表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/43

幕間〜強き想いを胸に抱き

折り畳み携帯が真っ二つに折れましたので、慣れない代わりの携帯で投稿となりますので、短くなりました。



 カルツォーネ国とその周辺国では、“運命の恋に落ちる”という意味の「クピドの恋患い」といった故事が存在する。

 いつから存在していたかわからないその故事は、恋に現を抜かし、「運命的だ」と感じて行動するにも全て情動的になり、平静さを失う様を指すのだという。

 そして、恋というものを神の悪戯による病と見なしている点に特徴がある。

 恋に我を見失っても、「クピドのせいだ」と逃げられるようにも思えるが、実際は逃げようもない。

 クピドの病にかかった=どうしようもない阿呆というレッテルを貼られ、見下されるのがオチ――長い時間を経て、そんな流れになっていったのだ。

 ひとめで恋に落ちたレアンドラも然り、そのレアンドラを捨てアーシュとの恋に走ったエドヴィンも然り。

 つまり。

 聖女の再来と担がれたアーシュでさえも、「阿呆者」というレッテルからは逃れはできなかった。

 カルツォーネ国とその周辺国の後世では、レアンドラとアーシュ、エドヴィン達の一連の悲喜劇が「恋の戒め」という故事になっているのだから。

 とくに、偽聖女アーシュの「政略とはいえ、定められたが相手がいるのに横恋慕をし、挙げ句奪った」行為はさけずまれ、一番避け忌まれる愚行の極みとして伝えられていく。

 後世ではその傾向が特に強まるが、レアンドラが生きたあの時代でも、運命の恋を感じたものは、相手の幸せを祈るものが多かった。というよりも、例外を除き――最たる例がアーシュ――誰もがそうだった。

 誰も彼も、恋慕う相手を、運命の恋などに巻き込み、不幸になどしたくはないのだ。


「レアンドラさえ、幸せならいい」


 ――イーリスの年子の弟、ハーキュリーズもその一人だった。

 恋慕う相手と結ばれるのではなく、恋慕う相手の幸せは言祝ぐべき、そんな一人だった。

 そんなハーキュリーズの恋慕うレアンドラは、悲劇としか言い様のない一生を送り、最悪の終焉をもってその短い人生に幕をおろした。

 ハーキュリーズはレアンドラの最期を看取ったとき、思ったのだ。

 ――自分なら、こんな目にはあわせなかったのに、と。幸せにしたのに、と。


「次があれば」


 次があれば、俺ならば――その想いを、ハーキュリーズは失うことはなかった。

 恋は、人を変える。それが悪い方向でも、良い方向でも。

 また、想いは糧となる。恋慕う気持ちが強ければ強くなるほど、大きな糧となる。

 ハーキュリーズは、恋慕う相手の最期を看取り、その想いをより強く変貌させた。

 来世で、再び巡り会う日が来るぐらいに。


「探し物が、見つかった」


 想いは、世界でさえ渡らせる。ハーキュリーズは、そのことを強く実感した。


「今度こそ」


 次があれば、と願い叶ったハーキュリーズは、迷うことなくその強い想いを遂げようと胸に抱いた。

 ――生まれ変わったレアンドラを見て。


「貴方を、幸せにする」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ