何だかよく分からないけれどできた
どうにか先ほどの蛇の様な魔物を倒した……正確には倒してもらった俺。
危機に陥ったが為に新たな力が展開は俺には起こりそうもないという、驚愕の事実に直面したのはいいとして。
「本当だ、カードに何か描かれているな。……火球みたいだな」
「それって私も使えるわよ? 得意なの」
火瑠璃がそう俺に言ってくるが、そうなのかと受け流してカードを見つめる。
何故か火瑠璃がむっとしている。
適当に相手をしたのがいけないのかもしれない。
だが俺の興味はそのカードに向かっていた。
もしかしたなら、これならば本当に魔法が使えるかもしれないからだ。
なので自分の目の前にそれをかざして、
「“発動”……とか?」
試しに呟いてみると、明らかにその紙の大きさ以上の炎の塊が現れて前方に飛んでいき、大きな爆音と爆煙を上げる。
ちらちらと周囲に赤や黄色に輝く火の粉が散らばりとても綺麗だ。
しかも魔法を発動した後には、その医療kを物語るような丸いクレーターが残っている。
「……へぇ、こんなにすごい威力なのか。ゲーム内ではこんな風に地面がへこむ描写はなかったから気付かなかったな」
そう一人納得頷いて、火瑠璃に他の事を聞こうとした。
けれど彼女は俺の放った魔法をじっと凝視して微動だにしない。
しかもいつの間にか傍に来ていた氷子も、口に手を当てて驚いた表情でそれを凝視している。
とりあえず俺は火瑠璃の肩を叩き、
「どうしたんだ? 二人して凍りついたように固まって」
「……一つ聞いていい?」
「? 構わないが、なんだ?」
「今使った魔法は、火球よね?」
「そうだと思う。カードに描かれた絵がらが選択した時に表示される説明文に添えられたイラストと同じだったし」
「……火球はもっと威力が弱いはず。そもそも私だってあんなに強くない。せいぜいその十分の一の威力よ」
「そうなのか……じゃあ今度は威力を弱めたいが、どうやって弱めるんだ?」
先ほどのカードに魔法を封じ込める際も、ゲームの選択画面の様なものが浮かんでそれで選択したのだ。
それこそ今目の前にあるような半透明の水色の四角い場所で、横に上下に移動刺させるスクロールバーがついていてその上の段には攻撃魔法や防御魔法を選ぶ選択肢が置かれていて……。
「あれ? 何であれが目の前にあるんだ?」
俺は呟いた。
ゲームをしている時の選択画面が宙に浮いている。
何かの幻覚でも見ているのかと俺は目をこするが、やはりそこには見える。
とりあえず消えろと命じてみた。
その選択画面が瞬時に俺の目の前から消失する。
次に現れろと念じてみた。
すぐに俺の目の前に先ほどの選択画面が現れる。
「……何だこれ」
「? さっきから一人で唸ってどうしたの?」
「ああ、火瑠璃にも見えると思うんだけれど、これだが……」
「? 宙を指さしてどうしたの?」
不思議そうに火瑠璃に問いかけられて俺は目を瞬かせる。
だってこんなにはっきりと見えるのにと思いながら俺は、再び先ほどの火球を選択する。
軽くその文字列を指で触れると
、板か何かに触れているような感触がある。
同時にその文字列が白い光を放って点滅する。そして、
「おお、カードが光ってる。試しに弱め弱めと念じてみるか」
といった気楽な気持ちでカードに念じてみる。
そしてカードから発せられた黄色い光が消失すると同時に、先ほどと同じ絵柄が現れる。
それを俺はしげしげと眺めながら、試しに前方にそのカードを掲げて、
「“発動”」
そう呟くと同時に、先ほどの五分の一程度の大きさになった火球が飛んで行って、先ほどのように爆煙を振りまく。
それを見て俺は、
「カードになる時に弱くなれって念じれば、威力が弱まるみたいだ」
「そうなんだ、それで、どうやってこのカードが使えるの?」
「何だかよく分からないけれどできた」
「……」
「……」
半眼で俺を見てくる火瑠璃。
そんな風に思われても、俺だって分かっていて使っているわけじゃないのだ。
だから説明しろと言われても困ると俺が思っていると、そこで氷子が火瑠璃の肩を叩き、
「時間系の魔法は確かに才能は必要だけれど、そのプロセスぐらいは分かるんじゃないかな」
「つまり?」
「アキトにカードを作ってもらって測定するの。そうすればどういう構造になっているのか分かるから……」
「量産できる!」
目を輝かせる火瑠璃。
そしてもう一度、火球のカードを作らさせられた俺。
それを見て火瑠璃がとてもご機嫌だ。
そして分析は部屋でも出来るからという話になり、先ほどの蛇の魔物を倒した俺達は、その魔石を拾い帰宅する。
そんなこんなで、俺はようやく貰った力を使う事が出来るようになったのだった。




