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第五話:裏切りの女王への罰は

舞は、もう人間不信。

詩織も、人間不信。

私達の勝利。

でも、2人はただのいじめられっ子じゃなかった。

悔しかった2人は、私をつぶそうとした。




「裏切りの女王への罰は」




「ねえ、詩織。」

「なに?舞。」

「詩織は誰にいじめられたの?」

「…咲喜と、美奈たち。」

「私も。ねえ、私たちで復讐しましょうよ。」

「…美奈たちにも?」

「違う。あの人達を狙ったってどうせ私たちが返り討ちに遭うだけ。」

「そうね。」

「だから、咲喜だけを狙うの。」

そう言って笑う舞の瞳には、憎悪がこもっている。

その憎悪に気づいた詩織は、笑った。

「いいわね。…舞。昔ね、咲喜って私のいじめられっ子だったの。でも、あの子は学年が変わってからクラスが違ってしまっていじめをやめたの。」

「そうなんだ。」

「でも、あの子、生意気だから懲らしめてあげましょ?」

「そうね。」

嬉しそうに舞と詩織は笑いあった。

…さあ、復讐の始まりだ。



「…美奈。」

「何?悠子。」

「舞と詩織が、咲喜をいじめようとしてるわ。」

「…そう。」

美奈は、感情も無く相槌を打つ。

「助けるなら、今しかないって夕樹は言ってた。…どうする?」

「じゃあ、切り捨てるわ。」

何の感情も浮かべないで、そう答えた。

「あの子、裏切りのプロじゃない。…いいの?」

そして美奈は、口先だけの笑みを浮かべる。

「咲喜が裏切ってるということをかなりの人が知ってるわ。だから、知られた段階でもう咲喜の役目はおわり。」

そして、美奈は笑った。

「…裏切りの女王が裏切られて破滅するなんて、面白いじゃない。」

そう言って美奈は、にぎやかな教室に入っていった。



「…咲喜。」

「何?」

「一緒に帰ろ!」

いじめは無くなり、昔と同じ日常に戻った。

私は詩織からの復讐におびえていたけれど、3ヶ月も経った今、私はそんな事を忘れていた。


舞とは前と同じような関係になって、楽しい学校生活をすごしていた。


けど、状況は変わった。


「残念だったわね。」

冷たい声でそう言い放つ舞。

舞の声ではあったけれど、それは舞の声を真似して他人が言ったかのような違和感。

「どういうこと?」

「咲喜が私を裏切ったこと、私は気づいてたの。…まあ、咲喜の裏切りは巧妙だったけど。」

「そして、私と舞は協力したの。」

気づけば背後に立っていた詩織。

「ひさしぶりね。咲喜。ずいぶんといろいろやってくれたじゃない。」

綺麗な笑顔で言い放つと、詩織は私を蹴り飛ばした。

「そのぶん、ちゃんとお礼してあげる。」

そう言って詩織はあざみの花を私に投げた。

「…復讐…。」

呆然としながら、私はその花の意味を悟った。



あの日々は何だったの、なんて思いたくなるほど私は惨めな思いをたくさんした。

殴られ、蹴られ、死ねと毎日言われて。

誰も信じられなくなったあの日、私は夕美に出会った。

「大丈夫?」

心配そうにそう聞いてくれた夕美だけを、私は信じるようになった。

夕美だけは優しくしてくれた。

それに夕美は違う小学校の子だったし。

だから私も、夕美に優しくした。

夕美だけが心のよりどころだったから。

そして、私がいつものように待ち合わせ場所に行くと…。


「あら、咲喜。」


見下したかのような言い方。


「あんた、まだ私のこと信じてたんだ?」


軽蔑するかのような言い方。


「みんな、でてきて良いよ。」


嬉しそうな声。


「これでもう気分は晴れたでしょ。」



そして出てきたのは夕樹と悠子、美奈、日奈子。

それに舞と詩織。


「どうして…。」

「夕美は、私のいとこよ。」

夕樹はそう言った。

確かに夕樹と夕美は似ていた。


「ねえ、あなたの得意分野で負けるのって悔しいでしょ?」

「…そう、ね。」


「咲喜…あなたは敗者。」

悲しそうな夕樹の言葉を合図に、私はまたしばらく人を信じられなくなった。

裏切りの女王…そう呼ばれた私のへの、罰。


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