表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/23

の、はずが。

 私は、じっとおにーさんをみつめた。



 これで、最後だ。

 うん。



「おにーさんのことが、好きでした。迷惑かけて、本当にごめんなさい」


 黙ったままのおにーさんに、頭を下げる。そして再び勢いよくあげると、精一杯、笑顔を作った。


「なので、おにーさんが謝る事は一つもなかったんです」



 もうこれで、おにーさんは、もう私に煩わされない。

 終わり。

 全部、終わり。


 おにーさん怒ってるみたいだから、許してもらえないかもしれない。そうしたら、もうこうやって顔を合わせる事もなくなっちゃうと思う。だから、最後は笑顔でさよならを言おう。



 ――うーん、やっぱりまだ、思考が思春期抜けてない気がするけどね



「おにーさん、今までありがとうございました」



 私の、支えになってくれて。

 あの時、私を助けてくれて。

 今の私は、おにーさんのおかげでここにいるんだもの。



 じっと見上げていた私は、何も言わずに私を見下ろすおにーさんにもう一度小さく頭を下げた。


 もう、いいかな。

 気持ちを伝えてすっきりしたけれど、じくじく痛む心は止められない。早く、おにーさんの前から立ち去って、自分に酔ってるって言われても泣きたい。

 それで、終わりにするんだから。


「……そういう事なので……。おにーさん、お元気で」


 何も言いださないおにーさんから目を逸らして、私はベンチに置きっぱなしだった鞄を手に取った。そうしておにーさんの横を通り過ぎようとした、その途端――



「……だから!」



 腕を掴まれて、引き留められた。勢いがついていたからか、引き留める力が強かったのか、バランスを崩して後ろに倒れ込む。

 そこは、ベンチの上。

 腰掛けた状態の私は、びっくりしておにーさんを見上げた。



 そこには……



「……おにーさん、顔が怖いです」



 なんだか、顔を真っ赤にしたおにーさんが立ちふさがってます。見下ろされると、さすがの童顔おにーさんでも怖いのですが。



 おにーさんは一瞬眉を顰めたかと思うと、目を瞑って溜息を零した。

「あのさ。少女漫画じゃないんだから、ごめんなさいさよーなら、とか言ってすべてが終わるとか思わないでよ」

「へ?」

 つっこみどころは、そこですか?

「さよならされた後、相手がどう思うとか気付こうよ」

 ゆっくりと覆いかぶさるように上体を屈めたおにーさんは、私を両腕で挟むようにベンチの背もたれに手を着いた。


 ちょっ、この体勢はドキドキしてしまいますよ!

 これこそ、少女マンガシチュエーション!



「あのさ」



そんな、ドキドキシチュエーションの中。




「それ、過去形?」




 告げられた言葉は、よく分からないものでした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ