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玉の輿は何処に?   作者: 筒井 綾乃
城塞都市ゲルググ編 
3/18

城塞都市ゲルググ

 城塞都市ゲルググはその名の通り城壁に囲まれた都市で、ゲルググにつながる街道すべてに関所を兼ねた砦があり、拡張のたびに城壁が築かれているため、上空から見ると木の年輪のようにも見える都市だ。


特に、ファーレン皇国とつながる征服街道(コンケットロード)は重要な街道で街道と街の間には大きな砦が築かれている。

城壁連弩砲(バリスタ)が幾重にも並んでいる高い城壁はこの場所が如何に重要かを表している。

帝都と繋がる栄光街道(ギュイエロード)は道幅はとても大きく人通りも多い為、近隣の地方都市まで石畳による舗装もされている。


 この都市はこれまでなんども隣国の大国、ファーレン皇国やウェルスタ王国に攻められても落ちることはなかった。

 それ故に兵士も多く、治安もいい。街は住民区と商業区、工業区、駐屯区に分かれていて、衛生官や駆け出し冒険者がクエストでゴミ拾いをするから、ゴミひとつない。



 初めてこの都市に来たときはとても大きな建造物やたくさんの人や人ごみに驚いた。

あたしがこの街にきて一年の月日が流れた。

はじめは集合市場(マルシェ)やその品物の多さに目を回したものの、今では慣れて普通に暮らしている。

 ようやくあたしも商業区の集合市場(マルシェ)でおじさんに安くしてもらったり、おばさんが声をかけてくれたりしてくれるようになった。


「あらぁ、ユーノちゃん、おはよう!今日はお仕事?」

「おはよう、ユーノちゃん!」

「ミクリさん、オルクスさん、おはようございます!はい、今からファス商会でお仕事です!」


はじめに声をかけてくれたのは生鮮食品を扱う露店店主のミクリさん。

彼女の夫のオルクスさんの番の時ははいつも安くしてくれるから非常に助かるわ。

いつも、あたしはミクリさんとオルクスさんのやっているお店で食料品を購入する。


「お仕事がんばってね!今日は何か取り置きしておいたほうがいい食材はないかい?」

「う~ん・・・・・今日は、『薄切りジビエ肉の重ねシュドゥべガン』を作りたいので、ジビエ鳥のお肉を少しとシュドゥべガンを半分ほどお願いします!」

「シュドゥべガンねぇ。ずいぶん手の込んだものを作るねぇ。私の娘にも教えてもらえない?」


腰のベルトに結んでいた巾着から銭貨を取り出してミクリさんに手渡しながら、あたしはスケジュールを考えて答えた。

鞄に仕事道具が入っているから、巾着を出すのが難しいんだよね。


「かまいませんよ。今度の休日でも構いませんか?」

「こちらこそ、よろしくね。」

「ミクリさんもお仕事頑張ってくださいね」

「ははっ、ユーノちゃんに私も負けないように働きますか!」


オルクスさんが後であたしのうちに買ったものを届けてくれるので当分の心配はないかな。

ミクリさんの返事を聞いてから、ファス商会に向かって歩く。

目の前に黒髪の少年が現れる。


「ユーノおねえちゃん、おはよー!」

「クロ君、おはよう!」

「ユーノおねえちゃんは今日はお仕事なの?」

「ごめんね、クロ君。今日はお仕事の日だから、一緒に狩りにはいけないわ」

「えー・・・・じゃあ、僕はユーノおねえちゃんを守れるように剣の修行をしとく!」

「がんばってね、クロ君。期待して待っとくね」


このような会話を交わせるようになって、ようやくあたしもこの街になじめたのかな、なんて思う。

 メルナ村のような田舎から来た何も知らない田舎者、しかも元難民のあたしを優しく教えてくれたのはすごくうれしかった。


ゲルググはいつも賑やかで人は優しい人が多く、本当に住みやすい街。

おばちゃんたちが口利きしてくれるおかげで大概のお店で安く物を買えたり、覚えてもらえたから、ここに来てからは毎日が楽しい。

自警団のお兄さん達がいるおかげであたしも襲われることもなく平和に暮らすことが出来てよかったと思う。


あたしのお母さんが働きに出たムスカと言う都市では強姦が絶えないとメルナ村に住んでいたときに届く手紙に書いてあった。

酷い場合には強姦された女性で精神が壊れてしまった人を性奴隷にしてしまうのだとか。

そのムスカに比べて、このゲルググでは治安はいいっぽい。

特に今まで男性に襲われることもなかった。


現在のエルネシアのよその町では、最近は現皇帝タツヤがもたらした経済政策が上手くいって雇用状況が改善して治安が良くなっているらしいけど、他の都市ではまだまだひどいらしいし。


このゲルググがこんなにも安全なのは、エルネシア領でも北東部に位置し、辺境と呼ばれる地域でもこの地方の中心都市として発展していること以外にもなにかあるのかもしれない。

そんな都市に慣れたユーノはファス商会の看板娘として評判を上げていた。

今日も朝からムスタファさんの商会で受付と財務管理、書類の管理である。

最近はムスタファさんにスケジュールの管理などもするように、言われてきているし、仕事は忙しいけれどとても楽しい。

そんな充実した毎日を過ごしていたあたしにある日突然ひょんな依頼が来るまでは平穏な日々を過ごしていたのでした。

城塞都市ゲルググはオーストリアのウィーンのような都市をイメージしています。

イスラム軍をはねのけた城塞都市、ウィンドボナとウィーンの間ぐらいの時代を想定しています。



『薄切りジビエ肉の重ねシュドゥべガン』

タダのロールキャベツです。

世界観を出すために苦労します。



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