少年クロと迷宮
僕は、クロ。
今、元ファス商会の受付嬢だったユーノおねえちゃんと迷宮に潜っています。
この人といると賑やかで楽しい。たまにめんどくさいときがあるのがたまに傷だけど。
そういえば、初めて会った時もユーノおねえちゃんはぶっ飛んでいた気がする。
冒険者ギルドの冒険者資格認定試験で地下5層で出る「鬼ゴブリン」という魔物の討伐を依頼されたときに会ったおねえちゃんは恐ろしかった。
ギルドでもここ最近、めちゃくちゃ強い一般人っぽい人がいるとは噂になっていたんけどさ。
怖かったんだよ、ほんと。
初めて他の先輩冒険者のサポート抜きで迷宮に潜って、なんとか5層のボスの間までたどり着いて、鬼ゴブリンと対峙していた時のことだった。
僕は、もうすぐ壊れそうな木の盾を構えて鬼ゴブリンの攻撃をしのいでいた。
回復薬もここまで来るのに消費が激しくて、そんなに残っていない。
冒険者の認定試験とはいえ、死んだら認定されないだけで、遺体を回収してくれるはずもない。
下手をすれば、ゾンビ兵士やゾンビ冒険者として駆逐される側として永遠にこの迷宮で彷徨うことになる。
ああそんな無様な死に方をするんだろうな、って嫌な考えが頭をよぎる。
もうすぐ駄目だ、盾が壊れて殺されるって思ったその時、
「お腹へったー、ごはんはどこだー」とかいうのんきそうなお姉さんの声が聞こえたんだ。
僕の視界の隅に見えたのは、弓を持った、軽装のお姉さんと鬼ゴブリンのお腹に向かって飛んでいく雷が付与された銀の矢だった。
その矢は鬼ゴブリンの腹に刺さると、鬼ゴブリンはお姉さんに気が付いたみたいでごおおおおっと咆哮すると攻撃し始めた。
先ほどの鬼ゴブリンが呼んだのか、ゴブリンの数が増えている。
鬼ゴブリンが勝利の雄叫びを上げて、棍棒を振り下ろすと同時に呼んだゴブリンたちがお姉さんを取り囲みながら棍棒や折れた剣を構え、加勢をする。
その攻撃を見切っていたのか、目を光らせたおねえちゃんは手に持っていた弓を天井の方に向けて僕の目には見えない速度で矢を放っていた。
お姉さんの弓から放たれる銀色の矢は雷をまとい、僕が苦労していた鬼ゴブリンと20匹近くいたゴブリンの群れを蹂躙していた。
お姉さんの背中側から手下のゴブリンたちが棍棒や剣を振り上げたり、突き刺そうと襲いかかる。
お姉さんは振り向くことなく、足元に魔方陣を発現させて雷の壁を作り、攻撃をしたゴブリンたちを止めをさしていた。
その時、僕は茫然としたまま、何もできなかった。
噂は本当だったんだもの。
あきらかに一般人の服装の年上とはいえ、若いお姉さんが一般人には簡単にはできない魔法を発現したうえで弓で簡単なことだと思っているかのように魔物を狩っている。
おねえちゃんは、僕に気が付くとこう声をかけたんだっけ。
「あら、これはいいショ・・・じゃないわ、素質を持った男の子ね。
ごめんなさいね、あたしったらこんなはしたないマネを・・・」
口から出ていたよだれをぬぐったおねえちゃんは、背負っていた冒険者用の収納リュックから朱く輝く剣と鏡のような、大人なら上半身に来る攻撃を防げるぐらい大きな盾を出して、口止め料としてあげるから黙っておいてほしいって言ったんだよね。
でも、そのあと帰ってギルドに試験の報告と一緒にギルドまでついてきてくれたおねえちゃんの報告をしたら、職員さんに勧められておねえちゃんと組むことになっちゃってた。
最初の2か月ぐらいは冒険者について何も知らないはずのおねえちゃんが僕の訓練相手をしてくれたんだよね。おかげで回避術とか剣術系のスキルが身に着いた。
それから二人でパーティを組んで、迷宮に潜っていたら、いつの間にか教えてくれた先輩たちより先にCクラスの冒険者になっていてびっくりしたよ。
Dクラスからは冒険者としての信用性が上がるから手紙や荷物のお届けなどが受注できるようになるから比較的安全に暮らせるようになるんだよね。
ギルドと帝国・皇国・王国などの大国が保障しているし、各国の国教の教会が保障しているので犯罪なんかやるってしまうと暮らしていけなくなるけどね。
おねえちゃんは否定するけど、魔物にほぼ止めをさしていたのはいつもおねえちゃんだから、ユーノおねえちゃんの功績だと思う。
前の鋼鉄猪とかいう階層のボス、つまりガーディアンと僕らは呼んでいるんだけど、そいつも雷で感電させて、僕が炎剣で弱らせた後におねえちゃんは矢を何らかの方法で加速させて貫通させたときは冷や汗がでた。
きりっとしたおねえちゃんはかっこいいけど、なんか逆らっちゃダメな気がするんだよね。
そんなおねえちゃんと今、20層を降りて、雪女とかホーンマンモス、スノーマンをなぎ倒しながら進んでいた。
僕の剣は炎剣だからこの階層の魔物の弱点の炎を簡単に扱えるおかげで簡単に進めた。
「グオオオオォォ・・・・」
あ、ボスのブリザードベアだ!
僕は剣と盾を構え、スキルを放つ準備をする。
「クロ君、そのままの姿勢で立ってて!ミル・スパーク!」
足元に魔方陣が現れ、おねえちゃんが中級の雷魔法を放つ。
青白く輝く稲妻がブリザードベアを襲う。
しかし、ボスのブリザードベアは爪と氷の鎧で魔法を掻き消してしまった。
「うそーっ、なんであたしの攻撃がきかないのよっ!」
「ユーノおねえちゃん・・・・そろそろ弓を使った方がいいと思うよ」
「グオオオオ」
ブリザードベアが爪で僕たちの体を裂こうと攻撃してくる。
氷を纏った突風が僕の盾にガンと当たった衝撃でのけぞる。
「おねえちゃん、はやく!ファイア・シールドバッシュ!」
右手に持ったフリートを振りぬき、炎をまとわせ、盾を前へ突き出す。
ミラーシールドが朱い光を放ち、ブリザードベアの爪を受け止めると同時に炎を吐き出す。
うん、僕はいつも思うんだ。
おねえちゃんはいったい何者なんだろうって。
今も、ブリザードベアの氷結魔法を避けたり、ブリザードベアの投げた氷の塊を弓用の小手をつけてまま殴って砕いたりしてるし。
いくらこの前のサングリアで小手を強化していても普通はそこまで強くならない。
さすがにガーディアン相手に素手や中級魔法だけで挑むのはどうかしてるよ。
僕はミラーシールドのおかげで魔法で精製された攻撃はすべてはじき返しちゃうし、炎剣でひたすら周りのアイスライムやヤサグレフェアリーのような雑魚を倒すだけでいいからとてもラク。以前、鬼ゴブリンに苦戦していたのが嘘のようだ。
「わかったわよ。クロ君の言う通り、止めをさしましょう」
そういうとおねえちゃんは弓に手をかけて、雷で矢を精製する。
何故か兜・・・というかかつら?を脱いだおねえちゃんはポニーテールをほどいて。
おねえちゃんの金色の長い髪の毛が雷をまとったまま、矢に沿うように一直線になると、ユーノが矢を放つ。
するとあり得ないスピードで貫通した矢は轟音と地面の雪を巻き上げ、
しばらくして空気が澄んだと思ったら、そこには胸に大きな穴の開いたブリザードベアの死骸があった。
こんなにユーノを強くするつもりはなったのになんでこうなった。
クロ君を強くしたい・・・
実はレールガンというかサーマルガンみたいな感じです。
髪の毛がレール替わりで弾は矢、みたいな感じです。