボタンで打ち込んでから横のレバーを倒すと、がくんとおおきくゆれてからタイムマシンが閃光を放ちました。
縁あって読んでくれたあなたに、最大の感謝をこめて。
次も読んでくれるとうれしいです。