chapter4.相手に教えてもらおう!(過去)
「共有した「いま」と、共有するかもしれない「未来」と来て、このchapterでは、共有していない「過去」がテーマだよ!それは脳に刻まれて変えることが難しいその人そのもので、もっともプライベートなものだよ!だから初対面でズバズバ過去のことを聞くのはデリカシーが足りないんだよ!未来は共有するかもしれないけど不確定で、過去は共有してないけど確定してるよ!だから、未来を共有するには不確定性に打ち勝つ必要があり、過去をもっと違う形で共有するためには、確定性に打ち勝つ必要があるんだよ!」
「あれ…ああ…」
押された一時停止のボタン。
男の指は何かに迷うようになかば無意識でそのボタンを押していた。
(よく分かったような…分からないような…)
しかしすぐさま押される再生のボタン。
「それで一番の問題は共有していないものを共有するということにあるよ!共有していないものは、共有できないものというわけではないから、違う形で共有できるんだよ!で、それが遠い記憶であれば門外不出の秘密を教えてもらうのと同じことなんだよ!だから相手の過去に関して教えてもらうときには師匠の前にいるみたいに畏れ入っていなきゃいけないんだよ!」
(そういうことかそういうことか…)
「あ、でも色々と御託を並べてきたけど、常識の範囲内でなら、何か興味を持ったことについて、きびきびとこちらから推測をしたり、相手から教えてもらったりするのは最も大事!知らないことは悪いことじゃなくて、コミュニケーションをとるチャンス!今回は練習問題もなしで、4つの練習編はこれでもうすべておしまい!すべてのテクニックを学んだ今、ずっと全問不正解の超絶ダメダメ君だったあなたも今日から超絶コミュ力イケメンに生まれ変われるんだよ!おめでとう!あとは実践編に進んで、飲会王の認定を受けてね☆」
男は高揚した誇らしい気持ちになって、目にはうっすらの勝者の涙が。
「妖精さん…俺やったよ…ありがとう…本当にありがとう…本当に…」
「どうしたしまして☆」
うわ言のように謝辞だけ何度もつぶやく男。
もちろんこの部屋に居るのはこの男一人。