表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/18

第9話

 昨日の今日での昼休み。

 疲れた体を伸ばし、昼食を摂る。


「やっぱ明日か。休みだし、いっちょやるか」

「何を?」

「掃除だよ掃除」


 フラン、キミの身辺のな。

 今日も午前中は怒涛の受注ラッシュだった。

 全く、どいつもコイツも自分の実力に合った依頼を探せってんだよ。

 しかも変なジジイが道案内所と間違えやがって……

 

 極めつけは、俺の休憩前にムサイオッサン共が喧嘩までおっぱじめる始末。

 まあ、喧嘩については俺が二人を床へのして終了したから問題はない。

 ある意味、ストレス発散できてよかったとも言えなくない。

 あいつらの唖然とした顔を思い出し、笑う。


「掃除って、どこの?」


 おっとそうだ。友人がいることを忘れかけていた。

 小首を傾げる彼へ言ってやる。


「そりゃ、家のだよ」


 キミのな。

 したら軽く目を見張られる。なんだ、その目は。


「なんだよ」

「えっ? あ、ケープが掃除するんだ、って」

「失礼だな。俺は綺麗好きだ」

「え? でも、カウンター……」

「あれは使いやすいように、物を置きなおしてんだよ」


 そうか、フラン、お前には俺のカウンターが混沌としてるように見えるのか。

 俺の言葉を受けて、友人は謝る。


「ごっ、ごめん!」

「分かればいいんだ。いいか? あれは決して散らかしてるわけじゃねえからな?」

「う、うん」


 そういえば……


「匂うな」

「えっ? なに?」

「なんでもね」


 そう。今日は友人から、例の臭いが漂っているが当人は気付いてないらしい。

 なるほど、俺もこんな感じだったのか。

 加えて、午前中にも何度か香水の臭いを感じた。

 これは、俺の鼻が敏感になってきたからか、それとも、香水人口が増えただけなのか。


 ……一旦、例の店に行ってみるか?


「ねえケープ」

「ん? 悪ぃ、考え事してた。なんだって?」


 カップの中身を飲み干し、問いかける。ちなみに、中身は白湯。文句は受け付けない。

 空となったカップから顔を上げれば、もじもじと悩む素振りを見せる友人の姿。

 黙って待つ。

 こういう優柔不断っぷりを嫌うヤツもいるが、俺は特段不快に思わんので気長に待ってやる。

 数十秒後。


「……あのさ」

「おう」

「なるべく、その、外に……気をつけて」

「?」


 不意打ちのような忠告に、疑問符しか思い浮かべられない。

 気をつけて、とな。

 いや待てよ。


「ああ! さっきのアイツらか。まあアレぐらいなら余裕で返り討ちで、ドブに沈めてやるから。

 それに、外で危害を加えたら向こうは罰則来るだろ。だから大丈夫さ」


 俺のことを心配するなら、自分のことを心配しろってんだ。

 笑ってやれば、フランは曖昧な表情を浮かべて頷く。


「えっと……う、うん。ケープって、僕と違って注目されやすいから気をつけてね?」

「そうか? あ、そういや昨日も一人ぶん殴ったな」

「えっ? いつ?」

「帰り道。お前と別れた後」


 ただ、アレは純粋な力試しっぽかったから、カウントしないほうがいいのか?

 ……ギルド職員相手に腕試ししてくるギルド員って、どうなんだろうな。


「怪我は? 大丈夫だった?」

「余裕余裕」


 心配そうな友人の頭を叩いてやる。

 お前のほうが大変だろうに。

 大きく伸びをして、立ち上がる。


「さてと! 明日休みだし、頑張るか」

「僕は出勤だよ…」

「ああ、書類整備か。大変だよな」


 昇格試験の書類がヤバイらしい。同じ事務でも、フランたちは大変さの度合いが違う。

 ま、俺に書類を任せる人間なんていないから、関係ないけどな!


「ケープも手伝ってよ」

「はっはっは! 前、それやって酷い目にあっただろ!」

「……自分で言わないで」

「ほれほれ、過去のことは置いといて。仕事に戻るぞ」

「酷いよケープ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ