第4話
「グランスの新製品? ああ、アレか。かなり人が集まったらしいな」
早めに職場――ギルドの受付――へ行き、休憩所で同僚に尋ねた結果。
興味を引いたらしく、数人集まってくる。その中には女性職員もいる。
その中の一人が、不満そうに口を開く。
「新製品って言いながら店になかった香水でしょ? 何でお披露目したんだろ?」
「そりゃ宣伝に決まってんだろ。社長もいたらしいしさ」
「あっ、あの人でしょ! 私見ちゃった!」
「あそこの香水、色々あるから迷っちゃうんだよねえ」
……等々。
みんな、自分の知っていることを話し出す。
それを聞いて、適当に相槌を打ちながら脳内でまとめていく。
「社長って兄弟がいるのか。へえ、弟が花屋……なるほどなあ」
「屋敷を改築? 伝統重視じゃねえんだな」
「香水は社長が考案……ふうん、調香師ってヤツ?」
とはいえ、職場はさすがに庶民の塊だけあって、香水の所有者を知ってる人間はいなかった。
と、盛り上がる俺たちに近づく人影一つ。
「お早う」
「はよ」
「皆、何の話をしてるの?」
疑惑の友人、フラン君登場。相変わらず暢気なヤツめ。
さっそく、職員たちがフランに声をかけていく。
「なあ、フランはグランス知ってるか?」
「えっ? な、なんのことっ?」
「彼女もいないフランが知ってるわけないでしょ!」
「いるかもしれないだろ」
「いや、香水の会社でさ、この間さ……」
その様子を、じっと見つめる。露骨に目を彷徨わせ、挙動がおかしい。
うん、やっぱ動揺してるな。分かりやすくて結構。
コイツに突っ込んで訊くことはできない。あとは姉貴待ちってところだな。
身辺調査はそれからだ。
悪趣味といわれるが、楽しいんだから仕方ない。自然と唇がつりあがる。
「ケープ、何考えてるの?」
「そろそろ開始時間だなって」
「えっ? あっ!」
友人は慌てた様子で、休憩室からギルドカウンターの奥へ向かっていった。
それを機に、休憩室の職員たちは解散する。
俺もカウンターでヤロウ共の相手するために立ち上がる。
そして、始業の鐘が鳴る。